30代からはメンタルマネジメント必須だと思う

徐々に生物としてのピークを過ぎてきたことで、体力や集中力も落ちてくる。さらに、仕事において立場や責任が大きくなり、答えのない問いに向き合うことが多くなる。さらにさらに、結婚や子育てなどの新しい体験も始まる。

仕事の裁量が広がり与えるインパクトが大きくなること、多くの人との関係を構築したりチームとして一体感を出すこと、子育てや結婚など大事な人との関係をさらに深めることなど、それぞれ非常にエキサイティングなことではある。一方で、ぼくたちの体力や集中力は無限にあるわけではなく、知らず知らずのうちに心を蝕んでいくことも珍しくない。

うつ病や適応障害で休職、までには至らずとも、「なんとなくやる気が出ない」「毎日楽しくない」「先行きが不安」「もう疲れ切ってしまった」という状況になっている30代、少なくない気がする。ぼくも「やるべきこと」が増えるに従い、そのような「なんとなくしんどい」「なんとなく疲れた」という日が少なからずある。

いろいろな対処法や書籍はあるが、個人的にもっとも読み返しているのが「反応しない練習」だ。

非常に平易でわかりやすい本なのだが、他の人にこの内容を説明するのがけっこう難しい。自分の理解度を深めるためにも、中身を紹介していく。

悩みの根本解決法は「反応しない」こと

 そもそも、私たちが日頃抱える"悩み"とは、どんなものでしょうか?
・いつも生活に追われていて、心に余裕がない。
・今の仕事に満足していない。先のことを考えると、不安になる。
・イヤなこと、不運なできごと、失敗が重なって、落ち込んでいる。
・性格が合わない相手がいる。人間関係で、ストレスを感じている。
 一見どれも、自分ひとりでは解決できない、時間のかかる問題に思えるかもしれません。
 でも、実際には……そうでもありません。
 というのは、これらの悩みは、どれも"心の反応"から始まっているからです。
「心の反応」と言われて、ピンとくる人は、どれくらいいるでしょうか。実は、私たちの日常は「心の反応」で作られていると言っても、過言ではないのです。
 たとえば、朝の通勤ラッシュで「今日も混んでいるな」とゲンナリする。これは、心を憂鬱にさせる反応です。心ない相手の態度にイラっとする。これは、怒りを生む反応です。大事な場面で「失敗するかもしれない」と、マイナスの想像をしてしまう。これは、不安や緊張を生み出す反応です。人と会うときも、仕事をしているときも、外を歩いているときも――心は、いつも反応しています。
 その結果として、日頃のイライラや、落ち込みや、先ゆきへの不安やプレッシャー、「失敗してしまった」という苦い後悔などの"悩み"が生まれます。
 ということは、悩みの始まりには、きまって"心の反応"があるのです。心がつい動いてしまうこと――それが悩みを作り出している"たった一つのこと"なのです。
 だとすれば、すべての悩みを根本的に解決できる方法があります。それは――"ムダな反応をしない"ことです。

出典:反応しない練習

「悩みのきっかけ = 心の反応」というのは、自分の日々の生活を振り返っても非常に納得できる。「周りはあんなにうまくやっているのに、なんで自分だけダメなんだろう」という比較や、今後の仕事や生活はどうなるんだろうか、という不安、これらも「心の反応」だ。それがどんどん増幅していって、集中力を削いだり、イヤな気持ちでいっぱいになり動けなくなってしまう。

ぼくはどっちかというと能天気で鈍感なほうで、人の表情や発言でイヤな気持ちになることがあんまりない。ただ、それでも状況によっても落ち込んでしまいエネルギーを吸われる感覚になることもある。ぼくみたいにデリカシーがないタイプでもそうなのだから、気配り上手で繊細な人は、より大変なんじゃないかと思う。上司や同僚の悪気の無いちょっとした一言に傷ついたり不安になったりしてしまい、その日一日がムダになってしまう、なんてこともあるのかも。

朝の通勤ラッシュや誰かからの心ない一言、そういう外からの刺激をゼロにすることは基本的にできない。誰とも関わらず、山の中でひとりで生きていくのであれば外界からの刺激をほぼシャットアウトすることも不可能ではなさそうだが、実際そのような生活をしたいと考える人は多くないだろう。

ただ、著者が主張しているのは「ムダな反応をしないこと」であり、「すべての刺激に対して反応をしないこと」ではないことには注意が必要だ。

勘違いされやすいのですが、反応しないことは、無理してガマンすることや、無視すること、無関心でいることではありません。悩みを増やしてしまうようなムダな反応を"最初からしない"こと。怒りや、不安や、「どうせ自分なんて」と暗い気分が出てきたら、すばやくリセット・解消することです。
 余計な反応をしてしまうことで、どれだけ手痛い失敗、悩みを抱えてきたことか……。

反応しない練習

ムダな反応をしないための3つの秘訣

ムダな反応をしないためには、「言葉で確認する」「感覚を意識する」「分類する」の3つの方法がある、と本書では述べられている。これらを普段から実施している人はほとんどいないのではないだろうか。ぼくも「反応しない練習」は何回も読んでいて、そのたびに「やろう!」となるのだが、すぐ忘れてしまう。何度も読んだり、今やっているように書き出して強く意識に刻み込んでいきたい。

たとえば、苦手な人の前で緊張してしまったら、「わたしは緊張している」と確認します。長時間テレビやインターネットで遊んでしまったときは、「アタマが混乱していて落ち着かない」「心がざわついている」と客観的に確認します。特に「目をつむって」確認してみると、心が落ち着きます。
 仕事中でも、家族といるときも、「今、自分の心は、どんな状態だろう?」と意識するようにします。「疲れを感じているな」「気力が落ちているな」「イライラしているな」「考えがまとまらないな」というように、客観的に確認します。

反応しない練習

これを実践することで、確かに変なモヤモヤから抜け出せる感じがある。さらに、本書は日常の動作(掃除、食器洗い、歩く、PC作業等)にもこれを実践することを進めている。これはより明確に効果があり、「ただ目の前のことに集中すること」がやりやすくなる。プチゾーンに入る感覚がラクにつかめる。

 もう一つは、「感覚を意識する」という方法です。これは、ストレスや疲れが溜まった心をリフレッシュする、抜群の効果があります。
 まず、目を閉じて、自分の手を見つめてください。暗闇の中に「手の感覚」がありますね。その手を見つめながら上に挙げてください。「動く感覚」があります。このとき、「手の感覚がある」「手の感覚が動いている」と意識します。手を肩のあたりまで挙げて、元の場所まで下ろします。その間、目をつむったまま、手の感覚を見つめます。

反応しない練習

もう一つのやり方の「分類」についてはちょっと長くなってしまうので割愛。ぜひ本書を読んでみてください。

「反応」と双璧を為す「判断」

ムダな反応をすることで悩みが生まれる。なるべくそれを減らすことで悩みなくヘルシーな状況で毎日の仕事や生活に集中できる。この「ムダな反応」に加え、「判断」がもうひとつの悩みの元凶である、と本書は述べている。

  • 「いい・悪い」「好き・嫌い」をやめる

  • 自分も他人も判断しない

  • 「自分は正しい」という判断を捨てる

  • 判断したな、と気づく

  • 世の中には判断好きな人が多いが、「人は人。自分は自分」という境界線を引く

  • 肉体の感覚に意識を向けながら散歩をする

  • 「わたしはわたしを肯定する」

  • 「自信が欲しい」は完全に「不合理」→「それより今できることは何だろう?」

  • 「とりあえず体験を積む」だけでOK

他人が自分のことをどう思っているか、本当のところはわからない。わからないものを気にし続けても特に良いことはない。また、自信があろうがなかろうが、ぼくたちにできることは目の前のことをやり続けるのみ。それでうまくいくこともあればうまくいかないこともあるが、それもそれとして受け入れて前に進む。そういう生き方を本書は説いている。

自分の正しさ、素晴らしさ、すごさを主張したい気持ちはぼく自身痛いほどわかる。また、それを主張するために圧倒的な成果や実績を残し続けなければ、という焦りも。ただ、それをずっと続けるのはやはり苦しい。「自分は正しい」「相手は間違っている」「自分だけうまく事業を伸ばせていない」「年収はこのぐらいなければ」「恋人がいなければ」のような思い込み、判断、妄想を捨てて、目の前のことを淡々とやり続けていきたい。

しんどい、つらい状況のときこそ「反応しない」

 生きていれば、てごわく、厄介な相手にも、遭遇しますよね。
 ただ、もしこちらが相手と同じ反応を返せば、相手との反応の応酬になってしまいます。
 このとき問題は、相手に負けないことや、我を通すことではありません。反応することで確実に「自分の心を失う」ことなのです。
 「つい反応してしまう」状況にあってこそ、あえて大きく息を吸って、吐いて、覚悟を決めて、相手を「ただ理解する」ように努めましょう。そして、心のもう半分を、自分の内側の反応を見ることに使うのです。

反応しない練習

幸いなことに自分の周りには穏やかな人が多い。とはいえ、仕事やプライベートの中で「なんやこいつは」とつい反応したくなるようなコミュニケーションを取られることがないとは言えない。そして、そのような反応をそのまま返してしまっていることもある。

ただ、相手の不愉快なコミュニケーションに対して反応することで、良いことは一つもない。相手の理解に努めつつ、自分は反応しないようにすることを意識したい。

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