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第四章 鍵の番人 1

ドーン。

もう一度、誰かがノックした。ダドリーが跳び起きて、寝ぼけた声を上げた。
「なに?大砲?どこ?」
むこうの部屋でガラガッシャンと音がしたと思うと、バーノンおじさんがライフル銃を手にすっとんできた__あの細長い包みが何だったのか、今わかった。
「誰だ。そこにいるのは。言っとくが、こっちには銃があるぞ!」おじさんは叫んだ。
一瞬の空白があった。そして…。


バターン!


蝶番も吹っ飛び、ものすごい力で開けられた扉が、轟音を上げて床に倒れた。

戸口には大男が突っ立っていた。ぼうぼうと長い髪、もじゃもじゃの荒々しいひげに隠れて、顔はほとんど見えない。でも、毛むくじゃらの中から、真っ黒なコガネムシのような目がキラキラ輝いているのが見える。

大男は窮屈そうに部屋に入ってきた。身をかがめても、髪が天井をこすった。男は腰を折ってドアを拾い上げると、いとも簡単に元の枠にバチンと戻した。外の嵐がやや薄らいで聞こえた。大男は振り返ってぐるりとみんなを見渡した。

「茶でもいれてくれんかね?いやはや、ここまで来るのは骨だったぞ…」
男は大股でソファに近づき、恐怖で凍りついているダドリーに言った。
「少し空けてくれや、太っちょ」
ダドリーは金切り声を上げて逃げ出し、母親の陰に隠れた。おばさんは震えながらおじさんの陰にうずくまっていた。

「オーッ、ハリーだ!」と大男が言った。
ハリーは恐ろしげな、荒々しい黒い影のような男の顔を見上げ、コガネムシのような目がくしゃくしゃになって笑いかけているのを見つけた。
「最後におまえさんを見たときにゃ、まだ赤ん坊だったなあ。父さんそっくりになった。でも目は母さんの目だなあ」と大男は言った。

バーノンおじさんは奇妙なかすれ声を出した。
「今すぐお引き取りを願いたい。家宅侵入罪ですぞ!」
「だまれ、ダーズリー。くさった大スモモめ」
と言うやいなや、大男はソファの背ごしに手を伸ばしておじさんの手から銃をひったくり、まるでゴム細工でもひねるかのようにやすやすと丸めて一結びにし、部屋の隅に放り投げてしまった。 バーノンおじさんはまたまた奇妙な声を上げた。今度は踏みつけられたネズミのような声だった。

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