第22章 再びふくろう便 8
翌朝、ホグワーツ特急がホームから出発した。ハーマイオニーがハリーとロンに驚くべきニュースを打ち明けた。
「私、今朝、朝食の前にマクゴナガル先生にお目にかかったの。『マグル学』をやめることにしたわ」
「だって、君、百点満点の試験に三百二十点でパスしたじゃないか!」ロンが言った。
「そうよ」ハーマイオニーがため息をついた。
「でも、また来年、今年みたいになるのは耐えられない。あの『逆転時計』、あれ、私、気が狂いそうだった。返したわ。『マグル学』と『占い学』を落とせば、また普通の時間割りになるの」
「君が僕たちにもそのことを言わなかったなんて、いまだに信じられないよ」ロンが膨れっ面をした。「僕たち、君の友達じゃないか」
「誰にも言わないって約束したの」
ハーマイオニーがきっぱり言った。
それからハリーの方を見た。ハリーは、ホグワーツが山の陰に入って見えなくなるのを見つめていた。このつぎに目にするまで、まる二ヵ月もある……。
「ねえ、ハリー、元気だして!」ハーマイオニーもさびしそうだった。
「僕、大丈夫だよ」ハリーが急いで答えた。「休暇のことを考えてただけさ」
「ウン、僕もそのことを考えてた」ロンが言った。「ハリー、絶対に僕たちのところに来て、泊まってよ。僕、パパとママに話して準備して、それから話電する。話電の使い方がもうわかったから__」
「ロン、電話よ」ハーマイオニーが言った。
「まったく、あなたこそ来年『マグル学』を取るべきだわ……」
ロンは知らんぷりだった。
「今年の夏はクィディッチのワールド・カップだぜ!どうだい、ハリー?泊まりにおいでよ。一緒に見にいこう!パパ、たいてい役所から切符が手に入るんだ」
この提案は、効果てきめんで、ハリーは大いに元気づいた。
「ウン……ダーズリー家じゃ、喜んで僕を追い出すよ……とくにマージおばさんのことがあったあとだし……」
ずいぶんと気持が明るくなり、ハリーはロン、ハーマイオニーと何回か「爆発ゲーム」に興じた。
やがて、いつもの魔女がワゴンを引いてきたので、ハリーは盛り沢山のランチを買い込んだ。ただし、いっさいチョコレート抜きだった。
午後も遅い時間になって、ハリーにとってほんとうに幸せな出来事が起こった……。
「ハリー」ハリーの肩越しに何かを見つめながら、ハーマイオニーが突然言った。
「そっちの窓の外にいるもの、何かしら?」
ハリーは振り向いて窓の外を見た。
何か小さくて灰色のものが窓ガラスのむこうでピョコピョコ見え隠れしている。立ち上がってよく見ると、それはちっちゃなフクロウだった。
小さい体には大きすぎる手紙を運んでいる。ほんとうにチビのフクロウで、走る汽車の気流に煽られ、あっちへフラフラ、こっちへフラフラ、でんぐり返ってばかりいる。
ハリーは急いで窓を開け、腕を伸ばしてそれをつかまえた。フワフワのスニッチのような感触だった。そーっと中に入れてやった。
フクロウはハリーの席に手紙を落とすと、コンパートメントの中をブンブン飛び回りはしめた。任務を果たして、誇らしく、うれしくてたまらない様子だ。
ヘドウィグは気に入らない様子で、嘴をカチカチ鳴らし、威厳を示した。クルックシャンクスは椅子に座り直し、大きな黄色い目でフクロウを追っていた。それに気づいたロンが、フクロウをサッとつかんで、危険な目線から遠ざけた。
ハリーは手紙を取り上げた。ハリー宛だった。
乱暴に封を破り、手紙を呼んだハリーが、叫んだ。
「シリウスからだ!」
「えーっ!」ロンもハーマイオニーも興奮した。「読んで!」
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