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第18章 ムーニー、ワームテール、パッドフット、プロングズ 3

ルーピンの声のほかに聞こえるものといえば、スキャバーズが怖がってキーキー鳴く声だけだった。
「そのころのわたしの変身ぶりといったら__それは恐ろしいものだった。狼人間になるのはとても苦痛に満ちたことだ。噛むべき対象の人間から引き離され、かわりにわたしは自分を噛み、引っ掻いた。
村人はその騒ぎや叫びを聞いて、とてつもなく荒々しい霊の声だと思った。
ダンブルドアはむしろうわさを煽った……いまでも、もうこの屋敷が静かになって何年もたつのに、村人は近づこうともしない……。
しかし、変身することだけを除けば、人生であんなに幸せだった時期はない。生まれて初めて友人ができた。三人のすばらしい友が。シリウス・ブラック……ピーター・ペティグリュー……それから、言うまでもなく、ハリー、君のお父さんだ__ジェームズ・ポッター。
さて、三人の友人が、わたしが月に一度姿を消すことに気づかないはずはない。わたしはいろいろ言い訳を考えた。母親が病気で、見舞いに家に帰らなければならなかったとか……わたしの正体を知ったら、とたんにわたしを見捨てるのではないかと、それが怖かったんだ。しかし、三人は、ハーマイオニー、君と同じように、ほんとうのことを悟ってしまった……。
それでも三人はわたしを見捨てはしなかった。
それどころか、わたしのためにあることをしてくれた。おかげで変身は辛くないものになったばかりでなく、生涯で最高の時になった。
三人とも『動物もどきアニメーガス』になってくれたんだ」

「僕の父さんも?」ハリーは驚いて聞いた。
「ああ、そうだとも」ルーピンが答えた。「どうやればなれるのか、三人はほぼ三年の時間を費やしてやっとやり方がわかった。君のお父さんもシリウスも学校一の賢い学生だった。それが幸いした。
なにしろ『動物もどきアニメーガス』変身はまかりまちがうと、とんでもないことになる。魔法省がこの種の変身をしようとする者を厳しく見張っているのもそのせいなんだ。
ピーターだけはジェームズやシリウスにさんざん手伝ってもらわなければならなかった。五年生になって、やっと、三人はやり遂げた。それぞれが、意のままに特定の動物に変身できるようになった」

「でも、それがどうしてあなたを救うことになったの?」
ハーマイオニーが不思議そうに聞いた。
「人間だとわたしと一緒にいられない。だから動物としてわたしにつき合ってくれた。狼人間は人間にとって危険なだけだからね。三人はジェームズの『透明マント』に隠れて、毎月一度こっそり城を抜け出した。
そして、変身した……ピーターは一番小さかったので、『暴れ柳』の枝攻撃をかいくぐり、下に滑り込んで、木を硬直させるふしに触った。それから三人でそっとトンネルを降り、わたしと一緒になった。友達の影響で、わたしは以前ほど危険ではなくなった。体はまだ狼のようだったが、三人と一緒にいる間、わたしの心は以前ほど狼ではなくなった」

「リーマス、早くしてくれ」
殺気だった凄まじい形相でスキャバーズを睨めつけながら、ブラックが唸った。
「もうすぐだよ、シリウス。もうすぐ終わる……そう、全員が変身できるようになったので、ワクワクするような可能性が開けた。ほどなくわたしたちは夜になると『叫びの屋敷』から抜け出し、校庭や村を歩き回るようになった。シリウスとジェームズは大型の動物に変身していたので、狼人間を抑制できた。ホグワーツで、わたしたちほど校庭やホグズミードの隅々まで詳しく知っていた学生はいないだろうね……こうして、わたしたちが『忍びの地図』を作り上げ、それぞれのニックネームで地図にサインした。
シリウスはパッドフット、ピーターはワームテール、ジェームズはプロングズ」
「どんな動物に__?」ハリーが質問しかけたが、それを遮って、ハーマイオニーが口を挟んだ。

「それでもまだとっても危険だわ!暗い中を狼人間と走り回るなんて!もし狼人間がみんなをうまく撒いて、誰かに噛みついたらどうなったの?」
「それを思うと、いまでもゾッとする」ルーピンの声は重苦しかった。

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