「腐女子」よりも逸脱した人たちがいる、という話(2022年3月18日「飛ぶ教室」感想その1)
ラジオの感想文です。ラジオはこちら。
まずは、「腐女子のワタシ」についての感想文。
オタクで腐女子な自分は「異常で変態」だと思ってた。でもmixiで「偉大なる凡人」という紹介文を書いてもらった。
紹介文を書いてくれたのは、都会の友人。 夫の親友で、オタク度が極振りすぎてPCの中古販売や修理を稼業としてる人がいて、「こんなすごい人がいるんだよ」と彼に言ったところ、「都会にはそういう人、履いて捨てるほどいるよ」とのこと。
私自身は、自分のパラメーターは「オタク」とか「腐女子」とかに突出してると思ってたんだけど、友人から見たら「常識人」のほうに8割以上平均振りしてて、若干趣味が「オタク方面」である、くらいのバランス型に見えたらしい。
彼の紹介文では、「一声かけると大勢の人が集まってくる姉御」的な事も書かれていた。自分はオタクで周りと話も合わないので、出会ったオタクの人との付き合いは大事にしたいと数少ない出会いを大切に人間関係を維持しようとしてただけだが、そっちのほうが彼の評価ポイントだったようだ。
この放送で紹介される本の中には、「オタクである自分を恥じてかくして生きる一般人女性」が、一般人の道から外れたアウトローな人々の逸脱した、振り切った、普通の人から見たら「ヘンテコ」な生き方をせざるを得なかった人々との出会いがあり、その出会いの中で
「自分は『普通』の範疇の人だったんだ」と気づいていくようなストーリーであると私は聞いていて思った。 私はほぼ、この「オタクなのを恥じて隠して生きる一般人」の側だなと改めて思った。 若干逸脱しちゃった人と会って話をしたこともあるけれど、聞いていると少し心が苦しくなった。
私が出会ったその「少し逸脱した人」は女性。
私が働く施設の清掃をしてくれる、クリーニング会社の従業員だ。
勤務時間は半日。
過去にパチンコ依存をして、自殺未遂歴があり、私と交流していた頃も、不倫とタバコが止められなかった。
彼女は喘息で、吸入器で吸引治療もしている。それなのにタバコが止められない。夫から止められているからタバコを預かってくれと頼まれたことがある。また、お金を貸してくれと頼まれたこともある。金額は5000円くらい。
夫に、「一週間5000円で食費をやりくりしろ」と言われているそうで、どうしても数千円足りなくなることがあるそうだ。
借りパクではなく、律義に翌月に2000円、次の月に1000円とか、少しずつだが返金してくれた。
私はその頃、業務の一環として予算差し引きの仕事もしていた。(簡単に言うと伝票を切るという仕事)だから、このクリーニング会社が今年度何十万円でこの仕事を請け負ったのかも知っている。そこから類推すると、彼女たちの人件費が、県の法定最低賃金スレスレであろうことも想像できた。
ちなみに、私が住んでいる県は、全国でも最低レベルの「法廷最低賃金」の県だ。
不倫相手の事を「彼」と言う。「彼」との間で妊娠してしまったことがあり、泣きながら中絶した経験もあると語った。人のいないところでよく、「彼からネックレスをもらった。夫のいないところでこっそり身に着けている」などとのろけ話を聞かされた。「彼」の事は夫には秘密。バレるとやっぱりそうとうまずいらしい。
彼女にとっては、不倫相手も夫も、彼女の欠けた心を埋めてくれた「大切な人」で、どちらも捨てることができないらしい。
効いていて苦しかった。
それと、タバコを預かるのも、5000円を貸すのも、心が少し苦しくなった。
そういった行為自体は、私の生活を破壊するような大きな出来事ではない。自分にとっては5000円は、何ならプレゼントしてしまっても困らない金額だ。
しかし彼女は、「あげるよ」と言っても断り、少額ずつ返してくる。
私が苦しくなるのは、、彼女のそういった所業には、「逸脱者の業」が見え隠れしているからだ。
私は夫に相談した。
「タバコの預かりも、お金を貸すのも断った方が良い」と、夫はキッパリと言った。私は、彼女に少し悪いなあと思いつつも、自分の心の健康を守るために、やんわりと断らせてもらった。
彼女はきっと、「自分の、言えない秘密を吐き出せる人」を求めていたのだろう。
人事異動で私は職場が変わり、その後は彼女と会ったのは一度きりで、自然に疎遠になった。彼女には悪いのだが、正直ほっとした。
一般人の私にとっては、この程度の「まだアウトサイダー側に片足を突っ込んでて抜け出しきれてない」人との交流でも、断ち切りたい衝動に駆られるくらいなので、この小説の主人公の腐女子の人は、実在の人物だとしたら相当にすごいものを見てしまったんだろうと思う。
そう、「腐女子」なんてものは、今や「BL愛好家です。ちょっとオモテでは言えないけどねー」位のものなのだ。普通の男性がこっそりエロ本を読むぐらい、「普通」に近い感覚で取り扱われるように、世間様も変わってきている。
そんな時代になったからこその、この小説の上梓なのかもしれない。
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