#21 批判力

「批判する」という言葉を聞いたときに多くの人はマイナスなイメージを想起するかと思う。かく言う私も“批判”に対して良いイメージがあるわけではない。
だが、ネットで調べると「物事の可否に検討を加え,評価・判定すること」と定義されており、否定や揚げ足取りのことではなく、フラットな物事のとらえ方となっている。
また、上文の定義から言うと、批判を行う際は検討することを伴うため、最終的に客観的じゃないあるいは根拠の薄い状態では批判できたとは言えない。
これらの前提を踏まえて、今回は「批判力」を養うことが人生を豊かにし、「批判力」を鍛えることが重要であるという話をしていきたいと思う。

まず、私の批判力との出会いから話をしたい。
学生の頃に今回のような批判力をテーマにした講義(雑談?)を受けることがあった。
講義の題材となっていたのは地球温暖化の解決で、教授が「私は、地球温暖化対策として、巨大クーラーを作って直接地球を冷やす方法が良いと思います」と提案した。生徒たちは笑っていたが、教授はさらに続けて「皆さん、私の提案について反論してみてください」と言った。隣近所で話し合い批判内容を考える時間が設けられ、自分たちのグループでは、涼しくする分、排気熱を放出しているため地球を冷やすことはできず地球温暖化の解決策にはならないと結論付けた。しかし、教授はこの結論に対して、クーラーを使うことでこの講義室の室内温度は外気の10℃近く下げることに成功しているのに対して、エアコンを使い始めてから外気はほとんど変化無いですよねと反論した。この反論に対して、涼しくなっているのは閉じられた空間のみとか、排気を同じ広さの部屋に入れたら下がった分と同じぐらい温度が上昇するなどを提言したが完全に反論できるまでには至らなかった。
この後、丁寧に熱交換の仕組みや回転機器の放射する熱量、地球温暖化の定義・条件などを説明するとともに、まんまと温暖化の対策が気温の上げ下げのみの話にすげ変えられていて、知識、前提、アプローチなど多面的に物事を捕らえられていなかったことを説明された。我々は荒唐無稽な提案に対してあらを探すぞ!という視点に固執していて、フラットに物事を捕らえることができなくなっていたことを知った。

ここで最初の提言に戻ってなぜ批判力が人生を豊かにするのかというところで、我々の生活圏内に存在する様々な”結論づけられたもの”は、往々にして偏った視点でしか見られていないことが多く、特に個人レベルの発信は注意が必要である。しかし、そのような論に対して我々は鵜呑みにするか否定するかになりがちで、本質を見逃すことが多いように感じる。
我々聞く側は提供されるものが本当に正しいか、視点・視野を変えるとどうなるか、そもそも前提に破綻がないかなど批判の目線で捕らえないと、いいように消費されてしまうかもしれない。

最後に、批判力を高めるためには、自分自身の前提条件を無くすことが重要で、知らず知らずのうちに思い込む、こうに違いないという考えにまず気づき、フラットな感情で本当にそうか?と考えることが重要だ。

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