見出し画像

読書録012:不変のマーケティング

読書録012です。経営コンサルタント/マーケター、神田昌典氏の「不変のマーケティング」です。

過去、お客様との接点は、対面でのおしゃべり、ダイレクトメールや電話、ファックスなどが中心だったと思います。もちろん現在でもこれらは引き続き有効である一方、LINEやメールなどのデジタル化がどんどん進んでいっています。しかし、マーケティングやセールスにおいて、「お客様の心を動かし、行動に移してもらう」という目的そのものは、時代が変わろうがツールが変わろうが、変わることはありません。

デジタル化が進むにつれて、この目的への意識が薄れていき、「とにかく自動化しよう」「このトリガーをベースにLINE配信しよう」等、機械的に顧客との関係性を構築していってしまう例が散見されるように思います。そうではなく、お客様の心を動かし、サービスを理解いただくためにはどのような考え方&仕組みを作るべきなのか?というポイントを学びたく、読んでみました。

本書からの抜粋

  • 顧客満足の基本は、自分がお客だったら、何をされればうれしいか。これをリストアップする。するとほとんどの場合、20も挙げればアイデアがなくなっちゃうだろう。そして、アイデアに対して、実行する優先順位を振っていく。これだけで圧倒的な差をライバルとつけられる。

  • テレビは実にうまくやっている。というのは、バラエティ番組を見ると、CMの前に、必ず「このあと、驚愕の事実が発覚!」とやる。それが、もうパターン化している。そして、「こりゃ、CMのあともチャンネルを変えさせない手だな」とわかっていても、驚愕の事実を知りたくなるよね。そして驚愕の事実を知って、「そろそろテレビを消して、仕事しないとな」と思って、リモコンに手を伸ばそうとすると、また「このあと事態が急展開。彼女が知らなかった過去とは?」なんて始まるから、どんどん見続けてしまうという仕組みなのである。

  • 思い切った保証は、あなたの知名度が低い場合、それを補ってあまりある効果を生む。保証を付ければ、安心して買っていただけるからだ。たしかに十分なサポートをしたあげく、返金依頼をされればいい気分はしない。しかし、返金依頼を大幅に上回る「保証があるために買った」という購入者がいる。だから保証内容を工夫することは、大変重要なポイントなのだ。ちなみにアメリカの家電店では、本体では儲からないので、延長保証を販売することによって、儲けられる仕組みを作っている。その延長保証の粗利は9割以上のすごい利益だと聞いたことがある。

  • 塾に通う際に、チラシを見て、入塾申込書に記入する人はいない。順序として必ず説明会や体験授業に参加するステップがあるよね。体験授業に参加してもらうためには、参加するメリットを書かなければならない。また参加しないデメリットも書かなければいけない。多くのチラシでは、以上の点がまったくないので、体験授業をオファーとして提供しても、行動につながらない。

  • 「今100万円しか資金がなく、その100万円全部を、この広告に突っ込むと思ったら、いったいどんな広告を出さなければならないのか?」すると、単なる広告を出さないわけですよ。たとえば新聞広告審査部から、「こんな広告は書籍広告じゃないからダメ」って脅かされたって、妥協できない。だって、他社と同じような広告だったら、広告自体が読まれないじゃない?そうやって極限に自分を持っていって、アイデアを出していく。これが重要だ。

  • 今までの商品を販売するビジネスから、社会貢献を進めるビジネスという方針を打ち出すと、一瞬にして、お客にとって共感しやすい、魅力的な会社に変わることができる。そして一度、仕組みを作りあげてしまえば、同じ仕組みを全国に展開するのは比較的容易な作業である。つまり、一気に陳腐化した業界を活性化し、そのリーダーシップを握った会社が、業界地図を塗り替えることになる。

  • 商品を語る際の典型的な物語は、商品開発背景である。その物語を語る際には、「開発しようと思ったきっかけ(使命感)」「挫折」「ちょっとした成功」「あきらめようと思うほどの挫折」、そして「予想外の成功」というパターンを踏むこと。これは世の中すべての物語に共通する、強力なパターンであり、一度、このパターンに入り込むと、読者は集中して、その文章を読むことになる。

  • アロガント(高慢)であることは、世の中は否定的に見る。しかし実のところ、自分の専門分野については、アロガントになる必要がある。いったん、その分野を離れて、日常の交流をしたとたん、きわめて謙虚な態度を取る。このギャップは、周りを驚嘆させる。

  • 苦情は嫌なものだが、それは組織を成長させる直接的な原動力になっている。問題がない組織は発展しない。問題がない組織は、徐々に崩壊し始める。混沌も同じ役割を果たす。秩序立った組織は、硬直し、そして衰退し始める。そこで、意図的に混沌を組織に投入することが必要となる。このように問題も混沌も非常に重要な役割があるのだが、一般的には、多くの人が「問題はいけない」「クレームはいけない」、そして「混沌は罪である」という認識を持っている。問題に対する社員の見方がマイナスだと、社員のモチベーションが低下する。また問題解決に対するモチベーションが高いとすると、その社員は原因追及に走り、チームワークを阻害することになる。だからクレーム対応、問題処理についても、マイナス評価をプラスに転じるネガティビティ・トランスファーの必要性が生じる。

  • 「反応率100%のDMとは何か?」答えは、税務署からの手紙である。なぜか?開封しなければ、ヤバいことになるからだ。税金を支払わなければ、牢屋に入れられてしまう。これから起こりうると考えられることが、耐えうることができないほど、痛みをともなう。言い換えれば、現実と期待とのギャップが極限にまで開いている。だから、反応が高い。ということは、あなたの会社の商品を販売したい場合、このギャップを広げる文章を作ればいいことになる。

感想など

長い間第一線で活躍され、実績を積み、それを多くの人に伝え続けてきたからこそ伝わる迫力がある本でした。また、語り口も平易で非常に入ってきやすいです。

人の興味関心はどのように高まっていくのか、購買や資料請求などのアクションのトリガーはいったい何なのか、それを明快に解き明かしてくれており、すぐに応用できるポイントが多い本だと思います。また、自社のマーケティングについて「本当にこれでいいのかな…。」となんとなくモヤモヤを抱えている経営者の方も少なからずいると思います。そういうときにマーケターの方と一緒にチェックポイントをさらってみて、本当に行動創発が起こるレベルまでメッセージや仕組みを作れているか振り返ってみる、という使い方もおすすめです。

ビジネス書を読む際は、「それが本当に行動につながるか?」を大きなポイントにしているのですが、この本は読んだだけで終わらず、自社ビジネスにも入れ込みたいポイントがたくさんありました。みなさんもぜひ読んでみてください!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?