読書録016:「答えのないゲーム」を楽しむ 思考技術
読書録016です。「"答えのないゲーム"を楽しむ 思考技術」です。
著者は高松智史さん。元BCGのコンサルタントで、現在は「考えるエンジン講座」を提供する株式会社KANATAを経営されています。ぼくも「考えるエンジン講座」を受けさせていただきましたし、今も大変仲良くさせていただいています。YouTubeチャンネルにて対談させていただいたりもしています。
高松さんが日々仰っていることをギュッと濃縮されている!という印象の本でした。「考える力はスキルであり、身につけることができる」「答えのないゲームなのだから、それに応じた頭の使い方をしよう」という骨太なメッセージがベースにあり、「じゃあ実際にそれはどうすれば仕事に生きるのか?」という問いにあくまでも実践的に書かれている本です。
ぼく自身、経営者となって1年3カ月が過ぎたところですが、毎日が答えのないゲームです。その中で自分自身を健やかに保ち、結果を出すためのノウハウが詰まっている素晴らしい本でした。コンサルタントはもちろん、頭の使い方に悩んでいる人全員に読んでほしい本ですね。
本書からの抜粋
「考える力」はスキルであり、技術。だから、身につけることができるよ。
「答えのないゲーム」に勝つ/負けるも当然大事ですが、それ以上に、僕らは「答えのないゲーム」を楽しむ術を学ばねばなりません。
「答えのないゲーム」を戦う上で重要なこと、それは「答え」を出したところでその答えが「正しい」かどうか判断できないということです。
「答えのないゲーム」をしているのに上司に「これで合ってますか?」と聞くことは、上司に「答えのないゲーム」をさせ、自分は「答えのあるゲーム」をしているということです。
「答えのないゲーム」の戦い方
「プロセスがセクシー」=セクシーなプロセスから出てきた答えはセクシー
「2つ以上の選択肢を作り、選ぶ」=選択肢の比較感で、”より良い”ものを選ぶ
「炎上、議論が付き物」=議論することが大前提。時には炎上しないと終われない
答えだけを見て「あーだこーだ」言っていた働き方や考え方から、「プロセスが最高なんだから答えも最高だろ」という思考にシフトしていかなければなりません。
セクシーなプロセスを経た上で皆さんはアイデア2つ以上は当たり前。新規事業であれば8つぐらいのアイデアを作る。それが自分の価値である。というふうに考えてほしいのです。
「日本人は」とか「受験戦争、センター試験のせいで」とかを持ち出すまでもなく、誰もが「答えのないゲーム」を苦手としています。
示唆はファクトから言えること。そしてファクトを見た時、グラフを見た時、文章を読んだ時、こうつぶやきましょう。何が言えるっけ?
示唆を出すのが難しいファクトは日々目の前に現れます。その時にもう1つ口癖にしてほしい言葉が「見たままですが」です。これは「ファクト」を「ファクト」として確実に認識し、示唆と区別するための言葉です。
口癖は良い。思考を引っ張り、スパークさせてくれるスウィッチになるからです。「見たままですが」→「何が言えるっけ?」→「それは何人中何人?」
B〇条件とは簡単にいうと「B案(相手の主張)が〇となる(成立する)条件を示して、その条件を否定した上で、A案に誘導する議論と説得の手法」です。
B〇条件のルール
A(自分の意見)とB(相手の意見)を真っ向から対立させて議論してしまうと、「答えのないゲーム」においては、「水掛け論」になってしまう。
だからB(相手の意見)を直接否定してはいけない。相手の意見を直接否定した瞬間に水掛け論に突入する。
だから、B(相手の意見)が〇となる(成立する)「条件」を提示して、その「条件」を否定する。
要約すると、お互いの「答え」のぶつけ合い(A vs B)ではなく、「条件」で議論(A〇条件 vs B〇条件)することで「答えのある」ゲームへ転換せよ。ということです。
最後に心構えといいますか、B〇条件を徹底的に脳みそに叩き込むには、思考のクセにするしかないんです。議論するにしても相談を受けた際にしても、即座にこうだと思う!こっちだと思う!と答えてしまっていると思います。これはこれで大切なことなのですが、B〇条件という崇高なる思考技術を身につけるという段階においては、あまり良くないんです。ですので、完全に身につくまでは、議論を振られた時や何か相談を受けた時、こういう反応に変えてみてください。
もし「○○という条件でxx」なら賛成。
だけど、そうじゃなければ反対かな。
それで、実際どうなの?
ボジョレー思考というのは、「生産性」や「合理性」が何よりも重視される世界。「もっともっと」を追い求め、行き着くのは「青天井」。まさに資本主義の世界ですね。追い求める場所へ、いかに「効率的」にたどり着けるかが重視される。このような考え方が「ボジョレー」のようだという勝手なイメージからそう名付けました。「ボジョレー」は量産、たくさん売ることが正義のイメージ。
一方でロマネコンティ思考は「生産性」や「合理性」よりも、「あらかじめ決めた」「ゆるぎない」ゴールを追い求めます。そして「ゴール達成が最終目標であり、ゴール以上は求めない」という思考です。「ロマネコンティ」は数も売り先も制限しているイメージ。
何かを習得したい時に意識してほしいのが、「理解ドリブン vs 暗記ドリブン」です。「理解ドリブン」というのは、その名の通り、「理解」したらその学習は終了で、その「理解」をベースに応用していく技術です。一方の「暗記ドリブン」は、その名の通り、「暗記」したらその学習は終了で、その「暗記」をベースに応用していく技術です。
社会人の中でも特にエリートと呼ばれるビジネスパーソンの皆さんは、何でもかんでも前者の「理解ドリブン」で学んでいるケースが多いと言えます。しかしそれが時に、その人の「成長スピード」を鈍化させているケースがあり、注意が必要です。はじめに言っておくと、「暗記ドリブンで行こうや。理解ドリブンではなく」というのが私の主張です。
4つ目の「ゲーム感覚」は「100分の70」 vs 「100分の3」。これは一体なんのことを言っているのでしょうか。先に言っておくと、これはあなたが今から挑戦するゲームが「100人中70人が合格する」ゲームなのか、それとも「100人中3人が合格する」ゲームなのかを見極めてからそのゲームに取り組むべき、ということを意味しています。
アーティストは目の前に「自分」。クリエイターは目の前に「お客さん」。ここでしたいのは、どちらのモードで目の前の物事に取り組むか、これを意識することが大事だという話です。アーティストモードは、「僕はアーティスト。だから、誰の指図も受けない!自分の想いのままに描き、何もかも自分の手で作り出す」という意識で最後までやり切る。クリエイターモードは、「僕は、クリエイターだから、お客さんの期待に応える、いや、お客さんの期待を超えるものを描く、作り出す」というモードでやり切る。
感想など
ぼくはまさに「答えのあるゲーム」の世界で中高時代を過ごしていて、その後大学で「あれ、なんか今までと違うぞ…?」と薄々気づきました。ただ、そこで気づいた違和感をそのままにしてしまい、コンサルティングファームに就職した結果、めちゃくちゃに痛い目にあいました。
コンサルティングプロジェクトはまさに答えのないゲームなのですが、答えのあるゲームしかしたことのなかったぼくは、周りの優秀な方々のマインドセットや思考スピードについていくことができなかったのです。
今はだいぶその習慣は抜けてきてはいますが、事業経営という答えがなさすぎるゲームをするには、まだまだ足りていません。また、今はいろいろなところで文章を書いたりお話させていただく機会があり、そこで高いパフォーマンスを出すためにも、示唆出しスキルはもっともっと鍛えなければいけない状況です。
考えるエンジンで学んだことを改めて振り返ることができ、日々の頭の使い方を再考できる本でした。読みながら、高松さんの力強い声が響いてくるような錯覚に陥りました。笑
大変おススメです!ぜひ読んでみてください。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?