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第17章 スリザリンの継承者 6

「ハリー、本題に入ろうか」リドルはまだ昂然と笑みを浮かべている。
「二回も__君の過去に、僕にとっては未来にだが__僕たちは出会った。そして二回とも僕は君を殺し損ねた。君はどうやって生き残った?すべて聞かせてもらおうか」
そしてリドルは静かにつけ加えた。
「長く話せば、君はそれだけ長く生きていられることになる」
ハリーは素早く考えを巡らし、勝つ見込みを計算した。リドルは杖を持っている。ハリーにはフォークスと「組分け帽子」があるが、どちらも決闘の役に立つとは思えない。完全に不利だ。しかし、リドルがそこに立っているうちに、ジニーの命はますますり減って行く…。そうこうしているうちにも、リドルの輪郭がはっきり、しっかりしてきたことにハリーは気づいた__自分とリドルの一騎打ちになるなら、一刻も早いほうがいい__。

「君が僕を襲ったとき、どうして君が力を失ったのか、誰にもわからない」
ハリーは唐突に話しはじめた。
「僕自身わからない。でも、なぜ君が僕を殺せなかったか、僕にはわかる。母が、僕をかばって死んだからだ。母は普通の、マグル生まれの母だ」
ハリーは怒りを押さえつけるのにワナワナ震えていた。
「君が僕を殺すのを、母が食い止めたんだ。僕はほんとうの君を見たぞ。去年のことだ。落ちぶれた残骸だ。かろうじて生きている。君の力のなれの果てだ。君は逃げ隠れしている!醜い!汚らわしい!」
リドルの顔が歪んだ。それから無理やり、ぞっとするような笑顔を取りつくろった。
「そうか。母親が君を救うために死んだ。なるほど。それは呪いに対する強力な反対呪文だ。わかったぞ__結局君自身には特別なものは何もないわけだ。実は何かあるのかと思っていたんだ。ハリー・ポッター、何しろ僕たちには不思議に似たところがある。君も気づいただろう。二人とも混血で、孤児で、マグルに育てられた。偉大なるスリザリン様ご自身以来、ホグワーツに入学した生徒の中で蛇語を話せるのは、たった二人だけだろう。見た目もどこか似ている…。しかし、僕の手から逃れられたのは、結局幸運だったからに過ぎないのか。それだけわかれば十分だ」
ハリーは今にもリドルが杖を振り上げるだろと、体を固くした。しかし、リドルの歪んだ笑いはまたもや広がった。
「さて、ハリー。すこし揉んでやろう。サラザール・スリザリンの継承者、ヴォルデモート卿の力と、有名なハリー・ポッターと、ダンブルドアがくださった精一杯の武器とを、お手合わせ願おうか」

リドルはフォークスと「組分け帽子」をからかうように、チラッと見てその場を離れた。ハリーは感覚のなくなった両足に恐怖が広がっていくのを感じながら、リドルを見つめた。リドルは一対の高い柱の間で立ち止まり、ずっと上の方に、半分暗闇に覆われているスリザリンの石像の顔を見上げた。横に大きく口を開くと、シューシューという音が漏れた__ハリーにはリドルが何を言っているのかわかった。
スリザリンよ。ホグワーツ四強の中で最強の者よ。われに話したまえ
ハリーが向きを変えて石像を見上げた。フォークスもハリーの肩の上で揺れた。

スリザリンの巨大な石の顔が動いている。恐怖に打ちのめされながら、ハリーは石像の口がだんだん広がって行き、ついに大きな黒い穴になるのを見ていた。
何かが、石像の口の中でうごめいていた。何かが、奥の方からズルズルと這い出してきた。


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