見出し画像

第9章 闇の印 6

ヴォルデモートの__?」
「ハリー、とにかく急いで!」
ハリーは後ろを向いた__ロンが急いでクラム人形を拾い上げるところだった__三人は空地を出ようとした__が、急いだ三人がほんの数歩も行かないうちに、ポン、ポンと立て続けに音がして、どこからともなく20人の魔法使いが現われ、三人を包囲した。

ぐるりと周りを見回した瞬間、ハリーはハッとあることに気づいた。包囲した魔法使いが手に手に杖を持ち、いっせいに杖先をハリー、ロン、ハーマイオニーに向けているのだ。考える余裕もなく、ハリーは叫んだ。
伏せろ!
ハリーは二人をつかんで地面に引き下ろした。
麻痺せよ!
20人の声が轟いた__目の眩むような閃光が次々と走り、空地を突風が吹き抜けたかのように、ハリーは髪の毛が波立つのを感じた。
わずかに頭を上げたハリーは、包囲陣の杖先から炎のような赤い光がほとばしるのを見た。光は互いに交錯こうさくし、木の幹にぶつかり、跳ね返って闇の中へ__。

「やめろ!」聞き覚えのある声が叫んだ。
やめてくれ!わたしの息子だ!
ハリーの髪の波立ちが収まった。頭をもう少し高く上げてみた。目の前の魔法使いが杖を下ろした。
身をよじると、ウィーズリーおじさんが真っ青になって、大股でこちらにやってくるのが見えた。
「ロン__ハリー__」
おじさんの声が震えていた。
「__ハーマイオニー__みんな無事か?」
「どけ、アーサー」無愛想な冷たい声がした。
クラウチ氏だった。魔法省の役人たちと一緒に、じりじりと三人の包囲網をせばめていた。
ハリーは立ち上がって包囲陣と向かい合った。クラウチ氏の顔が怒りで引きつっていた。

「だれがやった?」
刺すような目で三人を見ながら、クラウチ氏がバシリと言った。
「おまえたちのだれが『闇の印』を出したのだ?」
「僕たちがやったんじゃない!」ハリーは髑髏を指差しながら言った。
「僕たち、なんにもしてないよ!」
ロンは肘をさすりながら、憤然として父親を見た。
白々しらじらしいことを!」
クラウチ氏が叫んだ。杖をまだロンに突きつけたまま、目が飛び出している__狂気じみた顔だ。
「おまえたちは犯罪の現場にいた!」
「バーティ」長いウールのガウンを着た魔女が囁いた。
「みんな子供じゃないの。バーティ、あんなことができるはずは__」
「おまえたち、あの印はどこから出てきたんだね?」
ウィーズリーおじさんが素早く聞いた。
「あそこよ」
ハーマイオニーは声の聞こえたあたりを指差し、震え声で言った。
「木立の陰にだれかがいたわ……何か叫んだの__呪文を__」
「ほう。あそこにだれかが立っていたと言うのかね?」
クラウチ氏が飛び出した目を今度はハーマイオニーに向けた。
顔中にありありと「だれが信じるものか」と書いてある。
「呪文を唱えたと言うのかね?お嬢さん、あの印をどうやって出すのか、大変よくご存知のようだ__」

しかし、クラウチ氏以外は、魔法省のだれも、ハリー、ロン、ハーマイオニーがあの髑髏を創り出すなど、とうていありえないと思っているようだった。
ハーマイオニーの言葉を聞くと、みんなまたいっせいに杖を上げ、暗い木立の間を透かすように見ながら、ハーマイオニーの指差した方向に杖を向けた。
「遅すぎるわ」
ウールのガウンの魔女が頭を振った。
「もう『姿くらまし』しているでしょう」
「そんなことはない」
茶色いゴワゴワ髭の魔法使いが言った。セドリックの父親、エイモス・ディゴリーだった。
「『失神光線』があの木立を突き抜けた……犯人に当たった可能性は大きい……」
「エイモス、気をつけろ!」
肩をそびやかし、杖をかまえ、空地を通り抜けて暗闇へと突き進んでいくディゴリー氏に向かって、何人かの魔法使いが警告した。
ハーマイオニーは口を手で覆ったまま、闇に消えるディゴリー氏を見送った。

数秒後、ディゴリー氏の叫ぶ声が聞こえた。
「よし!捕まえたぞ。ここにだれかいる!気を失ってるぞ!こりゃあ__なんと__まさか……」
「だれか捕まえたって?」
信じられないという声でクラウチ氏が叫んだ。
「だれだ?いったいだれなんだ?」
小枝が折れる音、木の葉のこすれ合う音がして、ザックザックという足音とともに、ディゴリー氏が木立の陰から再び姿を現わした。
両腕に小さなぐったりしたものを抱えている。
ハリーはすぐにキッチン・タオルに気づいた。ウィンキーだ。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?