見出し画像

Skydio X2E 実機レポート

Skydioとは

Skydioは2014年にCEOであるAdam Bry(アダム・ブライ)氏により設立されたアメリカのドローンメーカーである。2019年、Skydioは「Skydio 2」をリリースし、2020年にはミリタリー・産業ユースの「Skydio X2」を発表。Visual SLAM技術によって障害物を検知し、自動で回避飛行ルートを計算して自律飛行できる。

また、対象物(人や車等)の行動を予測した精密なアクティブトラック(自動追尾飛行)も可能である。

日本国内ではコンシューマー向けの販売は予定されておらず、産業ユースとしてNTTドコモJIW(ジャパン・インフラ・ウェイマーク)から購入可能である。NTTドコモは法人窓口のみでの対応だが、JIWでは法人・個人を問わず購入することができる。

※2022年6月現在、NTTドコモ・JIWに加え「株式会社NTT e-Drone Technology」「株式会社センシンロボティクス」が販売代理店として新たに追加されている。

海外で販売されているSkydio機の主な周波数帯は5GHz帯であり、2.4GHz帯のみに制限することはできない。無線免許や諸手続きを行わず5GHz帯の電波を発射または空中使用した場合は電波法違反になる可能性があり、海外経由で購入した機体は注意が必要だ。
※海外版のSkydio 2は技適マーク有

画像1

Skydio X2E / X2D

アメリカで販売されているSkydio 2はコンシューマー向けの機体であり、Skydio X2はその上位機種と言える。産業ユースである「X2E」とミリタリーユースの「X2D」が存在し、暗号方式がそれぞれ異なっている。
X2Eの暗号方式はAES-128bitであり、X2DはAES-256bitと、現在最高レベルの暗号化技術を備えている。

X2E・X2Dともに各周波数帯に対応したモデルがあり、海外では5GHz帯モデルと1.8GHz帯モデル、日本では2.4GHz帯に制限されたモデルが販売されている。

※日本国内で販売されているX2Dは官公庁向けの機体であり、法執行機関もしくは治安関連者のみへの販売となる。

Color / Thermal

Skydio X2はサーマルカメラと可視光カメラを搭載した「Color / Thermal」と可視光カメラのみを搭載した「Color」が存在する。両機の可視光カメラはともに最大16倍のデジタルズームが可能である。

「Color」は広い視野による撮影が可能なことから、目視点検や調査業務等で活用でき、「Color / Thermal」は可視光カメラでは発見しずらい異常箇所をサーマルカメラを用いて特定することが可能である。

外見

Skydio X2のカラーリングは黒で統一されており、直線基調かつシャープなデザインで引き締まった印象が感じられる。4本のアームを折り畳むことができ携帯性に優れている。

画像17

可視光カメラ

Skydio X2は最大4K / 60fpsでの撮影に対応しており、シャッタースピードやホワイトバランス等細かい設定が可能である。「Color / Thermal」モデルと「Color」モデルでは、HFOV(水平視野)が異なるため、購入の際は注意が必要だ。

画像17
画像17

Skydio X2のデジタルズーム倍率は最大16倍であり、ダイアル入力を行うことで倍率を変えることができる。ただし、拡大率によっては画質が大幅に劣化する恐れがある。

画像12

※デジタルズームはすべての映像撮影モードに対応しているわけではなく、「1080p 30fps」又は「4K 30fps」でのみ有効である。

サーマルカメラ

サーマルカメラの解像度は320 x 256であり、最大4K / 30fpsでのサーマル撮影が可能だ。サーマルカメラは特定のシーンやポイントなどの温度測定、被写体の監視・識別に優れている。ただし、温度情報などは静止画に入らないため購入の際には注意が必要だ。

画像17

サーモグラフィーの表示は設定画面の「White Hot」「Black Hot」「Rainbow」「Ironbow」から選ぶことができ、自由に切り変えることが可能だ。

画像17

Skydio X2Eに搭載されたサーマルカメラはFLIR Bosonであり、最大8倍のデジタルズームが可能である。

画像18

エンタープライズ送信機

Skydio X2に付属するエンタープライズ送信機は、6.8インチ高輝度ディスプレイを備えており、防塵・耐水性に優れたデザインだ。送信機にはSamsungのAndroidデバイスが組み込まれており、重量は1130gとやや重い。

画像16

電源の挿入後は、内臓されたSkydioアプリケーションが自動的に起動し、接続待機状態となる。機体との接続・キャリブレーションは自動的に行われ、複雑な操作は必要としない。

バッテリー

Skydio X2は1つのバッテリーで35分の飛行ができる。Skydio 2のバッテリーはマグネット装着のみであったが、X2はバッテリーをスライドさせた上でマグネットで固定される仕組みだ。

画像18

バッテリーの充電は付属の充電ハブで行い、充電時間は約2時間ほど掛かる。バッテリーには自己放電機能が備わっており、14日間飛行をせず、充電状態が60%以上の場合は、自動で60%に調整される。

※充電ハブとは別に、Type-Cケーブルと充電アダプターを使用することで、機体本体から充電することもできる。

フライト

エンタープライズ送信機の「Launch / Land ボタン」の長押し、またはディスプレイをタップすることで、自動離陸が可能である。機体は離陸後一定の高さまで上昇し、ホバリングした状態で待機状態となる。

画像10

初めて飛行させた印象は「安定している」である。Skydio 2は少量の風でも機体が左右にブレる傾向にあったが、Skydio X2はブレ幅が非常に少ない。
設定画面で「ロール・ビッチ・ヨー・スロットル」の調整を行うことで、キレのある飛行が可能である。

少量の風・無風時においてはホバリングのブレ幅は少なく、安定した飛行が可能だ。ただし、強風時はホバリングのブレ幅が大きくなるため、強風時のホバリング性能は十分とは言えない。

着陸は、エンタープライズ送信機の「Launch / Land ボタン」を長押しすることで行える。ただし、着陸動作中は障害物回避機能がオフとなっているため、周囲の状況に注意が必要だ。

ハンドリリース / ハンドキャッチ

Skydio X2は、機体を水平に持った状態でキャリブレーションができ、ランディングマットが敷けない環境であっても「ハンドリリース」「ハンドキャッチ」が可能である。

ハンドリリースはエンタープライズ送信機の「Launch / Land ボタン」を長押し、機体を前方に傾けることで行える。一定の高さまで上昇後、ホバリング状態で待機状態となる。

機体が着陸動作の際、バッテリー部分を手で掴むことでハンドキャッチが可能である。
タイミング・コツを覚えれば、誰でも簡単に行える。ただし、強風時は機体が大きく揺れるため、状況次第では地面に着陸させた方が安全である。

伝送

日本仕様のSkydio X2Eの周波数帯は2.4GHz帯であり、飛行距離はカタログ値では3km程度と販売代理店より説明を受けている。Skydio 2 + スカイコントローラー3の欠点でもあったコマ落ち・ジャギーは改善されており、ストレスなく飛行することが可能だ。

※信号増幅器のようなアタッチメントは存在しておらず、伝送距離の拡張は行えない。

AEF

AEFとは機能拡張ソフトウェア「Autonomy Enterprise Foundation」の略称であり、Skydio X2Eの機能拡張が可能である。代表的な機能は「Vertical View」や「Super Zoom」、「Close Proximity Obstacle Avoidance」であり、状況認識や調査等の業務で活用できる。

価格

Skydio X2Eの価格は、国内販売代理店ではオープン価格となっているため、記載は控えたい。ただし、目安としての価格であれば、米国連邦調達庁(GSA)のポータルサイト「GSA Advantage」で確認ができる。

画像7

「Skydio X2E Color / Thermal 5GHzモデル」は「$14,170.31 」であり、AEF「$5,861.05 」を含めると「$20,000.00」ほどになる。

※Skydio X2はAEFの購入が必須となる。

最後に

Skydio X2Eを数十回以上フライトし、「まだ分からない」が率直な感想である。Skydioは3D Scanやキーフレーム機能など、革新的で魅力的なソフトウェアをリリースしており、今後のアップデート次第では、まだまだ伸びしろのある機体と言える。総じて「まだ未完成」といった表現が正しいだろうか。
本記事ではSkydio X2Eの基本的な性能について述べているが、その他の機能は検証中であり、まだ詳しく言及していない。今後も様々な環境下で検証を続け、より深く探っていきたいと考えている。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?