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Sidney Powellのドミニオン裁判

ドミニオン裁判の準備書面が一般に公開されて、文中の ”Reasonable People" の表現を巡って激憤が巻き起こっている。日本でもケントさんが解説してくれて認識派がざまぁ的に盛り上がっているが・・・。

準備書面も全文を慎重に読んでみた。はい、読みましたよー。が、いやいや、ちがうね。今度は認識派が昔ながらの米フェイクニュースにやられてる。

パウエルに対する信頼が低下したという意味では、私も認識派の方々に同意見ではある。ただし、 "Reasonable People" の解釈については彼らも間違っている。この誤解は意外と重要な内容を含んでいると思われるので米大統領選における自分のこれまでの来し方を振り返りつつ、今回はこれについて。お急ぎの方は ”Reasonable People~”の解釈について へ飛んでください。

自分自身を振り返って

私はもちろんトランプ支持者。開票後の動向は気を揉みながら観察していたが、ドイツで銃撃戦あたりから「ちょ・・・」となり、教皇逮捕やら終盤の世界同時緊急放送とか国境でクーデター準備etc.まで来ると「ああ、そういう話か・・・」と悟って黙ったけれど、かといって選挙不正は確実にあった・・・ただしそのレベルが問題・・・というスタンスから動けずに、モヤりながら海外ニュースを追いかけていた。

最終的には裁判で全容が明らかになるという構えであり、その意味で自分は準備書面が言うところのReasonable Personと言えるだろうし、他の多くの人もそうだったのではないか。パウエルの言うことを100%絶対の真実と受け取っていた人よりも、「蓋然性の高低の範囲」で捉えていた人の方が多数だったのではないか。つまり最初は高かった”あり得る度”が、次第に低下して行ったのだけれど、最終的には裁判で明らかになるだろうというスタンスだ。

ケントさんの解説

パウエルの準備書面に関する(前半)(後半)通して聞いてみて、概要はケントさんの説明のとおりだと思うし、参考になった。中でも、①軍事弁護士なるものは存在しないのだという点と、②アメリカでの名誉棄損訴訟では真実性が証明されればOK!という点。日本ではたとえ真実であっても名誉棄損が問われることがあるので、この点は大きな違いと言えるだろう。
ただし、問題の一文の解釈については、パウエル弁護団の解釈のほうが正しいと思う。

”Reasonable People~”の解釈について

文書では、パウエルは「あんなアホな話をマトモな奴なら信じないだろう」「信じたヤツはバーカバーカ」とは言っていないのだ。「疑っただけ」とも言ってない。これは米メディアによるタチの悪い曲解だ。

フェイクニュースに対して、公式サイトで弁護団はこう言っている。

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(訳)
         シドニーの弁護士からの公式声明

シドニー・パウエルの弁護士であるハワード・クラインヘンドラーがドミニオン訴訟に対する我々の却下の申立てにつき、メディアの主張に返答する。
ニューヨーク州ニューヨーク市 2021年3月23日 

 昨日、複数の報道機関がドミニオンによる訴えを却下するという趣旨の我々の主張の一部を切り取って報道し、パウエル氏が複数の裁判所や一般市民に提示した不正選挙の申し立てがあたかも信頼できないものであるかのように捻じ曲げて報道した。
 実際に裁判所に何が提出されたのかを明確にしたい。まず、はっきりさせておきたいのは、「合理的な人物」であればパウエル氏または氏の選挙に関するコメントを信じないだろうというような示唆は、誤りである。
 書面で言及しているのは、陳述が名誉毀損の責任を免除される意見として適格であるかどうかを決定するために、裁判所が採用した法的基準である。
 DC巡回裁判所がつい先週にも再確認したように、訴えのあった「名誉毀損」の言説が法的見解である場合、名誉毀損の申立はできない。パウエル氏の発言はまさにこの範疇に分類される。パウエル氏は、宣誓供述書、宣言、専門家の証言、およびパウエル氏が裁判所に提出し公に共有した選挙に関するその他裏付けとなる証拠を検討しており、氏は依然それら見解を支持しているに変わりない。我々の申立は、その一部で、法的な意見は名誉毀損の根拠とはならないため、ドミニオン訴訟は却下されるべきとの主張である。
 要するに、裁判所が作成した技術的な法的弁護の基準が、メディアによって不適切に操作され、誤ったストーリーとして伝えられた。パウエル氏は、ドミニオンに関する以前の発言を後退させたり撤回したりしていない。ドミニオン訴訟は法的なメリットがなく完全に却下されるべきである。


その通りだろう。「一般人の普通の読み方と注意」は日本の名誉棄損訴訟において重要なポイントであり、本邦でもお馴染みの定型句だ。

この訴訟は「名誉棄損」を争っているのであり、パウエル側は一般論を基に原告の適格性を外形的に問題視しているのであって、パウエル固有の言論について述べているのではない。弁護団は「名誉棄損にはあたらない」という事を判例を引きながら主張しているに過ぎない。ここは弁護団の言うとおりで、パウエル側は「ベネズエラなんか信じる者がアホ」とも「クラーケンなんか真に受けるヤツはおらんやろ~」とも言っておらず、ドミニオンに対して「訴えて来るのが筋違いだよ」「それ以前の問題で適格性がないよ」と言っている。

だからといって、ドミニオン裁判で被告のこの論法が奏効するかどうかはまた別問題であり、訴訟の帰趨は未知数だ。最も知りたかった個々の選挙違反の実態はまたも遠のいた。

私としては依然、パウエルがトランプ弁護団を解任された真の理由が気になっていて、ケントさんが指摘した軍事弁護士云々のネットのデマもデマ元(虎8の有本さんは一次ソースではなく誰かに聞いたのだと思う)が知りたい所だし、バイデンジャンプがなぜ起こったのかも未だに釈然としていない。

ともかくも今の段階では、パウエルが「まともな人は私が言ったことを事実と思わないだろう」と東スポ流の「言い訳」をしたという理解は間違いとだけは言える。ドミニオン社の訴状をはじめ裁判資料の全体が読めないのでもどかしいだろうけど、その内、ケントさん以外で英語と法律の分かる日本人の弁護士が誠実に解説してくれるのを期待。

本当の問題とは

認識派すら、今度は米の左翼メディアのデマを信じるとは・・・これではパウエルを信じた者たちを嘲笑った右派の論客までが、昔ながらの米メディアのフェイクにまんまと乗せられたも同然で、戦勝派も認識派も全滅では日本人が二重にヤラれた!ってことじゃないか。あばたもえくぼも困るけど、坊主憎けりゃ袈裟まで~だって同罪だ。

アメリカ大統領選で日本のネット民が混乱させられ、右派一般人までが陣営に分断されて罵り合う、そのバカバカしさが私の憤慨①。次に、大手メディアが「陰謀論」と言われたものを含めて、しっかり追跡報道してくれていれば、ここまでの混乱は無かったのではないかと、そこが憤慨②。しかも私なんぞ法律の専門家でもなく、単に日本の名誉棄損訴訟の裁判資料を渉猟している身にすぎないのに、私ですら分かる誤解なのだからプロが頑張れよ!と。何で私ごときが働かにゃいかんのか、そこに腹が立つ憤慨③、と憤慨の3連発という。

そりゃあトランプさんの方が日本と世界にとってはるかに良かったけれど、トランプさんでさえ所詮はよその国の大統領なのであって、日本は独自にしっかりしないと。翻弄されて憎み合ってる場合じゃなかろう。

英語のわかる日本の法律家が大手新聞で解説するなり何なりしないと、これではアメリカのデマに翻弄されるままになりそうだ。日本の国際弁護士の量と質も非常に気になってきた。国際情報収集力と独自の分析力、そして発信力も必要だ。