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第12章 三大魔法学校対抗試合 9

「代表選手を決める公明正大な審査員って、だれなんだろう?」ハリーが言った。
「知るもんか」フレッドが言った。
「だけど、そいつを騙さなきゃ。『老け薬』を数滴使えばうまくいくかもな、ジョージ……」
「だけど、ダンブルドアは二人が17歳未満だって知ってるよ」ロンが言った。
「ああ、でも、ダンブルドアが代表選手を決めるわけじゃないだろ?」
フレッドは抜け目がない。
「俺の見るところじゃ、審査員なんて、だれが立候補したかさえわかったら、あとは各校からベストな選手を選ぶだけで、歳なんて気にしないと思うな。ダンブルドアは俺たちが名乗りをあげるのを阻止しようとしてるだけだ」
「でも、いままで死人が出てるのよ」
みんなでタペストリーの裏の隠し戸を通り、また一つ狭い階段を上がりながら、ハーマイオニーが心配そうな声を出した。
「ああ」フレッドは気楽に言った。
「だけどずっと昔の話だろ?それに、ちょっとくらいスリルがなきゃ、おもしろくもないじゃないか?おい、ロン、俺たちがダンブルドアを出し抜く方法を見つけたらどうする?エントリーしたいか?」
「どう思う?」ロンはハリーに聞いた。
「立候補したら気分いいだろうな。だけど、もっと年上の選手がほしいんだろうな……僕たちじゃまだ勉強不足かも……」
「僕なんか、ぜったい不足だ」
フレッドとジョージの後ろから、ネビルの落ち込んだ声がした。
「だけど、ばあちゃんは僕に立候補してほしいだろうな。ばあちゃんは、僕が家の名誉を上げなきゃいけないっていっつも言ってるもの。僕、やるだけはやらな__ウワッ……」
ネビルの足が、階段の中ほどで、ズブリとはまり込んでいた。
こんな悪戯階段が、ホグワーツのあちこちにあって、ほとんどの上級生は、考えなくとも階段の消えた部分を飛び越す習慣ができている。
しかし、ネビルはとびっきり記憶力が悪かった。ハリーとロンがネビルの脇の下を抱えて引っ張り出した。階段の上では甲冑がギーギー、ガシャガシャ音を立てて笑っていた。
「こいつめ、黙れ!」
鎧のそばを通り過ぎるとき、ロンが兜の面頬めんぼおをガシャンと引き下げた。

グリフィンドール塔に辿り着いた。入口は、ピンクの絹のドレスを着た「太った婦人レディ」の大きな肖像画の後ろに隠れている。みんなが近づくと、肖像画が問いかけた。
「合言葉は?」
ボールダーダッシュたわごと」ジョージが言った。
「下にいた監督生が教えてくれたんだ」
肖像画がパッと開き、背後の壁の穴が現われた。全員よじ登って穴をくぐった。
円形の談話室には、フカフカした肘掛椅子やテーブルが置かれ、パチパチと燃える暖炉の火で暖かかった。
ハーマイオニーは楽しげに弾ける火に暗い視線を投げかけた。「おやすみなさい」と挨拶して、女子寮に続く廊下へと姿を消す前に、ハーマイオニーが呟いた言葉を、ハリーははっきりと聞いた。
奴隷労働

ハリー、ロン、ネビルは最後の螺旋階段をを上り、塔のてっぺんにある寝室に辿り着いた。深紅のカーテンがかかった四本柱のベッドが五つ壁際に並び、足下にはそれぞれのベッドの主のトランクが置かれていた。
ディーンとシェーマスはもうベッドに入るところだった。シェーマスのベッドの枕元にはアイルランドのロゼットがピンで留められ、ディーンのベッドの脇机の上には、ビクトール・クラムのポスターが壁に貼りつけられていた。ディーンお気に入りのウエストハム・サッカーチームの古ポスターは、その脇にピンで留めてある。
ちっとも動かないサッカー選手たちを眺めながら、ロンが頭を振り振りため息をついた。
「いかれてる」

ハリー、ロン、ネビルもパジャマに着替え、ベッドに入った。
だれかが__しもべ妖精に違いない__湯たんぽをベッドに入れてくれていた。ベッドに横たわり、外で荒れ狂う嵐の音を聞いているのは、ほっこりと気持がよかった。
「僕、立候補するかも」
暗がりの中でロンが眠そうに言った。
「フレッドとジョージがやり方を見つけたら……試合に……やってみなきゃわかんないものな?」
「だと思うよ……」
ハリーは寝返りを打った。
頭の中に次々と輝かしい姿が浮かんだ……公明正大な審査員を出し抜いて、17歳だと信じ込ませたハリー……ホグワーツの代表選手になったハリー……拍手喝采、大歓声の全校生徒の前で、勝利の印に両手を挙げて校庭に立つ僕……僕はいま、対抗試合に優勝した……ぼんやりとかす群集ぐんしゅうの中で、チョウ・チャンの顔がくっきりと浮かび上がる。賞讃しょうさんに顔を輝かせている……。
ハリーは枕に隠れてニッコリした。
自分にだけ見えて、ロンには見えないのが、とくにうれしかった。


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