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第16章 炎のゴブレット 4

「でも、17歳未満じゃ、だれも戦いおおせる可能性はないと思う」
ハーマイオニーが言った。
「まだ勉強が足りないもの……」
「君はそうでも、俺は違うぞ」
ジョージがぶっきらぼうに言った。
「ハリー、君はやるな?立候補するんだろ?」
17歳に満たないものは立候補するべからず、というダンブルドアの強い言葉を、ハリーは一瞬思い出した。
しかし、自分が三校対抗試合に優勝する晴れがましい姿が、またしても胸いっぱいに広がった……17歳未満のだれかが、『年齢線』を破るやり方をほんとうに見つけてしまったら、ダンブルドアはどのくらい怒るだろうか……。

「どこへ行っちゃったのかな?」
このやりとりをまったく聞いていなかったロンが言った。
クラムはどうしたかと、人混みの中をうかがっていたのだ。
「ダンブルドアは、ダームストラング生がどこに泊まるか、言ってなかったよな?」
しかし、その答えはすぐにわかった。
ちょうどそのとき、ハリーたちはスリザリンのテーブルを進んで来ていたのだが、カルカロフが生徒をき立てている最中だった。

「それでは、船に戻れ」カルカロフがそう言ったところだった。
「ビクトール、気分はどうだ?十分に食べたか?厨房から卵酒でも持ってこさせようか?」
クラムがまた毛皮を着ながら、首を横に振ったのを、ハリーは見た。
「校長先生、僕、ヴァインがほしい」
ダームストラングの男子生徒が一人、ものほしそうに言った。
おまえに言ったわけではない。ポリアコフ」
カルカロフが噛みつくように言った。
やさしい父親のような雰囲気は一瞬にして消えていた。
「おまえは、また食べ物をベタベタこぼして、ローブを汚したな。しょうのないやつだ__」
カルカロフはドアのほうに向きを変え、生徒を誘導した。
ドアのところでちょうどハリー、ロン、ハーマイオニーとかち合い、三人が先をゆずった。
「ありがとう」
カルカロフは何気なくそう言って、ハリーをちらと見た。

とたんにカルカロフが凍りついた。
ハリーのほうを振り向き、我が目を疑うという表情で、カルカロフはハリーをまじまじと見た。
校長の後ろについていたダームストラング生も急に立ち止まった。
カルカロフの視線が、ゆっくりとハリーの顔を移動し、傷痕の上に釘づけになった。
ダームストラング生も不思議そうにハリーを見つめた。
そのうち何人かがハッと気づいた表情になったのを、ハリーは目の片隅で感じた。
ローブの胸が食べこぼしでいっぱいの男の子が、隣の女の子を突っつき、おおっぴらにハリーの額を指差した。

「そうだ。ハリー・ポッターだ」後ろから、声が轟いた。
カルカロフ校長がくるりと振り向いた。
マッド・アイ・ムーディが立っている。
ステッキに体を預け、「魔法の目」が瞬きもせず、ダームストラングの校長をギラギラと見据えていた。
ハリーの目の前で、カルカロフの顔からさっと血の気が引き、怒りと恐れの入り混じった凄まじい表情に変わった。
「おまえは!」
カルカロフは、亡霊でも見るような目つきでムーディを見つめた。
「わしだ」すごみのある声だった。
「ポッターに何か言うことがないなら、カルカロフ、退くがよかろう。出口を塞いでいるぞ」
たしかにそうだった。
大広間の生徒の半分がその後ろで待たされ、何が邪魔しているのだろうと、あちこちから首を突き出して前を覗いていた。

一言も言わず、カルカロフ校長は、自分の生徒を搔き集めるようにして連れ去った。
ムーディはその姿が見えなくなるまで、「魔法の目」でその背中をじっと見ていた。
傷だらけの歪んだ顔に激しい嫌悪感が浮かんでいた。


翌日は土曜日で、普段なら、遅い朝食をとる生徒が多いはずだった。
しかし、ハリー、ロン、ハーマイオニーは、この週末はいつもよりずっと早く起きた。
早起きはハリーたちだけではなかった。
三人が玄関ホールに下りていくと、20人ほどの生徒が、ウロウロしているのが見えた。
トーストをかじりながらの生徒もいて、みんなが「炎のゴブレット」を眺め回していた。
ゴブレットはホールの真ん中に、いつもは「組分け帽子」を載せる丸椅子の上に置かれいてた。
床には細い金色の線で、ゴブレットの周りに半径3メートルほどの円が描かれていた。

「もうだれか名前を入れた?」
ロンがウズウズしながら三年生の女の子に聞いた。
「ダームストラングが全員。だけど、ホグワーツからは、わたしはだれも見てないわ」
「昨日の夜のうちに、みんなが寝てしまってから入れた人もいると思うよ」ハリーが言った。
「僕だったら、そうしたと思う……。みんなに見られたりしたくないもの。ゴブレットが、名前を入れたとたんに吐き出してきたりしたらいやだろ?」

ハリーの背後でだれかが笑った。
振り返ると、フレッド、ジョージ、リー・ジョーダンが急いで階段を下りてくるところだった。
三人ともひどく興奮しているようだ。

「やったぜ」
フレッドが勝ち誇ったようにハリー、ロン、ハーマイオニーに耳打ちした。


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