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第十七章 二つの顔をもつ男 7

「でも、どうしてクィレルは僕にさわれなかったんですか」
「君の母上は、君を守るために死んだ。ヴォルデモートに理解できないことがあるとすれば、それは愛じゃ。君の母上の愛情が、その愛の印を君に残していくほど強いものだったことに、彼は気づかなかった。傷痕のことではない。目に見える印ではない…それほどまでに深く愛を注いだということが、たとえ愛したその人がいなくなっても、永久に愛されたものを守る力になるのじゃ。それが君の肌に残っておる。クィレルのように憎しみ、欲望、野望に満ちた者、ヴォルデモートと魂を分け合うような者は、それがために君に触れることができなかったのじゃ。かくもすばらしいものによって刻印された君のような者に触れるのは、苦痛でしかなかったのじゃ」

ダンブルドアはその時、窓辺に止まった小鳥になぜかとても興味を持って、ハリーから目をそらした…そのすきにハリーはこっそりシーツで涙をぬぐうことができた。そしてやっと声が出るようになったとき、ハリーはまた質問した。
「あの『透明マント』は…誰が僕に送ってくれたか、ごぞんじですか?」
「ああ…君の父上が、たまたま、わしに預けていかれた。君の気に入るじゃろうと思うてな」
ダンブルドアの目がいたずらっぽくキラキラッとした。
「便利なものじゃ。君の父上がホグワーツに在学中は、もっぱらこれを使って台所に忍び込み、食べ物を失敬したものじゃ」
「そのほかにもお聞きしたいことが…」
「どんどん聞くがよい」
「クィレルが言うには、スネイプが」
「ハリー、スネイプ先生じゃろう」
「はい。その人です…クィレルが言ったんですが、彼が僕のことを憎むのは、僕の父を憎んでいたからだと。それは本当ですか?」
「そうじゃな、お互いに嫌っておった。君とミスター・マルフォイのようなものじゃ。そして、君の父上が行ったあることをスネイプはけっして許せなかった」
「なんですか?」
「スネイプの命をすくったんじゃよ」
「なんですって?」
「さよう…」ダンブルドアは遠くを見るような目で話した。
「人の心とはおかしなものよ。のう?スネイプ先生は君の父上に借りがあるのが、がまんならなかった…この一年間、スネイプは君を守るために全力を尽くした。これで父上と五分五分になると考えたのじゃ。そうすれば、心安らかに再び君の父上の思い出を憎むことができる、とな…」
ハリーは賢明に理解しようとしたが、また頭がずきずきしてきたので考えるのをやめた。

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