ヘンタイプリズンを完走した感想(一切のネタバレ無し)

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────ここは、変態の流刑地。

どうも、tarukuです。

6年ぶりくらいにエロゲーを完走しました。
往年のアリスソフト、Nitro+、Key、Type-moonに並び立つ勢いで
人気爆増中と一部界隈で騒がれているクルッポーの新作とのこと。
エロゲ全盛時代を過ごしてきた人間からすれば、ここ数年の業界の下火ムードはただただシナリオライターが育ってないだけ(今や、何か書けば地上波でバカ売れする全盛のライター達がおかしい)と思ってたのであんまり期待はしてなかった。
発売日の深夜からプレイ開始して、1/28-2/1の4日間でクリア。
ほんとに面白くて熱中はしたものの、仕事、家事、睡眠時間を蔑ろにせず、
無理のない範囲でプレイして、そんな感じのボリュームかな。
多分クリアまでのプレイ時間は20h超えてない。

「評価点」

■良かったところ
・テキストの読みやすさが異常
・「犯罪」という重いテーマを丁寧に扱ったこと
・男含めた各キャラクターの個性
・美しすぎるラストの読後感

■ダメなところ
・恋愛描写があまりにも特殊すぎた
・伏線回収的な意味でめっちゃサプライズ感があるわけではない
・主人公のカッコいいポイントがかなり独特
・スチルとかスクリプト演出がちゃちぃ。

以下、上記についてそれぞれ掘り下げます。

・テキストの読みやすさ&「犯罪」のテーマ
→特にギャグのテンポ感と声優さんの技量が凄まじかった。
 エロゲの日常シーンは、ジャンプ前の屈伸というか、遠くまで
 飛ぶための助走というか、我慢の時間が多いんだよね。
 このゲームは"日常がメイン"と言わんばかりの、計算されたコメディ
 パートで、適度に伏線撒きつつ、使ったネタを擦らないのがホントに
 毎度新鮮で面白かった。
 個人的にツッコミ不在、というかツッコミボケみたいな感じで、
 「君のツッコミもなんかズレてない?」っていう足りてない部分を
 視聴者の想像に働きかけてくるギャグがめっちゃ好きなんだよね~。
 もちろんゲーム内で「バシッとツッコんで綺麗にオチる」完結したコント
 をする日常パートも好きなんだけど、このヘンタイプリズンの常にどこへ
 不時着するかわからないフワフワした日常パートはホントに計算されてて
 面白かった。
 基本ネットミームのパロディが多いから、拾えるだけの知識をプレイヤー
 に要求してくるのがちょいハードル高めかも。
 (ネタがわかると、パロディとして拾ってきたところが変にマイナーで
 めっちゃおもろい)
 加えて、日常パートからシリアスパートの切り替えがめっちゃ早い。
 普通のエロゲが、溜めて溜めて終盤一気に重力加速度が最大になる
 ジェットコースターだとして、ヘンタイプリズンは「上げて落として
 上げて落として」の波がめちゃくちゃ細かい。
 先の展開が気になる...!って思った次のシーンでもう答え合わせがある。
 これが原因で、一気読みしちゃった。
 辞め時というか休憩できない、このゲーム。
 勿論、他のゲームみたいに最後の最後に今までのピースが全部埋まる
 カタルシスもわかる。
 でもこのゲームひとつの波が小さくても、先が気になる"引き"の部分を、
 凄く丁寧に書いてる。
 多分、「主人公サイドが囚人、生活範囲は獄中」っていう、いつ地獄に
 落ちるかわからない緊張感が、日常のダラダラ感に対して、
 カンフル剤として作用してるんだと思う。
 あとギャグが面白いのはあるけど、純粋に文字情報として直接スラスラ
 入ってくるのはもう完全にライターの技術っすね。
 虚淵とか奈須の書くシナリオはいちいち手止めて整理したくなるから、
 活字体力がないと無理。(あれはあれで面白いけど)
 で、これだけギャグが蔓延してるシナリオなのに、「犯罪」という
 テーマを蔑ろにしないのが凄く良かった。
 女子高生コンクリ事件から京王線ジョーカーに代表する「無敵の人」を
 劇中でパロったキャラが出たりするけど、彼らも主人公と同じ囚人サイド
 の人間なわけで、その環境自体がもう主人公達の言動に対して説得力を
 削ぐことにしかならないから、感情移入難しくなっちゃうじゃない?
 でもそれが成立する絶妙なシナリオのバランス感覚と、ギャグで濁さずに
 「良い犯罪者もいる」みたいな都合の良い偶像を描かず、現代のリアルな
 倫理観をキャラに反映させるのはかなり攻めたなと思ったし、好印象。

・キャラの個性
→ほんと、みんな愛おしい。
 「頑張れ~負けるな~」ずっとそういう目でテキストを追ってた。
 特撮の応援上映のごとく。
 また、月並みだけど敵サイドも恨むに恨みきれないというか人間味あって
 とくに黒幕は「あぁ、エロゲメーカーらしいわw」っていう思想の作り方
 でちょっとメタっぽい見方だけど熱くなったよ。

・読後感
→個別ルートと大団円があって、大団円はもう完全に映画。
 というか傑作映画をごちゃごちゃにパロってるぽいから、そりゃ感動する
 わな、と。(でも個別ルートのほうが好き)
 未だに余韻に引きずられてるから当分シナリオゲーできないカモ。


・恋愛描写
→いや特殊すぎィ!
 ごめん、ぶっちゃけコレは割とキモ...苦手だった。
 いやー、俺がエロゲに求めてるのは「規制のなくなった少女漫画」程度に
 ベッタベタな王道の恋愛描写なので、割と置いてけぼりくらった。
 行為中の淫語フリースタイルラップは普通に好きな方の性癖だけど、
 この会社はそういうシーンに対する信念が強すぎてキャラに宿ってるのが
 個人的にノイズだったな。。。。
 でもシナリオの続きが気になる人の障害になるようなボリュームの
 エッチシーンじゃなかったよ。
 例によって、「エロいらねぇだろ!」の意見は無し。
 要る、でもこの作品に限っては苦手。

・伏線回収&主人公
→最後にどでかい謎が解き明かされる!みたいなビッグサプライズは
 なかったかな。マジでラストまでのジェットコースターみたいな道中が
 楽しいゲームだと思う。これは飽きさせないシナリオ作りをするための
 弊害みたいなもので、「溜めて最後に爆発」系のカタルシス作品とは
 トレードオフだからしょうがない。
 まぁその展開を期待はしていたし、予想通りそうなるよね、っていう。
 あと主人公のかっこよさが独特。
 「双亡亭壊すべし」の主人公くらい独特。
 間違いなく週刊少年ジャンプの主人公ではない。
 カッコよさとは別に、主人公はギャグシーン最強のスパイスなので文句は
 無し。

・演出関連もろもろ
→これマジでもったいないと思う。
 もう結構売れた会社だろうから、力入れて欲しい。
 音楽もシナリオもめっちゃ展開熱いのに、いかんせん絵面が動かん。
 (遊戯王パロでダイレクトアタック受けたときのLPが削れるSEだけ
 完成度高くて笑った)
 UIは使いやすくて目新しい機能もあってgood、めちゃくちゃ派手な
 展開多いから、絵がもう少し動く(動いているように見える)演出が
 入るだけで臨場感全然違うと思う。
 なんなら最近の低予算同人ゲーのが創意工夫されてる。
 令和に真っ向から紙芝居をやる度胸は買う。


以上。
PS.「抜きたし1&2」は絶対やりたいけど、かなり迷い中。

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