見出し画像

読書録014:自衛隊メンタル教官が教える 折れないリーダーの仕事

読書録014です。元自衛隊の下園氏による「折れないリーダーの仕事」です。

会社経営は長期戦です。3ヵ月やって終わり!!というものではなく、数年、もしくは数十年という単位でビジネスを継続していく必要があります。そのような長い期間パフォーマンスを発揮していくために、自分自身やチームのメンタルをいい状況に保ち続けていく必要があります。

長期的にパフォーマンスを上げ続けるチームを作る、というのは言うは易し行うは難しです。参考になる本をいろいろと探している中で、自衛隊でマネジメント経験を積み上げてこられ、その経験をまとめたこちらの本を見つけ、読んでみました。

特に参考になったポイントを以下に抜粋しましたので、良ければお読みください!

本書からの抜粋

  • まず、崩壊しそうなチームには、次のような潜在的な特徴が表れる。「メンバー同士が不仲で、人間関係がぎくしゃくしている」「チーム内で情報共有ができておらず余分な仕事、ちぐはぐな仕事が発生している」「仕事ができる有能なメンバーに仕事が集中しすぎている」「それぞれがあまり他人の仕事に口を出さないようになっている」

  • あるレベルを超えると、徐々にチームに変化が表れ始める。「メンバーのいさかいが増える」「小さなミスが増え、時には大きなミスも目立ってくる」「さまざまな理由で休むメンバーが多くなる」「リーダーを信頼していない、頼りないと感じている」「戦力となっているメンバーがさまざまな理由で辞めていく」

  • そんな薄氷を踏むような状況で、病気やメンタル不調による休職・退職によりメンバーが突然欠けてしまうと、いよいよ危険信号だ。メンバーが過労自殺で亡くなるケースなどは最悪の事態と言える。抜けたメンバーの穴をなんとか埋めようとしても、メンバー個々の活力は、それほど残っていないため、すぐに限界を迎えてしまう。さらに一人抜け、二人抜け……何も手を打たなければ、後は崩壊を待つだけだ。そうなるとチームは、まるで雪崩のように一気に崩れていく。

  • 勝つためのリーダーシップは、基本的には元気で、上手に刺激すれば自ら働くことに喜びを見出せる人を対象とする。一方、負けないリーダーシップは、すでにストレスでやられ、疲れ果て、協調性も意欲も低下しつつある人を想定する。そんな状態になった人でも、なんとか動かして、最低限のパフォーマンスをあげていくためのスキルだ。

  • 第1段階 = ぐっすり一晩眠れば、疲れが取れる:

    • 誰しも「ああ、今日は疲れたなあ」と感じる日はあるだろう。心身に負担がかかれば、その分だけ疲労は蓄積される。疲労自体は決して悪者ではない。本来、疲労は過剰に活動しすぎてエネルギー切れを起こすのを予防してくれる機能だ。心地よい疲労感があるほうが、睡眠も深くなりやすい。ぐっすり一晩眠ることによって回復するレベルが、「蓄積疲労の第一段階」だ。多少の疲労感があっても栄養バランスのとれた食事や、適切な休養と睡眠により、すぐに回復できる状態である。「通常疲労」とも呼ぶ。

  • 第2段階 = イライラし、不安になりやすい:

    • 「しっかり寝たはずなのに、朝、体が重い」と感じる人は、「蓄積疲労の第2段階」に陥っているのかもしれない。なんらかの負荷によって、一日に回復できる量以上にエネルギーを消耗し続けていると、徐々に疲労の蓄積が大きくなる。疲労がある程度溜まってくると、まず体に変化が表れる。不眠や食欲不振、だるさ、目や肩、腰の痛み、頭痛などだ。気圧や天候によって体調が変化しやすい人は、その影響をさらに感じやすくなる。

    • この段階では、体調だけでなく、思考や感情にも変化が表れ始める。まず顕著なのが怒りやすくなることだ。些細なことにもイライラしてしまう。自分に負荷を与えそうな人や組織への警戒を強めることで、無意識のうちにそれらを避けようとするのだ。

    • 警戒心だけでなく不信感も強くなってくるので、人間関係がギクシャクしやすい。そもそも人付き合いは結構、エネルギーを使う作業なので、疲労が溜まると人を避けるようになることもある。

    • 第2段階以降は外的刺激に対しても弱くなってしまう。同じ出来事でも、疲れやすさが2倍になり、出来事に対するショックや反応(不安、怒り、落ち込みなど)も2倍になるからだ。そして回復するまでに要する時間も2倍になる。そのため、第2段階は、別名「2倍モード」と呼ばれる。2倍モードになると、これまでは難なくやっていた仕事や人付き合いが、急に重いものに感じてくる。トラブル一つひとつへの対応に、かなり苦労するようになる。

  • 第3段階 = 心身に「病気」の症状が表れる:

    • 第2段階のところで、ストレスフルな環境が終われば、なんとか元に戻っていく。ところが、厳しい状況がさらに続くと、「蓄積疲労の第3段階」に進んでいく。第3段階では、いよいよ本格的な「病気」の兆候が表れる。うつ病や潰瘍など、はっきりと心身に異常をきたし、仕事のパフォーマンスもガクンと落ちる。

    • 第3段階の別名は「3倍モード」で、元気な時より3倍傷つきやすく、3倍疲れやすい。回復するまでの時間も3倍を要する。すると、日常生活すら維持できないほどになっていく。うつ状態の特徴である過剰な自責の念、自信の低下、不安や焦りが、本来の性格と関係なくだれにでも出てきてしまう。

    • 第3段階になると、不安感が強いため仕事を休むことや専門機関を受診することを極端に怖がることが多い。自分という存在そのものに自信が持てなくなり、「このつらさが止まるのなら死んでもいい」と感じてしまうこともある。この状態の人には、本格的な休養を取り、治療することが必要だ。

  • 実は、蓄積疲労の第1段階であれば、メンバーは「良い人」で、やる気もあり、それなりの能力を発揮できる。そんな時は、それほど特別なリーダーシップを発揮しなくとも、チームはそれなりに機能する。お互いに気遣える余裕があるからだ。ところが、メンバーが一人、二人と第2段階に陥ってくると、チームの雰囲気が少しずつ変わってくる。第2段階にいる人は、疑心暗鬼でイライラし、足を引っ張る人間を許せない。自分を守るための嘘も多くなる。ひと言で言えば「嫌な人」になりやすい。チーム内がギスギスし、業務のスピードが落ち始める。

  • そして、第2段階のメンバーが半数を超えると、一気に状況は変わってくる。これまでのリーダーシップが通じなくなるのだ。日ごろのチーム運営が、「なあなあ」、「阿吽の呼吸」、「つうと言えばかあ」でうまくいっていたとしても、第2段階のメンバーが増えてくれば、まったく違う方法が必要となってくる。

  • 部下の疲労をコントロールすることが、リーダーの役割だと深刻に認識している人はそれほど多くない。多くの人は、疲労の第1段階の職場をイメージしているからだ。もちろん仕事をすれば疲れるが、それは危険なレベルではなく、メンバー個人が、それぞれに管理できる範囲。つまり、疲労の管理は「個人の責任」、というのが暗黙の了解なのだろう。しかし、第2段階では、様相が全く異なるのはすでに述べたとおりだ。疲労をうまく管理できるリーダーは厳しい局面を乗り切れるが、そうでないリーダーは部下ともども沈んでしまうことになる。

  • プロジェクト進行中はそれなりにがむしゃらに頑張り続けることはできる。苦しさも感じない。アドレナリンが効いているからだ。しかし、そのプロジェクトが終わり、「もうこれからは楽になる」と思った時、なぜか不調感に襲われる。アドレナリンの終了とともに、今まで溜まっていた疲労を認知し始めるからだ。それが第2段階を超えていたら、日々の生活だけでも2倍の負荷を感じることになる。体調も崩れ、仕事への意欲も急激に低下するだろう。そんな自分に自信を無くして職を離れる人につけられたのが、「燃え尽き症候群」という言葉だ。

  • 自衛隊では、強い精神的ショックを受けていたり、あまりにも疲労が溜まっている隊員がいたら、リーダーは3日間の休みをとらせる。その時、無理に気分転換をさせたり、医療につなぐようなことはしない。まずは、ただひたすら休ませるのだ。できるだけ温かい食事をとらせ、良質な睡眠がとれるように乾いた寝床で休ませる。

  • 第2段階になると、その衣食住を確保するためのエネルギーも2倍になり、ついついおろそかになってしまう。食事もコンビニ続きでメニューが偏る。帰宅が面倒になり、職場のソファーで横になる。そうした生活では、どうしても疲労回復が滞ってしまう。

  • 疲労の第2段階になると、感情が過敏になり、偏った情報処理を始めるという点も考慮しなければならない。疲れてくると、弱った自分を守ろうという本能から、不安、焦り、怒り、不公平感などの感情が大きくなる。そして、そうした眼鏡をかけて世の中を見るようになるのだ。たとえば、自分たちの部隊は見捨てられるのではないか、自分だけが危険な任務を与えられているのではないか、自分だけがつらい仕事を押し付けられているのではないか、自分だけが食糧配給を忘れられているのではないか、自分だけが仲間外れにされているのではないか……常にそんな感情に苛まれ、周囲を警戒しながら生活するようになってしまう。

  • イラクに派遣された約五百人の隊員に情報共有を図るのは、難しい仕事だった。しかし、そこでは毎日、全員を集めた朝礼が行われ、トップが直接情報を伝えていた。現場のリーダーを通じて伝える方法もとれただろうが、伝言ゲームでは情報が変わりやすい。そのため、隊のトップが直接伝える方法をとっていた。そこまでの配慮をしても、さまざまな誤解が生まれ、感情が乱れ、余計なエネルギーを消耗していた。それが第2段階の職場なのだ。第2段階の職場では、単なる業務遂行のためだけに情報提供があるわけではない。「安心のため」、「人間関係維持のため」に必要なのである。

  • 実際に私が部下をもっていたころは、「最近、眠れないんです」、「私の息子は発達障害があるんです」、「じつは借金があって……」というさまざまな悩みの相談に乗っていた。「そこまでしなければならないのか?」と思うかもしれないが、こうした不安の種を放置すれば、やがてチーム全体に悪影響をもたらす。それでは、チームとして役割を達成するどころの話ではない。モチベーションを喚起することよりも、人間関係の悩みなどの「負の感情」を緩和させることが、特に疲労の溜まったチームのリーダーにとって重要な仕事なのだ。

感想など

自衛隊というハードな環境下で強くしなやかな組織を作り続けてこられた方の経験と知見がギュッと詰まった本で、めちゃくちゃよかったです。一般的なリーダーシップ本とは一味も二味も違い、すぐに実践に落とし込むこともできる良本でした。

ぼく自身、20代のうちは海外出張が多かったり夜討ち朝駆けがあっても何とかなっていたのですが、30を過ぎてからちょっと無理が効かなくなってきた感があります。休日は「休む日」としてしっかり精神/肉体面で休養を取り、平日にパフォーマンスをしっかり出せるように工夫する必要を痛感しています。疲労の段階を「第1段階」「第2段階」「第3段階」とわかりやすく分類し、それぞれの状況におけるパフォーマンスへの影響が語られているのは素晴らしかったです。自身の過去を振り返りながら、「あのときは第2段階だったな」「あのときはもしかしたら第3段階だったかもしれない」と思いながら読み進めることができました。

今後、以下のようなアクションを取っていきます。

  • 自分自身およびチームメンバーの疲労度をより精緻に見ていく

  • 「第2段階に入ってるっぽいな」と思ったら自ら休みを取る

  • チームメンバーにも「金曜日は休んで3連休にしたらどうですか?」という声がけをしていく

  • 第2段階のメンバーには第1段階に戻ることを最優先にしてもらい、ハードルの高いチャレンジ等は控えてもらう

  • 負の感情が溜まっていそうなメンバーがいるかどうかプロアクティブに確認し、悩みの相談に乗る

第1段階のメンバーの割合を増やしていき、第2段階になったらすぐに対処して第3段階にならないようにする組織にしていきます!!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?