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第9章 恐怖の敗北 2

「先生、何か手がかりは?」パーシーが低い声で尋ねた。
「いや。ここは大丈夫かの?」
「異常なしです。先生」
「よろしい。何もいますぐ全員を移動させることはあるまい。グリフィンドールの門番には臨時の者を見つけておいた。明日になったら皆を寮に移動させるがよい」
「それで、『太った婦人レディ』は?」
「三階のアーガイルシャーの地図の絵に隠れておる。合言葉を言わないブラックを通すのを拒んだらしいのう。それでブラックが襲った。婦人レディはまだ非常に動転しておるが、落ち着いてきたらフィルチに言って婦人レディを修復させようぞ」

ハリーの耳に大広間の戸がまた開く音が聞こえ、別の足音が聞こえた。
「校長ですか?」スネイプだ。ハリーは身じろぎもせず聞き耳を立てた。
「四階は隈なく捜しました。ヤツはおりません。さらにフィルチが地下牢を捜しましたが、そこにも何もなしです」
「天文台の塔はどうかね?トレローニー先生の部屋は?ふくろう小屋は?」
「すべて捜しましたが…」
「セブルス、ご苦労じゃった。わしもブラックがいつまでもグズグズ残っているとは思っておらなかった」
「校長、ヤツがどうやって入ったか、何か思い当たることがおありですか?」スネイプが聞いた。
ハリーは腕にもたせていた頭をわずかに持ち上げて、もう一方の耳でも聞こえるようにした。
「セブルス、いろいろとあるが、どれもこれも皆ありえないことでな」

ハリーは薄目を開けて三人が立っているあたりを盗み見た。
ダンブルドアは背中を向けていたが、パーシーの全神経を集中させた顔とスネイプの怒ったような横顔が見えた。
「校長、先日の我々の会話を覚えておいででしょうな。たしか__あー__一学期の始まったときの?」スネイプはほとんど唇を動かさずに話していた。
まるでパーシーを会話から閉め出そうとしているかのようだった。
「いかにも」ダンブルドアが答えた。その言い方に警告めいた響きがあった。
「どうも__内部の者の手引きなしには、ブラックが本校に入るのは__ほとんど不可能かと。我輩は、しかとご忠告申し上げました。校長が任命を__」
「この城の内部の者がブラックの手引きをしたとは、わしは考えておらん」ダンブルドアの言い方には、この件は打ち切りと、スネイプに二の句を継がせないきっぱりとした調子があった。
「わしは吸魂鬼ディメンターたちに会いにいかなければならん。捜索が終わったら知らせると言ってあるのでな」とダンブルドアが言った。
「先生、吸魂鬼ディメンターは手伝おうと言わなかったのですか?」パーシーが聞いた。
「おお、言ったとも」ダンブルドアの声は冷ややかだった。
「わしが校長職にあるかぎり、吸魂鬼ディメンターにはこの城の敷居は跨がせん」
パーシーは少し恥じ入った様子だった。
ダンブルドアは足早にそっと大広間を出ていった。
スネイプはその場に佇み、憤懣ふんまんやるかたない表情で、校長を見送っていたが、やがて自分も部屋を出ていった。

ハリーが横目でロンとハーマイオニーを見ると、二人とも目を開けていた。
二人の目に天井の星が映っていた。
「いったいなんのことだろう」ロンが呟いた。

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