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第17章 猫、ネズミ、犬 7

なんてことなの!」ハーマイオニーが叫んだ。
ルーピンはブラックを離し、ハーマイオニーの方を見た。
ハーマイオニーは床から腰を上げ、目をランランと光らせ、ルーピンを指差した。
「先生は__先生は__」
「ハーマイオニー__」
「__その人とグルなんだわ!」
「ハーマイオニー、落ち着きなさい__」
「私、誰にも言わなかったのに!」ハーマイオニーが叫んだ。
「先生のために、私、隠していたのに__」
「ハーマイオニー、話を聞いてくれ。頼むから!」ルーピンも叫んだ。「説明するから__」

ハリーはまた震え出したのを感じた。恐怖からではなく、新たな怒りからだった。
「僕は先生を信じてた」抑えきれずに、声を震わせ、ハリーはルーピンに向かって叫んだ。
「それなのに、先生はずっとブラックの友達だったんだ!」
「それは違う」ルーピンが言った。「この十二年間、わたしはシリウスの友ではなかった。しかし、いまはそうだ……説明させてくれ……」
「だめよ!」ハーマイオニーが叫んだ。「ハリー、だまされないで。この人はブラックが城に入る手引きをしてたのよ。この人もあなたの死を願ってるんだわ__この人、狼人間なのよ!

痛いような沈黙が流れた。いまやすべての目がルーピンに集まっていた。
ルーピンは青ざめてはいたが、驚くほど落ち着いていた。
「いつもの君らしくないね、ハーマイオニー。残念ながら、三問中一問しか合ってない。わたしはシリウスが城に入る手引きはしていないし、もちろんハリーの死を願ってなんかいない……」
ルーピンの顔に奇妙な震えが走った。
「しかし、わたしが狼人間であることは否定しない」
ロンは雄々おおしくも立とうとしたが、痛みに小さく悲鳴をあげてまた座り込んだ。ルーピンは心配そうにロンの方に行きかけたが、ロンが喘ぎながら言った。
僕に近寄るな、狼男め!
ルーピンはハタと足を止めた。それから、グッとこらえて立ち直り、ハーマイオニーに向かって話しかけた。

「いつごろから気づいていたのかね?」
「ずーっと前から」ハーマイオニーが囁くように言った。「スネイプ先生のレポートを書いたときから……」
「スネイプ先生がお喜びだろう」ルーピンは落ち着いていた。
「スネイプ先生は、わたしの症状が何を意味するのか、誰か気づいてほしいと思って、あの宿題を出したんだ。月の満ち欠け図を見て、わたしの病気が満月と一致することに気づいたんだね?それとも『まね妖怪ボガート』がわたしの前で月に変身するのを見て気づいたのかね?」
「両方よ」ハーマイオニーが小さな声で言った。
ルーピンは無理に笑って見せた。
「ハーマイオニー、君は、わたしがいままでに出会った君と同年齢の魔女の、誰よりも賢いね」

「違うわ」ハーマイオニーが小声で言った。
「私がもう少し賢かったら、みんなにあなたのことを話してたわ!」
「しかし、もう、みんな知ってることだ」ルーピンが言った。「少なくとも先生方は知っている」
「ダンブルドアは、狼人間と知っていて雇ったっていうのか?」ロンが息を呑んだ。「正気かよ?」
「先生の中にもそういう意見があった」ルーピンが続けた。「ダンブルドアは、わたしが信用できると、何人かの先生を説得するのにずいぶんご苦労なさった」
そして、ダンブルドアはまちがってたんだ!」ハリーが叫んだ。
先生はずっとこいつの手引きをしてたんだ!
ハリーはブラックを指差していた。

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