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第17章 スリザリンの継承者 9

暗いトンネルを数分歩くと、遠くの方からゆっくりと岩がずれ動く音が聞こえてきた。
「ロン!」ハリーは足を速めながら叫んだ。
「ジニーは無事だ!ここにいるよ!」
ロンが、胸の詰まったような歓声をあげるのが聞こえた。二人は次の角を曲がった。崩れ落ちた岩の間に、ロンが作った、かなり大きな隙間のむこうkら、待ちきれないようなロンの顔が覗いていた。
ジニー!」ロンが隙間から腕を突き出して、最初にジニーを引っ張った。
「生きてたのか!夢じゃないだろうな!いったい何があったんだ?」
ロンが抱きしめようとすると、ジニーはしゃくりあげ、ロンを寄せつけなかった。
「でも、ジニー、もう大丈夫だよ」ロンがニッコリ笑いかけた。
「もう終わったんだよ、もう__あの鳥はどっから来たんだい?」
フォークスがジニーのあとから隙間をスイーッとくぐって現れた。
「ダンブルドアの鳥だ」ハリーが狭い隙間をくぐり抜けながら答えた。
「それに、どうして剣なんか持ってるんだ?」
ロンはハリーの手にした眩い武器をまじまじと見つめた。
「ここを出てから説明するよ」ハリーはジニーの方をチラッと横目で見ながら言った。
「でも__」
「あとにして」ハリーが急いで言った。
誰が「秘密の部屋」を開けたのかを、今、ロンに話すのは好ましくないと思ったし、いずれにしても、ジニーの前では言わない方がよいと考えたのだ。

「ロックハートはどこ?」
「あっちの方だ」
ロンはニヤッとして、トンネルからパイプへと向かう道筋を顎でしゃくった。
「調子が悪くてね。来て見てごらん」
フォークスの広い真紅の翼が闇に放つ、柔らかな金色の光に導かれ、三人はパイプの出口のところまで引き返した。ギルデロイ・ロックハートが一人でおとなしく鼻歌を歌いながらそこに座っていた。
「記憶をなくしてる。『忘却術』が逆噴射して、僕たちでなく自分にかかっちゃったんだ。自分が誰なのか、今どこにいるのか、僕たちが誰なのか、チンプンカンプンさ。ここに来て待ってるように言ったんだ。この状態で一人で放っておくと、怪我したりして危ないからね」
ロックハートは人のよさそうな顔で、闇を透かすようにして三人を見上げた。
「やあ、なんだか変わったところだね。ここに住んでいるの?」ロックハートが聞いた。
「いや」ロンはハリーの方にちょっと眉を上げて目配せした。

ハリーはかがんで、上に伸びる長く暗いパイプを見上げた。
「どうやって上まで戻るか、考えてた?」ハリーが聞いた。
ロンは首を横に振った。すると、不死鳥のフォークスがスーッとハリーの後ろから飛んできて、ハリーの前に先回りして羽をパタパタいわせた。ビーズのような目が闇に明るく輝いている。長い金色の尾羽を振っている。ハリーはポカンとしてフォークスを見た。
「つかまれって言っているように見えるけど…」ロンが当惑した顔をした。
「でも鳥が上まで引っ張り上げるには、君は重すぎるな」
「フォークスは普通の鳥じゃない」ハリーはハッとしてみんなに言った。
「みんなで手をつながなきゃ。ジニー、ロンの手につかまって。ロックハート先生は__」
「君のことだよ」ロンが強い口調でロックハートに言った。
「先生は、ジニーの空いてる方の手につかまって」
ハリーは剣と「組分け帽子」をベルトに挟んだ。ロンは、ハリーのローブの背中のところにつかまり、ハリーは手を伸ばして、フォークスの不思議に熱い尾羽をしっかりつかんだ。

全身が異常に軽くなったような気がした。次の瞬間、ヒューッと風を切って、四人はパイプの中を上に向かって飛んでいた。下の方にぶら下がっているロックハートが「すごい!すごい!まるで魔法のようだ!」と驚く声がハリーに聞こえてきた。ひんやりした空気がハリーの髪を打った。楽しんでいるうちに、飛行は終わった__四人は「嘆きのマートル」のトイレの湿った床に着地した。ロックハートが帽子をまっすぐにかぶり直している間に、パイプを覆い隠していた手洗い台がスルスルと元の位置に戻った。

マートルがじろじろと四人を見た。
「生きてるの」マートルはポカンとしてハリーに言った。
「そんなにがっかりした声を出さなくてもいいじゃないか」
ハリーは、メガネについた血やベトベトを拭いながら、真顔で言った。
「あぁ…わたし、ちょうど考えてたの。もしあんたが死んだら、わたしのトイレに一緒に住んでもらったら嬉しいって」
マートルは頬をポッと銀色に染めた。
「ウヘー!」トイレから出て、暗い人気のない廊下に立ったとき、ロンが言った。
「ハリー、マートルは君に熱を上げてるぜ!ジニー、ライバルだ!」
しかし、ジニーは声もたてずに、まだボロボロ涙を流していた。
「さあ、どこへ行く?」
ジニーを心配そうに見ながら、ロンが言った。ハリーは指で示した。

フォークスが金色の光を放って、廊下を先導していた。四人は急ぎ足でフォークスに従った。間もなくマクゴナガル先生の部屋の前に出た。

ハリーはノックして、ドアを押し開いた。


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