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【読書】白いしるし

西加奈子さんの小説は感情移入してしまうと読者の自分が振り回されて辛い。どこか客観的にキャラクターを見ているようで、いつの間にか感情が攫われる。そんな感覚。 恋をした相手に身を捧げ、ぶつかっていく主人公夏目。 期待、我慢、間島への熱情、絶望。 いろんな感情が波のように押し寄せてきた。 終わると分かっていても抜け出せない。 それでも当たって砕けてを繰り返して夏目を一女性として強くしている。 当たる勇気も砕ける勇気も私には乏しい。 だからなのか、夏目の女性としての生き方が

    • 【読書】汝、星のごとく

      すごく読み応えがあった。 母親に悩みを抱える高校生の男女が恋に落ち、共に成長する物語。 と言ってしまえばそうなのだけれど、こんなありふれた説明ではとても説明しきれない。 主人公の櫂と暁海の心情が細かく丁寧に描かれていて、何度も心が動かされた。 櫂はいざという時でも自分のために人を切り捨てられない優しさを持った人。でもそれは裏を返せば、本当の自由に踏み切れない弱さでもあった。 暁海は何度も挫折し、その度に自分の至らなさを認め、強くなっていった人。 時には弱さを見せ、人に頼る

      • 【読書】神さまのビオトープ

        神さまのビオトープ 凪良ゆう 前回に引き続き凪良ゆうさんの作品を読みました。 何度か書いているとおり、彼女の作品のファンのひとりです。 “流浪の月“から読み始めた凪良ゆうさんの小説。 紡がれる言葉に秘められたメッセージと描かれる情景の綺麗さに心が惹かれる感覚を覚えました。 それからというもの、まだまだ作品があることを知り、読破したい欲に従い読んできたのですが… ついにわたしの本棚にある最後の一作を読み終えました。 最後に手に取ったのは ”神さまのビオトープ”。

        • 【読書】すみれ荘ファミリア

          すみれ荘ファミリア 凪良ゆう 最近は自分のやるべきことを徐々に消化しつつ、 読書に興じる毎日を過ごしています。 読むだけではもったいないのでノートを作って 感想をメモすることが習慣になりつつあります。 最近読んだ「すみれ荘ファミリア」も素敵な本でしたので、 短いですが感想?をどん。 登場人物は下宿所のすみれ荘に暮らす人たち。 一見普通でバランスの取れた関係性だけど、 実はみんなそれぞれ弱さや闇を抱えている。 人には表や裏があると表現することがある。 でも実際その

        【読書】白いしるし

          【読書】生きるぼくら

          生きるぼくら 原田マハ いじめをきっかけに、引きこもりになった主人公の麻生人生が、 米づくりを通じて人間的に成長していく物語。 自分にできることが何もないように感じ、 先の見えない不安感に襲われる時があるかも知れない。 自分がどんどん小さくなって四方八方が分厚い壁に囲まれたような すごく窮屈な感覚に襲われる。 そんなときに一人で足掻いていても前に進むことはできない。 この小説を読んでいると 『一人じゃない。声を上げて一歩踏み出してみて。            必ず助け

          【読書】生きるぼくら

          【読書】わたしの美しい庭

          わたしの美しい庭  凪良ゆう 個人的に大ファンの凪良ゆう先生の小説。 いつ読んでも余韻が残るし、もう少し頑張ろうと思える。 コレクションしている中で最近読んだ本の感想です。 『人の心のうちなんてわからない。けれど,それでも,今微かに触れたかもしれないと思える瞬間,それがあれば十分だと思える。』 『みんなそれぞれ厳密にはひとりずつで,その折々でつながったり離れたりしながら生きている。』 これはこの本の中でわたしが好きだと思った文章。 人と関わり合うことで生まれる複雑な

          【読書】わたしの美しい庭