第22章 再びふくろう便 7
「シリウスが、昨夜、あの者たちがどんなふうにして『動物もどき』になったか、すべて話してくれたよ」ダンブルドアは微笑んだ。
「まことに天晴れじゃ__わしにも内緒にしていたとは、ことに上出来じゃ。そこでわしは、君の創り出した守護霊が、クィディッチのレイブンクロー戦でミスター・マルフォイを攻撃したときのことを思い出しての。あの守護霊は非常に独特の形をしておったのう。
そうじゃよ、ハリー、君は昨夜、父君に会ったのじゃ……君の中に、父君を見つけたのじゃよ」
ダンブルドアは部屋を出ていった。
どう考えてよいのか混乱しているハリーを一人あとに残して。
シリウス、バックビーク、ペティグリューが姿を消した夜に、何が起こったのか、ハリー、ロン、ハーマイオニー、ダンブルドア校長以外には、ホグワーツの中で真相を知るものは誰もいなかった。
学期末が近づき、ハリーはあれこれとたくさんの憶測を耳にしたが、どれ一つとして真相に迫るものはなかった。
マルフォイはバックビークのことで怒り狂っていた。ハグリッドがなんらかの方法で、ヒッポグリフをこっそり安全なところに運んだに違いないと確信し、あんな森番に自分や父親が出し抜かれたことが癪の種らしかった。
一方パーシー・ウィーズリーはシリウスの逃亡について雄弁だった。
「もし僕が魔法省に入省したら、『魔法警察庁』についての提案がたくさんある!」
たった一人の聞き手__ガールフレンドのペネロピーに、そうぶち上げていた。
天気は申し分なし、学校の雰囲気も最高、その上、シリウスを自由の身にするのに、自分たちがどんなに不可能に近いことをやり遂げたかもよくわかってはいたが、ハリーはこれまでになく落ち込んだムードで学期末を迎えようとしていた。
ルーピンがいなくなってがっかりしたのはハリーだけではなかった。
「闇の魔術に対する防衛術」でハリーと同じクラスだった全生徒が、ルーピンが辞めたことで惨めな気持になっていた。
「来年はいったい誰が来るんだろ?」シェーマス・フィネガンも落ち込んでいた。
「吸血鬼じゃないかな」ディーン・トーマスは、その方がありがたいと言わんばかりだ。
ルーピン先生がいなくなったことだけが、ハリーの心を重くしていたわけではない。ともすると、ついトレローニー先生の予言を考えてしまうのだった。
いったいペティグリューはいまごろどこにいるのだろう。ヴォルデモートのそばで、もう安全な隠れ家を見つけてしまったのだろうか。そんな思いが頭を離れない。
しかし、一番の落ち込みの原因は、ダーズリー一家のもとに帰るという思いだった。ほんの小半時、あの輝かしい三十分の間だけ、ハリーはシリウスと暮らすのだと信じていた……両親の親友と一緒に……ほんとうの父親が戻ってくることのつぎにすばらしいことだ。
シリウスからの便りはなく、便りのないのは無事な証拠だし、うまく隠れているからなのだとは思ったが、もしかしたら持てたかもしれない家庭のことを考えると、そしていまやそれが不可能になったことを思うと、ハリーは惨めな気持になるのだった。
学期の最後の日に、試験の結果が発表された。ハリー、ロン、ハーマイオニーは全科目合格だった。
魔法薬学もパスしたのにはハリーも驚いた。ダンブルドアが中に入って、スネイプが故意にハリーを落第させようとしたのを止めたのではないかと、ハリーはピンときた。
この一週間のスネイプのハリーに対する態度は、鬼気迫るものがあった。ハリーに対する嫌悪感がこれまでより増すことなど不可能だと思っていたのに、大ありだった。
ハリーを見るたびに、スネイプの薄い唇の端の筋肉がヒクヒク不快な痙攣をおこし、まるでハリーの首を締めたくて指がムズムズしているかのように、しょっちゅう指を曲げ伸ばししていた。
パーシーはN・E・W・Tテストで一番の成績だったし、フレッドとジョージはそれぞれ、O・W・Lテストでかなりの科目をスレスレでパスした。
一方グリフィンドール寮は、おもにクィディッチ優勝戦の目覚ましい成績のおかげで、三年連続で寮杯を獲得した。
そんなこんなで、学期末の宴会は、グリフィンドール色の真紅と金色の飾りに彩られ、グリフィンドールのテーブルはみんながお祝い気分で、一番にぎやかだった。
ハリーでさえ、次の日にダーズリーのところへ帰省することも忘れ、みんなと一緒に、大いに食べ、飲み、語り、笑いあった。
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