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第20章 第一の課題 3

これを恐れていた__しかし、ハリーはセドリックにも言わなかったし、ムーディにも決して言わないつもりだ。
ハグリッドが規則を破ったなどと言うものか。

「大丈夫だ」
ムーディは腰を下ろして、木製の義足を伸ばし、呻いた。
「カンニングは三校対抗試合の伝統で、昔からあった」
「僕、カンニングしてません」
ハリーはきっぱり言った。
「ただ__偶然知ってしまったんです」
ムーディはニヤリとした。

「お若いの、わしは責めているわけではない。はじめからダンブルドアに言ってある。ダンブルドアはあくまでも高潔にしてればよいが、あのカルカロフやマクシームは、決してそういうわけにはいくまいとな。
連中は、自分たちが知るかぎりのすべてを、代表選手に漏らすだろう。連中は勝ちたい。ダンブルドアを負かしたい。ダンブルドアも普通のヒトだと証明してみせたいのだ」

ムーディはまた乾いた笑い声をあげ、「魔法の目」がグルグル回った。
あまりに速く回るので、ハリーは見ていて気分が悪くなってきた。

「それで……どうやってドラゴンを出し抜くか、何か考えはあるのか?」
ムーディが聞いた。
「いえ」
ハリーが答えた。
「フム。わしは教えんぞ」
ムーディがぶっきらぼうに言った。
「わしは、贔屓はせん。わしはな。おまえにいくつか、一般的なよいアドバイスをするだけだ。その第一は__自分の強みを生かす試合をしろ

「僕、なんにも強みなんてない」
ハリーは思わず口走った。
「なんと」
ムーディが唸った。
「おまえには強みがある。わしがあると言ったらある。考えろ。おまえが得意なのはなんだ?」
ハリーは気持を集中させようとした。
僕の得意なものはなんだっけ?
ああ、簡単じゃないか、まったく__。

「クィディッチ」
ハリーはノロノロと答えた。
「それがどんな役に立つって__」
「そのとおり」
ムーディはハリーをじっと見据えた。
「魔法の目」がほとんど動かなかった。

「おまえは相当の飛び手だと、そう聞いた」
「うーん、でも……」
ハリーも見つめ返した。
「箒は許可されていません。杖しか持てないし__」
「二番目の一般的なアドバイスは」
ムーディはハリーの言葉を遮り、大声で言った。
「効果的で簡単な呪文を使い、自分に必要なものを手に入れる

ハリーはキョトンとしてムーディを見た。
自分に必要なものってなんだろう?
「さあ、さあ、いい子だ……」
ムーディが囁いた。
「二つを結びつけろ……そんなに難しいことではない……」

ついに閃いた。
ハリーが得意なのは飛ぶことだ。
ドラゴンを空中で出し抜く必要がある。
それには、ファイアボルトが必要だ。
そして、そのファイアボルトのために必要なのは__。

「ハーマイオニー」

10分後、第三温室に到着したハリーは、スプラウト先生のそばを通り過ぎるときに急いで謝り、ハーマイオニーに小声で呼びかけた。
「ハーマイオニー__助けてほしいんだ」
「ハリーったら、私、これまでだってそうしてきたでしょう?」
ハーマイオニーも小声で答えた。
「ブルブル震える木」の剪定をしながら、灌木かんぼくの上から顔を覗かせたハーマイオニーは、心配そうに目を大きく見開いていた。
「ハーマイオニー、『呼び寄せ呪文』を明日の午後までにちゃんと覚える必要があるんだ」

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そして、二人は練習を始めた。
昼食を抜いて、空いている教室に行き、ハリーは全力を振り絞り、いろいろなものを教室のむこうから自分のほうへと飛ばせてみた。
まだうまくいかなかった。
本や羽根ペンが、部屋を飛ぶ途中で腰砕けになり、石が落ちるように床に落ちた。
「集中して、ハリー、集中して……」
「これでも集中してるんだ」
ハリーは腹が立った。
「なぜだか、頭の中に恐ろしい大ドラゴンがポンポン飛び出してくるんだ……よーし、もう一回……」

ハリーは「占い学」をサボって練習を続けたかったが、ハーマイオニーは「数占い」の授業を欠席することをきっぱり断った。
ハーマイオニーなしで続けても意味がない。
そこでハリーは、一時間以上、トレローニー先生の授業に耐えなければならなかった。
授業の半分は火星と土星のいま現在の位置関係が持つ意味の説明に費やされた。
七月生まれの者が、突然痛々しい死を迎える危険性がある位置だという。
「ああ、そりゃいいや」
とうとう癇癪かんしゃくを抑えきれなくなって、ハリーが大声で言った。
「長引かないほうがいいや。僕、苦しみたくないから」
ロンが一瞬噴き出しそうな顔をした。
ここ何日振りかで、ロンはたしかにハリーの目を見た。
しかし、ロンに対する怒りがまだ収まらないハリーは、それに反応する気にならなかった。
それから授業が終わるまで、ハリーはテーブルの下で杖を使い、小さなものを呼び寄せる練習をした。
ハエを一匹、自分の手の中に飛び込ませることに成功したが、自分の「呼び寄せ呪文」の威力なのかどうか自信がなかった__もしかしたら、ハエがバカだっただけなのかもしれない。

「占い学」のあと、ハリーは無理やり夕食を少しだけ飲み込み、先生たちに会わないように「透明マント」を使って、ハーマイオニーと一緒に空いた教室に戻った。
練習は真夜中過ぎまで続いた。
ピーブズが現れなかったら、もっと長くやれたかもしれない。
ピーブズは、ハリーが物を投げつけてほしいのだと思ったというふりをして、部屋のむこうからハリーに椅子を投げつけはじめた。
物音でフィルチがやってこないうちに、二人は急いで教室を出て、グリフィンドールの談話室に戻ってきた。
ありがたいことに、そこにはもうだれもいなかった。

午前二時、ハリーは山のようにいろいろなものに囲まれ、暖炉のそばに立っていた__本、羽根ペン、逆さまになった椅子が数脚、古いゴブストーン・ゲーム一式、それにネビルのヒキガエル「トレバー」もいた。
最後の一時間で、ハリーはやっと「呼び寄せ呪文」のコツをつかんだ。

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