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第11章 ホグワーツ特急に乗って 3

ハリーはもう9と4分の3番線への行き方に慣れてきていた。9番線と10番線の間にある、一見堅そうに見える柵を、まっすぐ突き抜けて歩くだけの簡単なことだった。
唯一厄介なのは、マグルに気づかれないように、何気なくやり遂げなければならないことだった。今日は何組かに分かれて行くことにした。
ハリー、ロン、ハーマイオニー組(なにしろピッグウィジョンとクルックシャンクがお供なので一番目立つグループ)が最初だ。
三人は何気なくおしゃべりをしているふりをして柵に寄りかかり、スルリと横向きで入り込んだ……とたんに9と4分の3番線ホームが目の前に現われた。

くれないに輝く蒸気機関車ホグワーツ特急は、もう入線していた。
吐き出す白い煙のむこう側に、ホグワーツの学生や親たちが大勢、黒いゴーストのような影になって見えた。ピッグウィジョンは、かすみのかなたから聞こえるホーホーというたくさんのふくろうの鳴き声につられて、ますますうるさく鳴いた。
ハリー、ロン、ハーマイオニーは席探しを始めた。まもなく列車の中ほどに空いたコンパートメントを見つけ、荷物を入れた。
それからホームにもう一度飛び降り、ウィーズリーおばさん、ビル、チャーリーにお別れを言った。

「僕、みんなが考えてるより早く、また会えるかもしれないよ」
チャーリーがジニーを抱きしめて、さよならを言いながらニッコリした。
「どうして?」フレッドが突っ込んだ。
「いまにわかるよ」チャーリーが言った。
「僕がそう言ったってこと、パーシーには内緒だぜ……なにしろ、『魔法省が解禁するまでは機密情報』なんだから」
「ああ、僕もなんだか、今年はホグワーツに戻りたい気分だ」
ビルはポケットに両手を突っ込み、羨ましそうな目で汽車を見た。
どうしてさ?」ジョージが知りたくてたまらなそうだ。
「今年はおもしろくなるぞ」ビルが目をキラキラさせた。
「いっそ休暇でも取って、僕もちょっと見学に行くか……」
「だから何をなんだよ?」ロンが聞いた。
しかし、そのとき汽笛が鳴り、ウィーズリーおばさんがみんなを汽車のデッキへと追いたてた。

「ウィーズリーおばさん、泊めてくださってありがとうございました」
みんなで汽車に乗り込み、ドアを閉め、窓から身を乗り出しながら、ハーマイオニーが言った。
「ほんとに、おばさん、いろいろありがとうございました」ハリーも言った。
「あら、こちらこそ、楽しかったわ」ウィーズリーおばさんが言った。
「クリスマスにもお招きしたいけど、でも……ま、きっとみんなホグワーツに残りたいと思うでしょう。なにしろ……いろいろあるから」
「ママ!」ロンがイライラした。
「三人とも知ってて、僕たちが知らないことって、なんなの?」
「今晩わかるわ。たぶん」おばさんが微笑んだ。
「とってもおもしろくなるわ__それに、規則が変わって、ほんとうによかったわ__」
「何の規則?」
ハリー、ロン、フレッド、ジョージがいっせいに聞いた。
「ダンブルドア先生がきっと話してくださいます……さあ、お行儀よくするのよ。ね?わかったの?フレッド?ジョージ、あなたもよ」
ピストンが大きくシューッという音を立て、汽車が動きはじめた。

「ホグワーツで何が起こるのか、教えてよ!」
フレッドが窓から身を乗り出して叫んだ。おばさん、ビル、チャーリーが速度を上げはじめた汽車からどんどん遠ざかっていく。
「なんの規則が変わるのぉ?」
ウィーズリーおばさんはただ微笑んで手を振った。列車がカーブを曲がる前に、おばさんも、ビルもチャーリーも『姿くらまし』してしまった。

ハリー、ロン、ハーマイオニーはコンパートメントに戻った。窓を打つ豪雨で、外はほとんど見えない。
ロンはトランクを開け、栗色のドレスローブを引っ張り出し、ピッグウィジョンの籠にバサリとかけて、ホーホー声を消した。

「バグマンがホグワーツで何が起こるのか話したがってた」
ロンはハリーの隣に腰かけ、不満そうに話しかけた。
「ワールドカップのときにさ、覚えてる?でも母親でさえ言わないことって、いったいなんだと__」
「しっ!」
ハーマイオニーが突然唇に指をあて、隣のコンパートメントを指差した。
ハリーとロンが耳を澄ますと、聞き覚えのある気取った声が開け放したドアを通して流れてきた。

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