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第22章 再びふくろう便 4

ハリー、ロン、ハーマイオニーは翌日の昼には退院したが、そのとき城にはほとんど誰もいなかった。
うだるような暑さの上、試験が終わったとなれば、みんなホグズミード行きを十分に楽しんでいるというわけだ。
しかし、ロンもハーマイオニーも出かける気になれず、ハリーと三人で校庭をブラブラ歩きながら、昨晩の大冒険を語り合った。そして、シリウスとバックビークはいまごろどこだろうと思案をめぐらせた。
湖のそばに座り、大イカが水面みずもで悠々と触手をなびかせているのを眺めながら、ハリーはふとむこう岸に目をやり、会話の糸口を見失った。牡鹿おじかがあそこからハリーの方に駆け寄ってきたのは、ほんの昨日の夜のことだった……。

三人の上を影がよぎった。見上げると、目をトロンとさせたハグリッドが、テーブルクロスほどあるハンカチで顔の汗を拭いながら、ニッコリ見下ろしていた。
「喜んでちゃいかんのだとは思うがな、なんせ、昨晩あんなことがあったし」ハグリッドが言った。
「いや、つまり、ブラックがまた逃げたりなんだりで__だがな、知っとるか?」
「なーに?」三人ともいかにも聞きたいふりをした。
「ビーキーよ!逃げおった!あいつは自由だ!一晩中お祝いしとった!」
「すごいじゃない!」ハーマイオニーは、ロンがいまにも笑い出しそうな顔をしたので、とがめるような目でロンを見ながら、相槌あいづちを打った。
「ああ……ちゃんと繋いどかなかったんだな」ハグリッドは校庭のむこうの方をうれしそうに眺めた。

「だがな、朝になって心配になった……もしかして、ルーピン先生に校庭のどっかで出くわさなんだろうかってな。だが、ルーピンは昨日の晩は、なんにも食ってねえって言うんだ……」
「なんだって?」ハリーがすぐさま聞いた。
「なんと、まだ聞いとらんのか?」
ハグリッドの笑顔がふと陰った。周りに誰もいないのに、ハグリッドは声を落とした。
「アー__スネイプが今朝、スリザリン生全員に話したんだ……俺は、もうみんな知っていると思っていたんだが……ルーピン先生は狼人間だ、とな。それに昨日の晩は、ルーピンは野放し状態だった、とな。いまごろ荷物をまとめておるよ。当然」
荷物をまとめるって?」ハリーは驚いた。「どうして?」
「いなくなるんだ。そうだろうが?」そんなことを聞くのがおかしいという顔でハグリッドが答えた。
「今朝一番で辞めた。またこんなことがあっちゃなんねえって、言うとった」
ハリーは慌てて立ち上がった。
「僕、会いにいってくる」ハリーがロンとハーマイオニーに言った。
「でも、もし辞任したなら__」
「__もう私たちにできることはないんじゃないかしら__」
「かまうもんか。それでも僕、会いたいんだ。あとでここで会おう」


ルーピンの部屋のドアは開いていた。ほとんど荷造りがすんでいる。
水魔グリンデローの水槽が空っぽになっていて、そのそばに使い古されたスーツケースが蓋を開けたまま、ほとんどいっぱいになって置いてあった。
ルーピンは机に覆いかぶさるようにして何かしていた。
ハリーのノックで初めて顔を上げた。
「君がやってくるのが見えたよ」
ルーピンが微笑みながら、いままで熱心に見ていた羊皮紙を指差した。「忍びの地図」だった。
「いま、ハグリッドに会いました。先生がお辞めになったって言ってました。嘘でしょう?」
「いや、ほんとうだ」ルーピンは机の引き出しを開け、中身を取り出しはじめた。
「どうしてなんですか?魔法省は、まさか先生がシリウスの手引きをしたなんて思っているわけじゃありませんよね?」
ルーピンはドアのところまで行って、ハリーの背後でドアを閉めた。

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