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第5章 ウィーズリー・ウィザード・ウィーズ 2

「まあ、ハリー、こんにちは」
ハリーを見つけるとおばさんは笑いかけた。それからまた素早くその目を夫に向けた。
「アーサー、何事なの?聞かせて」
ウィーズリーおじさんはためらった。ジョージとフレッドのことでどんなに怒っても、実は何が起こったかをウィーズリーおばさんに話すつもりはないのだと、ハリーにはわかった。

ウィーズリーおじさんがオロオロとおばさんを見つめ、沈黙が漂った。
そのときキッチンの入口に、おばさんの陰から女の子が二人現れた。
一人はたっぷりした栗色の髪、前歯がちょっと大きい女の子、ハリーとロンの仲良しのハーマイオニー・グレンジャーだ。
もう一人は、小柄な赤毛で、ロンの妹、ジニーだ。二人ともハリーに笑いかけ、ハリーもニッコリ笑い返した。するとジニーが真っ赤になった__ハリーがはじめて「隠れ穴」に来たとき以来、ジニーはハリーにお熱だった。

「アーサー、いったいなんなの?言ってちょうだい」
ウィーズリーおばさんの声が、今度は険しくなっていた。
「モリー、大したことじゃない」おじさんがモゴモゴ言った。
「フレッドとジョージが、ちょっと__だが、もう言って聞かせた__」
「今度は何をしでかしたの?まさか、ウィーズリー・ウィザード・ウィーズW・W・Wじゃないでしょうね__
ウィーズリーおばさんが詰めよった。
「ロン、ハリーを寝室に案内したらどう?」
ハーマイオニーが入口から声をかけた。
「ハリーはもう知ってるよ」ロンが答えた。「僕の部屋だし、前のときもそこで__」
「みんなで行きましょう」
ハーマイオニーが意味ありげな言い方をした。
「あっ」ロンもピンときた。「オッケー」
「ウン、俺たちも行くよ」ジョージが言ったが__。
あなたたちはここにいなさい」おばさんが凄んだ。

ハリーとロンはそろそろとキッチンから抜け出た。ハーマイオニー、ジニーと一緒に、二人は狭い廊下を渡り、グラグラする階段を上の階へ、ジグザグ上っていった。
ウィーズリー・ウィザード・ウィーズW・W・Wって、なんなの?」
階段を上りながらハリーが聞いた。
ロンもジニーも笑いだしたが、ハーマイオニーは笑わなかった。
「ママがね、フレッドとジョージの部屋を掃除してたら、注文書が束になって出てきたんだ」
ロンが声をひそめた。
「二人が発明したものの価格表で、ながーいリストさ。悪戯おもちゃの。『だまし杖』とか、『ひっかけ菓子』だとか、いっぱいだ。すごいよ。僕、あの二人があんなにいろいろ発明してたなんて知らなかった……」
「昔っからずっと、二人の部屋から爆発音が聞こえてたけど、何か作ってるなんて考えもしなかったわ。あの二人はうるさい音が好きなだけだと思ってたの」とジニーが言った。
「ただ、作ったものがほとんど__っていうか、全部だな__ちょっと危険なんだ」
ロンが続けた。
「それに、ね、あの二人、ホグワーツでもそれを売って稼ごうと計画してたんだ。ママがカンカンになってさ。もう何も作っちゃいけません、って二人に言い渡して、注文書を全部焼き捨てちゃった……ママったら、その前からあの二人にさんざん腹を立ててたんだ。二人が『O・W・Lふくろう試験』でママが期待してたような点を取らなかったから」
O・W・Lは、「普通魔法使いレベル」試験の略だ。ホグワーツ校の生徒は十五歳でこの試験を受ける。
「それから大論争があったの」ジニーが続けた。
「ママは、二人にパパみたいに『魔法省』に入ってほしかったの。出も二人はどうしても『悪戯専門店いたずらせんもんてん』を開きたいって、ママに言ったの」

ちょうどそのとき、二つ目の踊り場のドアが開き、角淵メガネをかけて、迷惑千万という顔がひょこっと飛び出した。


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