#24 生物生存戦略記③
皆さんは「目が前向きについているのはなぜか」と問われたときに、どのように返答するでしょうか。かの有名な漫画ドラえもんに登場する、のび太の先生は「前へ前へ進むためだ」と、とても良い解釈を示していました。
ただ、現在ではこの人間の目の付き方について、生物の身体機能を考察し、観測したいモノとの距離を測るためだと結論付けています。
このように生物の身体構造にはそれぞれ理由があり、構造の理解を進めていくことでその生物がどのような生存戦略を取ってきたのかが少しずつ見えてきます。
ここで今回は、生物の口(くち)の形から見る生存戦略について紹介したいと思います。(目の流れでしたが口の話をします)
生物の形質変化の話がされるとき、特に口の形状で有名なのがフィンチという鳥です。フィンチは同じ種であっても、身体の大きさやくちばしの形状に個体差や変異が大きく、また、生息環境によっては生態にも大きな差異があります。
フィンチの仲間には、ガラパゴスフィンチ属やダーウィンフィンチ属というのがいて、まさに進化の研究対象となってきた歴史が伺えます。
このフィンチたちは生息場所によって食べるものが異なり、地面に落ちた固い種子を砕いて食べているグループはくちばしが厚く大きくなり、昆虫を主食としているグループではくちばしは比較的小さく器用に使えるように薄かったり、細長くなっていたりします。その他にも吸血、道具の使用などそれぞれの生態に特化したくちばしを持っていることが観測されています。
そしてこの形質の特徴と生態の関係を研究することで、生物の進化や分化、遺伝の理解を深めることに成功しています。
私の好きな海洋生物たちも同じ水の中の暮らしをしていますが、口の形状を見ると何を食べて、どんな生活しているのかが少し見えてきます。
ヒラメやタチウオは他の生物を追いかけて噛みつき食べるため、鋭い歯がついています。アロワナやピラルクなんかは水面にある食べ物を食べるために口が上向きについていますし、口が下向きについているナマズやエイは地面や地中にある食べ物を食べていることが分かっています。口がストローのように長いヤガラは、食べものを吸い込んで丸呑みにしていたりと、口の形状と食べているものには因果関係が報告されています。
このようなことを念頭に生物を見れると、初めて出会う生物でも、どのようなものを食べて、どのあたりに住んでいて、どのような生態をしているのかがなんとなく見えてくるのです。
最後に、我々人間も自分の置かれている環境に対して順応する際は、様々な形質変化が行われています。形質の変化は筋肉の付き方や体幹、服装などの趣向なんかに現れてきて、よくよく観察するとその人がどういう環境に置かれた人なのかが見えてきます。相手の背景を考察することで、相互理解の一助となるかもしれません。皆さんも形状には意味があるという目線で人と接し、背景に思いをはせてみると、その人の新たな一面に出会えるかもしれません。
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