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相続は登山!? 登山に大事なことは計画と準備 ”当日同行できない登山ガイド”として



相続=登山!?

相続は登山に例えられます。
もちろん、たとえを持ち出して説明するのは安易でかえってその本質を見失うおそれもありますが、ものごとを大きく把握するのには有効です。
相続を登山に例えるとしたらどうなるでしょうか?



1合目付近は訃報の連絡や、葬儀の準備など
2〜3合目は役所への手続きや届出など
4〜5合目は相続人の調査、
6〜7合目は遺産調査、
8〜9合目は遺産分割協議、
そして、山頂は名義変更です。

あなたが被相続人(故人)の立場であるとしましょう。
あなたがのぞんだ想いや意思を受け取り、相続人にあなたから贈られた有形・無形の遺産がそれぞれ争いなく引き継がれ、故人が望んだ山頂からの風景(相続後の世界)を見ることが目標です。

登るのは相続人 あなたは、当日同行できない登山ガイド

相続の場合、実際に”山に登る”のは、被相続人(故人)がいなくなった後の、相続人(遺された人々)です。被相続人であるあなたは、その人たちのために周到な計画と準備をしてあげることしかできません。
あなたは、いわば”当日同行できない登山ガイド”なのです。

まずは登ってもらうこと


故人であるあなたの意向にかかわらず、相続人(遺された人々)が実際に相続するかは相続人自身が判断します。
遺された人が登山しない=「相続放棄」することも可能です。相続放棄するには相続開始後3ヶ月以内に判断しないといけないため、相続人が相続の価値を感じられないと、やめとこう、ということになりかねません。
あなたが遺した遺産や想いがどの程度相続人に届くかは、あらかじめ遺産の内容と、誰が関係するのかをはっきりさせておき、相続人の負担と不安を解消する必要があります。
 きちんと引き継げる遺産と範囲をあらかじめ明確にして、不安なく登山してもらうことが大事です。

遺された人々を道に迷わせないために


相続=登山のスタートは悲しみと混乱の中からになります。
相続人は故人を失った悲しみの中、タイトなスケジュールと膨大な事務作業をこなさなければなりません。訃報連絡のための交友関係の洗い出しから、葬儀などの慣れない段取り、各種手続き関係にはじまり、普段交流のない親戚関係との連絡調整などハードな状況が続きます。
 あらかじめの計画と下準備がない状態だと、相続人にかなりの体力的な負荷と精神的なストレスがふりかかります。

あなたにできること やるべきこと


相続人に必要以上の負荷をあたえず、安心して相続=登山してもらえるように、周到な計画と準備が必要です。
 第一に、相続人が道に迷わないように、まずは遺言書を残すことが大事です。遺言書は、故人の意思を死後に反映できる、法律効果がある手段です。
エンディングノートは遺言書にかけない、訃報連絡や葬儀、財産調査などでも必要になる大切な手がかりです。
ただし、法律効果があるわけではないので、確実に遺志を反映させたい場合は、死後事務委任契約を検討する必要があります。
 遺書には、公正証書遺言や自筆証書遺言などがありますが、無効となるリスクなどがありますので、弁護士、司法書士、行政書士などの専門家に依頼することをおすすめします。
 エンディングノートは法律行為を生じさせるものではないので必ずしも専門家の手を借りる必要はありませんが、後で説明するデジタル遺産の取り扱いなどを考慮して作成する必要があります。

準備なしでは乗り越えられないデジタルの崖

最近、各種契約などでは、各種書面を交付しない、ネットだけで完結する形の契約が増えています。既存の電力・ガスなどの契約でも、請求書などを紙で交付せず、ネットで照会する形をとることが増えています。
こうした場合、たとえば手がかりがまったくなく相続を迎えてしまうと相続人は困ったことになってしまいます。
スマホやパソコンのセキュリティは生体認証やパスワードなどで守られており、一定回数認証に失敗すると内容が消去される機種も存在します。
スマホのセキュリティは、専門業者であっても解読・突破することは難しいと言われていますので、セキュリティを解除できる持主本人がいなくなった場合、その内容にアクセスすることは至難のわざになります。
スマホやパソコンの内容から、連絡先や契約の内容などアクセスできないと、名義変更などに支障ができるほか、財産の調査もれや契約に基づく義務の履行違反、ひいては相続税の申告もれなどをひきおこしかねません。
デジタル機器(スマホやパソコン)への相続時のアクセス手段をのこすことは、相続人にとってはまさに相続=登山のトラブルを防ぐカギになってきます。
 とはいえ、デジタル機器の中身すべてを相続人に公開するのは気がすすまない、見せたくない場合もあります。デジタル機器へのアクセスとプライバシーの確保は適切な対応と準備が必要です。
デジタル機器へのアクセスをどのように相続人にのこしたらよいか、詳細は別の記事でご説明します。

相続=登山に大切なことはは計画と準備

相続人に相続という山を登ってもらうことは、あなたの人生の記憶と想いをたどってもらうことに他なりません。
あなたが希望するとおりの相続=登山になるか、ひとえに事前(生前)の準備、計画にかかっています。当然のことながら死後には直接手を貸すことはできないのです。
あなたが見てもらいたい景色、大切な人たちに共有してもらいたい想いはその計画と準備によってしか実現できません。
 そうした準備が不足すると、相続人に対する事務的な負担、精神的な負荷がかかり、相続人間に争いをもたらすことになりかねません。まさに暗雲がたちこめてくるのです。

上りは行政書士がお手伝い 頂上までサポート


 下りは、もとの日常へ戻るべく、税申告を行い、税務調査などへの配慮をおこないつつ山をおります。下りは税務に関することになりますので、税理士が対応します。

相続=登山に共通することは何度も申し上げますが、周到な計画と準備です。上りのゴールは頂上、名義変更・遺産の受取完了です。
 行政書士はこの計画と準備を遺言書や死後事務委任契約、エンディングノート作成などでサポートできます。特にデジタル遺産に関する生前準備は特に今後の相続のカギになってくることでしょう。
 被相続人には安心して、相続人には負荷・不安なく、相続=登山にのぞんでいただくのが行政書士の仕事です。


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