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第十七章 二つの顔をもつ男 13

試験の結果がまだ出ていないことを、ハリーはほとんど忘れていたが、それが発表された。

驚いたことに、ハリーもロンもよい成績だった。もちろんハーマイオニーは学年でトップだった。ネビルはすれすれだったが、薬草学の成績がよくて魔法薬学のどん底の成績を補っていた。

意地悪なばかりかバカなゴイルが退校になればいいのにと、みんなが期待していたが、彼もパスした。残念だったが、ロンに言わせれば、人生ってそういいことばかりではない。

そして、あっという間に洋服だんすは空になり、旅行かばんはいっぱいになった。ネビルのヒキガエルはトイレの隅に隠れているところを見つかってしまった。 「休暇中、魔法を使わないように」という注意書きが全生徒に配られた__「こんな注意書き、配るのを忘れりゃいいのにって、いつも思うんだ」とフレッド・ウィーズリーが悲しそうに言った。

ハグリッドが湖を渡る船に生徒たちを乗せ、そして全員ホグワーツ特急に乗り込んだ。 しゃべったり笑ったりしているうちに、車窓の田園の緑が濃くなり、こぎれいになっていった。 バーティー・ボッツの百味ビーンズを食べているうちに、汽車はマグルの町々を通り過ぎた。みんなは魔法使いのマントを脱ぎ、上着やコートに着替えた。そしてキングズ・クロス駅の九と四分の三番線ホームに到着した。

プラットフォームを出るのにしばらくかかった。年寄りのしわくちゃな駅員が改札口に立っていて、ゲートから数人ずつバラバラに外に送り出していた。固い壁の中から、いっぺんにたくさんの生徒が飛び出すと、マグルがびっくりするからだ。
「夏休みに二人とも家に泊まりにきてよ。ふくろう便を送るよ」とロンが言った。
「ありがとう。僕も楽しみに待っていられるようなものが何かなくちゃ…」とハリーが言った。
人の波に押されながら三人はゲートへ、マグルの世界へと進んでいった。何人かが声をかけていく。
「ハリー、バイバイ」 「またね。ポッター」
「いまだに有名人だね」とロンがハリーに向かってニヤッとした。
「これから帰るところではちがうよ」とハリー。
ハリーとロンとハーマイオニーは一緒に改札口を出た。
「まあ、彼だわ。ねえ、ママ、見て」
ロンの妹のジニー・ウィーズリーだった。が、指さしているのはロンではなかった。
「ハリー・ポッターよ。ママ、見て!私、見えるわ」
とジニーは金切り声をあげた。
「ジニー、おだまり。指さすなんて失礼ですよ」
ウィーズリーおばさんが三人に笑いかけた。
「忙しい一年だった?」
「ええ、とても。お菓子とセーター、ありがとうございました。ウィーズリーおばさん」
「まあ、どういたしまして」
「準備はいいか」
バーノンおじさんだった。相変わらず赤ら顔で、相変わらず口ひげをはやし、相変わらずハリーのことを普通でないと腹を立てているようだった。そもそも普通の人であふれている駅で、ふくろうの鳥かごをぶら下げているなんて、どんな神経をしてるんだと怒っている。その後ろにはペチュニアおばさんとダドリーが、ハリーの姿を見るのさえも恐ろしいという様子で立っていた。
「ハリーのご家族ですね」
とウィーズリーおばさんが言った。
「まあ、そうとも言えるでしょう」
とバーノンおじさんはそう言うなり、
「小僧、さっさとしろ。おまえのために一日をつぶすわけにはいかん」
と、とっとと歩いていってしまった。

ハリーは少しの間、ロンやハーマイオニーと最後の挨拶を交わした。
「じゃぁ夏休みに会おう」
「楽しい夏休み…あの…そうなればいいけど」
ハーマイオニーは、あんないやな人間がいるなんて、とショックを受けて、バーノンおじさんの後ろ姿を不安げに見送りながら言った。
「もちろんさ」
ハリーが、うれしそうに顔中ほころばせているので、二人は驚いた。
「僕たちが家で魔法を使っちゃいけないことを、あの連中は知らないんだ。この夏休みは、ダドリーと大いに楽しくやれるさ…」


fin

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