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第18章 杖調べ 2

「この試合は有名だし、あなたも有名。『日刊予言者新聞』に、あなたが試合に出場することがまったく載らなかったら、かえっておかしいじゃない……あなたのことは、『例のあの人』について書かれた本の半分に、すでに載ってるのよ……どうせ耳に入るものなら、シリウスはあなたの口から聞きたいはずだわ。絶対そうに決まってる」
「わかった、わかった。書くよ」

ハリーはトーストの最後の一枚を湖に放り投げた。
二人がそこに立って見ていると、トーストは一瞬プカプカ浮いていたが、すぐに吸盤つきの太い足が一本水中から伸びてきて、トーストをさっとすくって水中に消えた。
それから二人は城に引き返した。

「だれのふくろうを使おうか?」階段を上りながらハリーが聞いた。
「シリウスがヘドウィグを二度と使うなって言うし」
「ロンにお聞きなさいよ。貸してって__」
「僕、ロンには何にも頼まない」ハリーはきっぱりと言った。
「そう。それじゃ、学校のふくろうをどれか借りることね。だれでも使えるから」
二人はふくろう小屋に出かけた。
ハーマイオニーはハリーに羊皮紙、羽根ペン、インクを渡すと、止まり木にずらりと並んだありとあらゆるふくろうを見て回った。
ハリーは壁にもたれて座り込み、手紙を書いた。

シリウスおじさん
ホグワーツで起こっていることはなんでも知らせるようにとおっしゃいましたね。それで、お知らせします__もうお耳に入ったかもしれませんが、今年は「三大魔法学校対抗試合」があって、土曜日の夜、僕が四人目の代表選手に選ばれました。だれが僕の名前を「炎のゴブレット」に入れたのか、わかりません。だって、僕じゃないんです。もう一人のホグワーツ代表はハッフルパフのセドリック・ディゴリーです

ハリーはここでちょっと考え込んだ。
昨晩からずっしりと胸にのしかかって離れない不安な気持を、伝えたい思いが突き上げてきた。
しかし、どう言葉にしていいのかわからない。
そこで、羽根ペンをインク瓶に浸し、ただこう書いた。

おじさんもバックビークも、どうぞお元気で__ハリーより

「書いた」
ハリーは立ち上がり、ローブから藁を払い落としながら、ハーマイオニーに言った。
それを合図に、ヘドウィグがバタバタとハリーの肩に舞い降り、脚を突き出した。
「おまえを使うわけにはいかないんだよ」
ハリーは学校のふくろうを見回しながらヘドウィグに話しかけた。
「学校のどれかを使わないといけないんだ……」
ヘドウィグは一声ホーッと大きく鳴き、パッと飛び立った。
あまりの勢いに、爪がハリーの肩に食い込んだ。
ハリーが大きなメンフクロウの脚に手紙をくくりつけている間中、ヘドウィグはハリーに背を向けたままだった。
メンフクロウが飛び去った後、ハリーは手を伸ばしてヘドウィグを撫でようとしたが、ヘドウィグは激しくくちばしをカチカチ鳴らし、ハリーの手の届かない天井の垂木たるきへと舞い上がった。

「最初はロン、今度はおまえもか」ハリーは腹立たしかった。
僕が悪いんじゃないのに


みんなが、ハリーが代表選手になったことに慣れてくれば、状況はましになるだろうとハリーは考えていた。
次の日にはもう、ハリーは自分の読みの甘さに気づかされた。
授業が始まると、学校中の生徒の目を避けるわけにはいかなくなった__学校中の生徒が、グリフィンドール生と同じように、ハリーが自分で試合に名乗りを上げたと思っていた。
しかし、グリフィンドール生と違って、ほかの生徒たちは、それを快く思っていなかった。

ハッフルパフは、いつもならグリフィンドールととてもうまくいってたのに、グリフィンドール生全員に対してはっきり冷たい態度に出た。
たった一度の「薬草学」のクラスで、それが十分にわかった。
ハッフルパフ生が、自分たちの代表選手の栄光をハリーが横取りしたと思っているのは明らかだった。
ハッフルパフは滅多に脚光を浴びることがなかったので、ますます感情を悪化させたのだろう。
セドリックは、一度クィディッチでグリフィンドールを打ち負かし、ハッフルパフに栄光をもたらした貴重な人物だった。
アーニー・マクミランとジャスティン・フレッチリーは、普段はハリーとうまくいっているのに、同じ台で「ピョンピョン球根」の植え替え作業をしているときも、ハリーと口をきかなかった__「ピョンピョン球根」が一個ハリーの手から飛び出し、思いっきりハリーの頭にぶつかったときは、笑いはしたが、不愉快な笑い方だった。
ロンもハリーに口をきかない。
ハーマイオニーが二人の間に座って、なんとか会話を成り立たせようとしたが、二人ともハーマイオニーにはいつもどおりの受け答えをしながらも、互いに目を合わさないようにしていた。
ハリーは、スプラウト先生までよそよそしいように感じた__もっとも、スプラウト先生はハッフルパフの寮監だ。

普段なら、ハグリッドに会うのは楽しみだったが、「魔法生物飼育学」はスリザリンと顔を合わせるということでもあった__代表選手になってからはじめてスリザリン生と顔をつき合わせることになるのだ。

思ったとおり、マルフォイはいつものせせら笑いをしっかり顔に刻んで、ハグリッドの小屋に現われた。

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