シン・エヴァを観終えて

シン・エヴァンゲリオン劇場版𝄇を観終えた。

年々、自分にとってのエヴァが、誰かと共有したり、アピールしたりするようなものではなく、自分の人生の中で起こった出来事の一つという感覚が強くなってきている。
ここでいう出来事とは、エヴァという作品に出会ったこと、めちゃくちゃ影響受けたこと、劇場版で呆然としたこと、でもやっぱエヴァって面白いよなって時々思い返してたこと、新劇場版を数年に一度観に行くことでもあり、エヴァの世界でシンジくんが体験する出来事のことでもある。
作品の中で繰り広げられる意味が分からないことも含めて、自分の身に起きたことのように感じ、大切な思い出のような、語るのが恥ずかしい過去のことのような、あまり言語化するものではないという思いだ。
先日NHKで放送されたエヴァンゲリオン大投票を見たとき、その気持ちに気づいた。
自分の人生で好きなシーンは?とか名ゼリフは?とか、テレビでワーッとやられたりしたらたまんないだろ。

Qを観た直後はまだそんな感情はなかったように思う。朝一番の回を観た直後、友人を呼びだして数時間ひたすら「すごかった・・・」と感慨にふける気持ちを共有したりもしたくらいだった。あれから数年、自分の生活や、作品との距離感も変わったんだろう。
それはそれでいいし、感想はもう少しほとぼりが冷めて、世間のネタバレへの警戒心が和らいだころにでもちょっとつづって終わろう、そんな風に思っていた。
が、やはり観終えた直後の自分の気持ちは、形にしておかないと後悔すると、寝る直前に思い立ち今に至ります。
自分の人生で、エヴァンゲリオンを見届けるということは、最初で最後なんだから。

きっと今日はこんな感じの文章をつづる人が山ほどいるんだと思います。

俺はずっとエヴァンゲリオンに人生をめちゃくちゃにされたと思っていた。エヴァは好きだし、そんな人生を否定する気はない。年を重ねた今にして思えば、めちゃくちゃ多感な時期(当時、シンジ君と同い年の14歳)にめちゃくちゃ刺激を受けて、これは自分の物語だと、自分にとってエヴァは特別で、エヴァも自分のために特別に作られたんじゃないかとすら思う部分もあった。それからいわゆるオタクになり(このオタクっていうのも、10数年後に重度のプリキュアオタクになった今にして思えばだいぶ”ゆるい”オタクだ)、家庭環境のこともあってネガティブだった自分は、ひねくれて、無気力で、行動しない癖にインターネットで得た知識を自分の誇りとする痛い人間になっていった。今ではそんなにネガティブでもないし、昔の自分を俯瞰して恥ずかしさを覚える程度にはだいぶ改まっていると思うけど、エヴァにはまったのがきっかけで、自分のネガティブさを是正も肯定もしないで時間をフイにしていたなと、思うことが時々あった。

けども、今日、シン・エヴァを観て気づいた。
エヴァンゲリオンは俺の人生をめちゃくちゃにしたんじゃない。ずっと、めちゃくちゃだった俺の人生を救おうとしてくれていたんだ。
旧劇場版でも、グッド・ラック・ナディアでも、庵野監督は、ずっとオタクに対して現実に飛び出せ、現実に生きろ、というメッセージを発していた。
それは知識としては理解できるけど、そんなこといって人をオタクにする装置を作ってるじゃん!と、メッセージを真っ直ぐに受け取れないまま、でもエヴァにすがって、「エヴァに乗るしかない」というシンジ君のように、エヴァを観るしかない、と思っていた。
エヴァにハマってなかったら、なんて想像はできないが、エヴァにはまったおかげで趣味が広がり、広がった趣味が支えになり、何とか今日までやってこれてきたんだと、シン・エヴァを観てやっと気づけた。

エヴァを視聴したとき14歳だったという偶然は少し誇りに思いつつ、あまりにもアニメの主人公に自分を重ねすぎていたことを、今でも自嘲気味に口にすることがある。作品と自分は分離して触れたほうがクールかもしれない。
けど、こんなにも没入できることは他にないんじゃないか。
アニメの中でアニメの主人公に向けられたセリフが自分に向けられてると思い込めるほど感情移入できるのは単純に楽しいし、自分をシンジ君と同じだと思い込んでたあの頃の自分をもう恥じなくていい、あの頃の自分を肯定しながら、新世紀を歩き始めたシンジ君のように、自分もエヴァを観終えた人間として歩んでいこう。
観る前は、視聴後にこんなさわやかな気分になれるなんて期待してなかった。どんな内容でも、どんな気分になっても全部受け入れる気持ちで観に行った。そしたら、エヴァンゲリオンは逆に俺を受け入れてくれた。
エヴァンゲリオンは、過去のTVシリーズも、旧劇場版も、そんなエヴァンゲリオンにハマって人生がどうにかなった人々も、すべてを受け入れて、さよならを告げた。
さよなら、すべてのエヴァンゲリオン、というのは、エヴァという作品が終わるからじゃない。エヴァンゲリオンという作品も、エヴァンゲリオンに魅せられた人たちも、みんなエヴァンゲリオンだ。過去は過去で大切にしまって、一緒に未来に行こう、未来でまた会おう、そのためのおまじないが、さよなら、すべてのエヴァンゲリオン。
また出てきた巨大な綾波も、どんどんエッチな格好になっていく(そしていつまでたってもかわいい)アスカも、田植えを手伝う綾波も、思ったよりいろんな種類がある槍も、シンジくんに対するヴィレのメンバーの距離感も、分からないこともたくさんある。分かろうとはしました。まあでもわかんなくてもいいよね。

まだ気持ちの整理が完全についたわけじゃないけど、だいぶ落ち着いて、言葉にしていくと、思った以上にいい気分で見届けることができたんだなと思う。本当に良かった。マジでよかった。自分の人生、捨てたもんじゃないじゃん。捨ててないけど。
ありがとう。

エヴァンゲリオン万歳!!

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