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第21章 ハーマイオニーの秘密 4

「ブラックの言っていることを証明するものは何一つない。君たちの証言だけじゃ__十三歳の魔法使いが二人、何を言おうと、誰も納得はせん。
あの通りには、シリウスがペティグリューを殺したと証言する目撃者が、いっぱいいたのじゃ。
わし自身、魔法省に、シリウスがポッターの『秘密の守人もりびと』だったと証言した」
「ルーピン先生が話してくださいます__」どうしても我慢できず、ハリーが口を挟んだ。
「ルーピン先生はいまは森の奥深くにいて、誰にも何も話すことができん。再び人間に戻るころにはもう遅過ぎるじゃろう。
シリウスは死よりもむごい状態になっておろう。
さらに言うておくが、狼人間は我々の仲間うちでは信用されておらんからの。狼人間が支持したところでほとんど役には立たんじゃろう__それに、ルーピンとシリウスは旧知きゅうちの仲でもある__」
「でも__」
よくお聞き、ハリー。もう遅過ぎる。わかるかの?スネイプ先生の語る真相の方が、君たちの話より説得力があるということを知らねばならん」
「スネイプはシリウスを憎んでいます」ハーマイオニーが必死で訴えた。
「シリウスが自分にバカな悪戯を仕掛けたというだけで__」
「シリウスも無実の人間らしい振る舞いをしなかった。『太った婦人レディ』を襲った__グリフィンドールにナイフを持って押し入った__生きていても、死んでいても、とにかくペティグリューがいなければ、シリウスに対する判決をくつがえすのは無理というものじゃ」
でも、ダンブルドア先生は僕たちを信じてくださってます
「その通りじゃ」ダンブルドアは落ち着いていた。
「しかし、わしは、ほかの人間に真実を悟らせる力はないし、魔法大臣の判決を覆すことも……」
ハリーはダンブルドアの深刻な顔を見上げ、足元がガラガラと急激に崩れていくような気がした。
ダンブルドアなら何でも解決できる、そういう思いに慣れきっていた。
ダンブルドアがなんにもないところから、驚くべき解決策を引き出してくれると期待していた。それが、違う……最後の望みが消えた。

「必要なのは」ダンブルドアがゆっくりと言った。そして、明るい青い目がハリーからハーマイオニーへと移った。
時間じゃ
「でも__」ハーマイオニーは何か言いかけた。そして、ハッと目を丸くした。
あっ!
「さあ、よく聞くのじゃ」ダンブルドアはごく低い声で、しかも、はっきりと言った。
「シリウスは八階のフリットウィック先生の事務所に閉じ込められておる。
西塔の右から十三番目の窓じゃ。
首尾よく運べば、君たちは、今夜、一つと言わずもっと、罪なきものの命を救うことができるじゃろう。
ただし、二人とも、忘れるでないぞ。見られてはならん。ミス・グレンジャー、規則は知っておろうな__どんな危険を冒すのか、君は知っておろう……誰にも__見られては__ならんぞ

ハリーには何がなんだかわからなかった。ダンブルドアはきびすを返し、ドアのところまで行って振り返った。
「君たちを閉じ込めておこう」ダンブルドアは腕時計を見た。
「いまは__真夜中五分前じゃ。ミス・グレンジャー、三回引っくり返せばよいじゃろう。幸運を祈る」

「幸運を祈る?」
ダンブルドアがドアを閉めたあとで、ハリーはくり返した。
「三回引っくり返す?いったい、なんのことだい?僕たちに、何をしろって言うんだい?」
しかし、ハーマイオニーはローブの襟のあたりをゴソゴソ探っていた。
そして中からとても長くて細い金の鎖を引っ張り出した。

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