第18章 ドビーのごほうび 8
これまで何度かホグワーツの宴会に参加したハリーにとっても、こんなのは初めてだった。みんなパジャマ姿で、お祝いは夜通し続いた。
ハリーには嬉しい事だらけで、どれが一番嬉しいのか、自分でもわからなかった。ハーマイオニーが「あなたが解決したのね!やったわね!」と叫びながらハリーに駆け寄ってきたこと。ジャスティンがハッフルパフのテーブルから急いでハリーのところにやってきて、疑ってすまなかったと、ハリーの手を握り、何度も何度も謝り続けたこと。ハグリッドが明け方の三時半に現れて、ハリーとロンの肩を強くポンと叩いたので、二人ともトライフル・カスタードの皿に頭を突っ込んでしまったこと。ハリーとロンがそれぞれ二百点ずつグリフィンドールの点を増やしたので、寮対抗優勝杯を二年連続で獲得できたこと。マクゴナガル先生が立ち上がり、学校からお祝いとして期末試験がキャンセルされたと全生徒に告げたこと(「えぇっ、そんな!」とハーマイオニーが叫んだ)。ダンブルドアが「残念ながらロックハート先生は来学期学校に戻ることはできない。学校を去り、記憶を取り戻す必要があるから」と発表したこと(かなり多くの先生がこの発表で生徒と一緒に歓声をあげた)。
「残念だ」ロンがジャム・ドーナツに手を伸ばしながら呟いた。「せっかくあいつに馴染んできたところだったのに」
夏学期の残りの日々は、焼けるような太陽で、もうろうとしているうちに過ぎた。ホグワーツ校は正常に戻ったが、いくつか小さな変化があった。「闇の魔術に対する防衛術」のクラスはキャンセルになった(ハーマイオニーは不満でブツブツ言ったが、ロンは「だけど、僕たち、これに関してはずいぶん実技をやったじゃないか」と慰めた)。ルシウス・マルフォイは理事を辞めさせられた。ドラコは学校を我が物顔にのし歩くのをやめ、逆に恨みがましくすねているようだった。一方、ジニー・ウィーズリーは再び元気いっぱいになった。
あまりにも速く時が過ぎ、もうホグワーツ特急に乗って家に帰るときが来た。ハリー、ロン、ハーマイオニー、フレッド、ジョージ、ジニーは一つのコンパートメントを独占した。夏休みに入る前に、魔法を使うことを許された最後の数時間を、みんなで十分に楽しんだ。「爆発ゲーム」をしたり、フレッドとジョージが持っていた最後の「花火」に火を点けたり、お互いに魔法で武器を取り上げる練習をしたりした。ハリーは武装解除がうまくなっていた。
キングズ・クロス駅に着く直前、ハリーはあることを思い出した。
「ジニー__パーシーが何かをしてるのを君、見たよね。パーシーが誰にも言わないように口止めしたって、どんなこと?」
「あぁ、あのこと」ジニーがクスクス笑った。「あのね__パーシーにガールフレンドがいるの」
「なんだって?」
フレッドがジョージの頭に本を一山落とした。
「レイブンクローの監督生、ペネロピー・クリアウォーターよ」ジニーが言った。
「パーシーは夏休みの間、ずっとこの人にお手紙書いてたわけ。学校のあちこちで、二人でこっそり会ってたわ。ある日二人が空っぽの教室でキスしてるところに、たまたまあたしが入って行ったの。ペネロピーが__ほら__襲われたとき、パーシーはとっても落ち込んでた。みんな、パーシーをからかったりしないわよね?」ジニーが心配そうに聞いた。
「夢にも思わないさ」そう言いながらフレッドは、まるで誕生日が一足早くやってきたという顔をしていた。
「絶対しないよ」ジョージがニヤニヤ笑いながら言った。
ホグワーツ特急は速度を落とし、とうとう停車した。
ハリーは羽ペンと羊皮紙の切れ端を取り出し、ロンとハーマイオニーの方を向いて言った。
「これ、電話番号って言うんだ」
番号を二回走り書きし、その羊皮紙を二つに裂いて二人に渡しながら、ハリーがロンに説明した。
「君のパパに去年の夏休みに、電話の使い方を教えたから、パパが知ってるよ。ダーズリーのところに電話くれよ。オーケー?あと二ヵ月もダドリーしか話す相手がいないなんて、僕、耐えられない…」
「でも、あなたのおじさんもおばさんも、あなたのこと誇りに思うんじゃない?」
汽車を降り、魔法のかかった柵まで人波に混じって歩きながら、ハーマイオニーが言った。
「今学期、あなたがどんなことをしたか聞いたら、そう思うんじゃない?」
「誇りに?」ハリーが言った。
「正気で言ってるの?僕がせっかく死ぬ機会が何度もあったのに、死に損なったっていうのに?あの連中はカンカンだよ…」
そして三人は一緒に柵を通り抜け、マグルの世界へと戻って行った。
_______Fin
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