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第14章 スネイプの恨み 8

「セブルス、ほんとうにそう思うのかい?わたしが見るところ、無理に読もうとする者を侮辱するだけの羊皮紙に過ぎないように見えるが。子供だましだが、決して危険じゃないだろう?ハリーは悪戯いたずら専門店で手に入れたのだと思うよ__」
「そうかね?」スネイプは怒りで顎がこわばっていた。「悪戯専門店でこんなものをポッターに売ると、そう言うのかね?むしろ、直接に製作者から入手した可能性が高いとは思わんのか?」
ハリーにはスネイプの言っていることがわからなかった。
ルーピンもわかっていないように見えた。
「ミスター・ワームテールとか、この連中の誰かからという意味か?ハリー、この中に誰か知っている人はいるかい?」ルーピンが聞いた。
「いいえ」ハリーは急いで答えた。
「セブルス、聞いただろう?」ルーピンはスネイプの方を見た。「わたしにはゾンコの商品のように見えるがね__」
合図を待っていたかのように、ロンが研究室に息せき切って飛び込んできた。
スネイプの机の真ん前で止まり、胸を押さえながら、途切れ途切れにしゃべった。
「それ__僕が__ハリーに__あげたんです」ロンはむせ込んだ。「ゾンコで__ずいぶん前に__それを__買いました……」
「ほら!」ルーピンは手をポンと叩き、機嫌よく周りを見回した。
「どうやらこれではっきりした!セブルス、これはわたしが引き取ろう。いいね?」
ルーピンは地図を丸めてローブの中にしまい込んだ。
「ハリー、ロン、おいで。吸血鬼バンパイヤのレポートについて話があるんだ。セブルス、失礼するよ」
研究室から出るとき、ハリーはとてもスネイプを見る気にはなれなかった。
ハリー、ロン、ルーピンは黙々と玄関ホールまで歩いて、そこで初めて口をきいた。ハリーがルーピンを見た。

「先生、僕__」
「事情を聞こうとは思わない」
ルーピンは短く答えた。それからガランとした玄関ホールを見回し、声をひそめていった。
「何年も前にフィルチさんがこの地図を没収したことを、わたしはたまたま知っているんだ。そう、わたしはこれが地図だということを知っている」
ハリーとロンの驚いたような顔を前にルーピンは話した。
「これがどうやって君のものになったのか、わたしは知りたくはない。ただ、君がこれを提出しなかったのには、わたしは大いに驚いている。先日も、生徒の一人がこの城の内部情報を不用意に放っておいたことで、あんなことが起こったばかりじゃないか。だから、ハリー、これは返してあげるわけにはいかないよ」
ハリーはそれを覚悟していた。しかも、聞きたいことがたくさんあって、講義をするどころではなかった。
「スネイプは、どうして僕がこれを製作者から手に入れたと思ったのでしょう?」
「それは……」ルーピンは口ごもった。
「それは、この地図の製作者だったら、君を学校の外へ誘い出したいと思ったかもしれないからだよ。連中にとって、それがとてもおもしろいことだろうからね」
「先生は、この人たちをご存じなんですか?」ハリーは感心して尋ねた。
「会ったことがある」ぶっきらぼうな答えだった。
ルーピンはこれまでに見せたことがないような真剣な眼差しでハリーを見た。
「ハリー、このつぎはかばってあげられないよ。わたしがいくら説得しても、君が納得して、シリウス・ブラックのことを深刻に受け止めるようにはならないだろう。しかし、吸魂鬼ディメンターが近づいたとき君が聞いた声こそ、君にもっと強い影響を与えているはずだと思ったんだがね。
君のご両親は、君を生かすために自らの命を捧げたんだよ、ハリー。
それに報いるのに、これではあまりにお粗末じゃないか__たかが魔法のおもちゃ一袋のために、ご両親の犠牲の賜物たまものを危険に晒すなんて」

ルーピンが立ち去った。
ハリーは一層みじめな気持になった。スネイプの部屋にいたときでさえ、こんな惨めな気持にはならなかった。
ハリーとロンはゆっくりと大理石の階段を上った。
隻眼の魔女像のところまで来たとき、ハリーは「透明マント」のことを思い出した__まだこの下にある。
しかし、取りに下りる気にはなれなかった。

「僕が悪いんだ」ロンが突然口をきいた。
「僕が君に行けって勧めたんだ。ルーピン先生の言う通りだ。バカだったよ。僕たち、こんなこと、すべきじゃなかった__」
ロンが口を閉じた。二人は警護のトロールが行き来している廊下に辿り着いた。
すると、ハーマイオニーがこちらに向かって歩いてきた。ハーマイオニーを一目見たとたん、もう事件のことは聞いたに違いないと、ハリーは確信した。
ハリーは心臓がドサッと落ち込むような気がした__マクゴナガル先生にもう言いつけたのだろうか?

「さぞご満悦だろうな?」
ハーマイオニーが二人の真ん前で足を止めたとき、ロンがぶっきらぼうに言った。
「それとも告げ口しに行ってきたところかい?」
「違うわ」ハーマイオニーは両手で手紙を握り締め、唇をワナワナ震わせていた。
「あなたたちも知っておくべきだと思って……ハグリッドが敗訴したの。バックビークは処刑されるわ」

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