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第9章 恐怖の敗北 1

ダンブルドア校長はグリフィンドール生全員に大広間に戻るように言い渡した。十分後に、ハッフルパフ、レイブンクロー、スリザリンの寮生も、みな当惑した表情で、全員大広間に集まった。

「先生たち全員で、城の中を隈なく捜索せねばならん」
マクゴナガル先生とフリットウィック先生が、大広間の戸という戸を全部閉めきっている間、ダンブルドア校長がそう告げた。
「ということは、気の毒じゃが、皆、今夜はここに泊ることになろうの。みんなの安全のためじゃ。監督生は大広間の入口の見張りに立ってもらおう。首席の二人に、ここの指揮を任せようぞ。何か不審なことがあれば、ただちにわしに知らせるように」
ダンブルドアはいかめしくふんぞり返ったパーシーに向かって、最後に一言つけ加えた。
「ゴーストをわしへの伝令に使うがよい」

ダンブルドアは大広間から出ていこうとしたが、ふと立ち止まった。
「おお、そうじゃ。必要なものがあったのう…」
ハラリと杖を振ると、長いテーブルが全部大広間の片隅に飛んでいき、きちんと壁を背にして並んだ。
もう一振りすると、何百個ものふかふかした紫色の寝袋が現われて、床いっぱいに敷きつめられた。
「ぐっすりおやすみ」大広間を出ていきながら、ダンブルドア校長が声をかけた。

たちまち、大広間中がガヤガヤうるさくなった。グリフィンドール生がほかの寮生に事件の話を始めたのだ。
「みんな寝袋に入りなさい!」パーシーが大声で言った。
「さあ、さあ、おしゃべりはやめたまえ!消灯まであと十分!」
「行こうぜ」ロンがハリーとハーマイオニーに呼びかけ、三人はそれぞれ寝袋をつかんで隅の方に引きずっていった。

「ねえ、ブラックはまだ城の中だと思う?」ハーマイオニーが心配そうに囁いた。
「ダンブルドアは明らかにそう思ってるみたいだな」とロン。
「ブラックが今夜を選んでやってきたのはラッキーだったと思うわ」
三人とも服を着たままで寝袋に潜り込み、頬杖をつきながら話を続けた。
「だって今夜だけはみんな寮塔にいなかったんですもの…」
「きっと、逃亡中で時間の感覚がなくなったんだと思うな」ロンが言った。
「今日がハロウィーンだって気づかなかったんだよ。じゃなきゃこの広間を襲撃してたぜ」
ハーマイオニーが身震いした。周りでも、みんなが同じことを話しあっていた。

いったいどうやって入り込んだんだろう?
「『姿現し術』を心得てたんだと思うな」ちょっと離れたところにいたレイブンクロー生が言った。
「ほら、どこからともなく突如現れるアレさ」
「変装してたんだ、きっと」ハッフルパフの五年生が言った。
「飛んできたのかも知れないぞ」ディーン・トーマスが言った。
「まったく。『ホグワーツの歴史』を読もうと思ったことがあるのは私一人だけだっていうの?」
「たぶんそうだろ」とロンが言った。
「どうしてそんなこと聞くんだ?」
「それはね、この城を護っているのは城壁だけじゃないってことなの。こっそり入り込めないように、ありとあらゆる呪文がかけられているのよ。ここでは『姿現し』はできないわ。それに、吸魂鬼ディメンターの裏をかくような変装があったら拝見したいものだわ。校庭の入口は一つ残らず吸魂鬼ディメンターが見張ってる。空を飛んできたって見つかったはずだわ。その上、秘密の抜け道はフィルチが全部知ってるから、そこも吸魂鬼ディメンターが見逃してはいないはず…」

「灯りを消すぞ!」パーシーが怒鳴った。
「全員寝袋に入って、おしゃべりはやめ!」
蝋燭の灯がいっせいに消えた。
残された明りは、フワフワ漂いながら監督生たちと深刻な話をしている銀色のゴーストと、城の外の空と同じように星がまたたく魔法の天井の光だけだった。
そんな薄上がりの中、大広間にヒソヒソと流れ続ける囁きの中で、ハリーはまるで静かな風の吹く戸外に横たわっているような気持ちになった。

一時間ごとに先生が一人ずつ大広間に入ってきて、何事もないかどうか確かめた。やっとみんな寝静まった朝の三時ごろ、ダンブルドア校長が入ってきた。
ハリーが見ていると、ダンブルドアはパーシーを探していた。パーシーは寝袋の間を巡回して、おしゃべりをやめさせていた。
パーシーはハリーやロン、ハーマイオニーのすぐ近くにいたが、ダンブルドアの足音が近づいてきたので、三人とも急いで狸寝入りをした。

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