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第21章 屋敷しもべ妖精解放戦線 1

ハリー、ロン、ハーマイオニーはその晩、ピッグウィジョンを探しにふくろう小屋に行った。
シリウスに手紙を送り、ハリーが、無傷で対決したドラゴンを出し抜いたことを知らせるためだった。

道々ハリーは、久しぶりで話すロンに、シリウスがカルカロフについて言ったことを一部始終話して聞かせた。
カルカロフが「死喰い人」だったと聞かされて、最初はショックを受けたロンも、ふくろう小屋に着いたときには、はじめからそれを疑ってかかるべきだったと言うようになっていた。

「辻褄が合うじゃないか?」
ロンが言った。
「マルフォイが汽車の中で言ったこと、覚えてるか?あいつの父親がカルカロフと友達だって。
あいつらがどこで知り合ったか、これでもうわかったぞ。ワールドカップじゃ、きっと二人一緒に、仮面を被って暗躍してたんだ……これだけは言えるぞ、ハリー。もしカルカロフがゴブレットに君の名前を入れたんだったら、きっといまごろ、バカを見たと思ってるさ。うまくいかなかった。だろ?君はかすり傷だけだった!
どいて__僕が捕まえるよ__」

ピッグウィジョンは、手紙を運ばせてもらえそうなので大興奮し、ホッホッとひっきりなしに鳴きながら、ハリーの頭上をグルグル回っていた。
ロンがピッグウィジョンをヒョイと空中でつかみ、ハリーが手紙を脚に括りつける間、動かないように押さえていた。

「ほかの課題は、絶対あんなに危険じゃないよ。だって、ありえないだろ?」
ピッグウィジョンを窓際に運びながらロンがしゃべり続けた。
「あのさあ、僕、この試合で君が優勝できると思う。ハリー、僕、マジでそう思う」
ロンが、この週週間の態度の埋め合わせをするためにそう言っているだけだと、ハリーにはわかっていた。
それでもうれしかった。
しかし、ハーマイオニーは、ふくろう小屋の壁に寄りかかり、腕組をして、しかめっ面でロンを見た。

「この試合が終わるまで、ハリーにとってまだ先は長いのよ」
ハーマイオニーは真剣だ。
「あれが第一の課題なら、次は何がくるやら、考えるのもいや」
「君って、太陽のように明るい人だね」
ロンが言った。
「君とトレローニー先生と、いい勝負だよ」

ロンは窓からピッグウィジョンを放した。
ピッグウィジョンはとたんに四、五メートル墜落して、それからやっとなんとか舞い上がった。

脚に括りつけられた手紙は、いつもよりずっと長い、重い手紙だった__ハリーは、シリウスに詳しく話したいという気持を抑えきれなかった。
ホーンテールをどんなふううに避け、回り込み、かわしたのか、一撃一撃を詳しく書きたかったのだ。

三人はピッグウィジョンが闇に消えていくのを見送った。
それから、ロンが言った。
「さあ、ハリー、下に行って、君のびっくりパーティに出なきゃ__フレッドとジョージが、いまごろはもう厨房から食べ物をどっさりくすねてきてるはずだ」

まさに、そのとおりだった。
グリフィンドールの談話室に入ると、歓声と叫び声が再び爆発した。
山のようなケーキ、大瓶入りのかぼちゃジュースやバタービールが、どこもかしこもびっしりだった。

リー・ジョーダンが「ドクター・フィリバスターのヒヤヒヤ花火」を破裂させたあとだったので、周り中に星や火花が散っていた。
絵の上手なディーン・トーマスが、見事な新しい旗を何枚か作っていたが、そのほとんどがファイアボルトでホーンテールの頭上をブンブン飛び回るハリーを描いていた。
ほんの二、三枚だけが、頭に火がついたセドリックの絵だった。

ハリーは食べ物を取った。
まともな空腹感がどんなものか、そのときまでほとんど忘れていた。
ハリーはロンやハーマイオニーと一緒に座った。
信じられないくらい幸せだった。
ロンが自分の味方に戻ってきてくれた。
第一の課題をクリアしたし、第二の課題までは、まだ三カ月もある。

「おっどろき。これ、重いや」
リー・ジョーダンが、ハリーがテーブルに置いておいた金の卵を持ち上げ、手で重みを計りながら言った。
「開けてみろよ、ハリー、さあ!中に何があるか見ようぜ!」
「ハリーは自分一人でヒントを見つけることになってるのよ」
すかさずハーマイオニーが言った。
「試合のルールで決まっているとおり……」
「ドラゴンを出し抜く方法も、自分一人で見つけるこのになってたんだけど」
ハリーが、ハーマイオニーにだけ聞こえるように呟くと、ハーマイオニーはばつが悪そうに笑った。

「そうだ、そうだ。ハリー、開けろよ!」
何人かが同調した。
リーがハリーに卵を渡し、ハリーは卵の周りにぐるりとついている溝に爪を立ててこじ開けた。

空っぽだ。
きれいさっぱり空っぽだった__しかし、ハリーが開けたとたん、世にも恐ろしい、大きなキーキー声の咽び泣きのような音が、部屋中に響き渡った。
ハリーが聞いたことがある音の中でこれに一番近いのは、「ほとんど首なしニック」の「絶命日パーティ」でのゴースト・オーケストラの演奏で、奏者全員がのこぎりを弾いていたときの音だ。

「黙らせろ!」
フレッドが両手で耳を覆って叫んだ。
「いまのは何だ?」
ハリーがバチンと閉めた卵をまじまじと見つめながら、シェーマス・フィネガンが言った。
「バンシー妖怪の声みたいだったな……もしかしたら、次にやっつけなきゃいけないのはそれだぞ、ハリー!」
「だれかが拷問を受けてた!」
ネビルはソーセージ・ロールをバラバラと床に落として、真っ青になっていた。
「君は『はりつけの呪文』と戦わなくちゃならないんだ!」
「バカ言うなよ、ネビル。あれは違法だぜ」ジョージが言った。
「代表選手に『磔の呪文』をかけたりするもんか。俺が思うに、ありゃ、パーシーの歌声にちょっと似てたな……もしかしたら、やつがシャワーを浴びてるときに襲わないといけないのかもしれないぜ、ハリー」

「ハーマイオニー、ジャム・タルト、食べるかい?」
フレッドが勧めた。
ハーマイオニーはフレッドが差し出した皿を疑わしげに見た。
フレッドがニヤッと笑った。
「大丈夫だよ。こっちにはなんにもしてないよ。クリームサンド・ビスケットのほうはご用心さ__」
ちょうどビスケットにかぶりついたネビルが、むせて吐き出した。
フレッドが笑いだした。
「ほんの冗談さ、ネビル……」

ハーマイオニーがジャム・タルトを取った。
「これ、全部厨房から持ってきたの?フレッド?」
ハーマイオニーが聞いた。
「ウン」
フレッドがハーマイオニーを見て、ニヤッと笑った。
「旦那さま、なんでも差し上げます。なんでもどうぞ!」
屋敷しもべの甲高いキーキー声で、フレッドが言った。
「連中はほんとうに役に立つ……俺がちょっと腹が空いてるって言ったら、雄牛の丸焼きだって持ってくるぜ」

「どうやってそこに入るの?」
ハーマイオニーはさり気ない、なんの下心もなさそうな声で聞いた。
「簡単さ」
フレッドが答えた。
「果物が盛ってある器の絵の裏に、隠し戸がある。梨をくすぐればいいのさ。するとクスクス笑う。そこで__」
フレッドは口を閉じて、疑うようにハーマイオニーを見た。
「なんで聞くんだ?」
「別に」
ハーマイオニーが口早に答えた。
「屋敷しもべを率いてストライキをやらかそうっていうのかい?」
ジョージが言った。
「ビラ撒きとかなんとか諦めて、連中を焚きつけて反乱か?」
何人かがおもしろそうに笑ったが、ハーマイオニーは何も言わなかった。
「連中をそっとしておけ。服や給料をもらうべきだなんて、連中に言うんじゃないぞ!」
フレッドが忠告した。
「料理に集中できなくなっちまうからな!」

ちょうどそのとき、ネビルが大きなカナリアに変身してしまい、みんなの注意が逸れた。
「あ__ネビル、ごめん!」
みんながゲラゲラ笑う中で、フレッドが叫んだ。
「忘れてた__俺たち、やっぱりクリームサンドに呪いをかけてたんだ__」

一分もたたないうちに、ネビルの羽が抜けはじめ、全部抜け落ちると、いつもとまったく変わらない姿のネビルが再び現れた。
ネビル自身もみんなと一緒に笑った。
「カナリア・クリーム!」
興奮しやすくなっている生徒たちに向かって、フレッドが声を張りあげた。
「ジョージと僕とで発明したんだ__一個七シックル。お買い得だよ!」

ハリーがやっと寝室に戻ったのは、夜中の一時近くだった。
ロン、ネビル、シェーマス、ディーンと一緒だった。
四本柱のベッドのカーテンを引く前に、ハリーはベッド脇の小机にハンガリー・ホーンテールのミニチュアを置いた。
するとミニチュアは欠伸をし、体を丸めて目を閉じた。
ほんとだ__ベッドのカーテンを閉めながら、ハリーは思った__ハグリッドの言うとおりだ……悪くないよ、ドラゴンって……。

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