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第21章 ハーマイオニーの秘密 12

「ルーピンがいよいよだわ」ハーマイオニーが囁いた。「変身している__」
「ハーマイオニー!」ハリーが突然呼びかけた。「行かないと!」
「ダメよ。何度も言っているでしょ__」
「違う。割り込むんじゃない。ルーピンがまもなく森に駆け込んでくる。僕たちのいるところに!」
ハーマイオニーが息を呑んだ。
「早く!」大急ぎでバックビークの綱を解きながら、ハーマイオニーが呻いた。
「早く!どこへ行ったらいいの?どこに隠れるの?吸魂鬼ディメンターがもうすぐやってくるわ__」
「ハグリッドの小屋に戻ろう!いまは空っぽだ__行こう!」
二人は転がるように走り、バックビークがそのあとを悠々と走った。
背後から狼人間の遠吠えが聞こえてきた……。

小屋が見えた。ハリーは戸の前で急停止し、グイッと戸を開けた。
電光石火、ハーマイオニーとバックビークがハリーの前を駆け抜けて入った。ハリーがそのあとに飛び込み、戸の錠前を下ろした。
ボアハウンドのファングが吼えたてた。
「しーっ、ファング。私たちよ!」
ハーマイオニーが急いで近寄って耳の後ろをカリカリ撫で、静かにさせた。
「危なかったわ!」ハーマイオニーが言った。
「ああ……」

ハリーは窓から外を見ていた。ここからだと何が起こっているのか見えにくかった。
バックビークはまたハグリッドの小屋に戻れてとてもうれしそうだった。暖炉の前に寝そべり、満足げに翼を畳み、一眠ひとねむりしそうな気配だった。
「ねえ、僕、また外に出た方がいいと思うんだ」ハリーが考えながら言った。「何が起こっているのか、見えないし__いつ行動すべきなのか、これじゃわからない__」
ハーマイオニーが顔を上げた。疑っているような表情だ。
「僕、割り込むつもりはないよ」ハリーが急いで言った。「でも、何が起こっているか見えないと、シリウスをいつ救い出したらいいのかわからないだろ?」
「ええ……それなら、いいわ……私、ここでバックビークと待ってる……でも、ハリー、気をつけて__狼人間がいるし__吸魂鬼ディメンターも__」

ハリーは再び外に出て、小屋に沿って回り込んだ。遠くでキャンキャンという鳴き声が聞こえた。
吸魂鬼ディメンターがシリウスに迫っているということだ……自分とハーマイオニーがもうすぐシリウスのところに駆けつけるはずだ……。

ハリーは湖の方をじっと見た。胸の中で、心臓がドラムの早打ちのように鳴っている。あの守護霊パトローナスを送り出した誰かが、もうすぐ現れる……。

ほんの一瞬、ハリーは決心がつかず、ハグリッドの小屋の戸の前で立ち止まった。
姿を見られてはならない。でも、見られたいのではない。自分が見る方に回りたいのだ……どうしても知りたい……。

でも、吸魂鬼ディメンターがいる。暗闇の中から湧き出るように、吸魂鬼ディメンターが四方八方から出てくる。湖の周りを滑るように……しかしハリーが立っているところからは遠ざかるように、湖のむこう岸へと動いている……それならハリーは吸魂鬼ディメンターに近づかなくてもすむはずだ……。

ハリーは走り出した。父親のことしか頭になかった……もしあれが父さんだった……知りたい、確かめなければ……。

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