第22章 再びふくろう便 2
二人は病棟に続く廊下の端に辿り着いた。
「オッケーよ__ダンブルドアの声がきこえるわ」ハーマイオニーは緊張していた。「ハリー、早く!」
二人は廊下を這うように進んだ。ドアが開いた。ダンブルドアの背中が現れた。
「君たちを閉じ込めておこう」ダンブルドアの声だ。
「いまは、真夜中五分前じゃ。ミス・グレンジャー、三回引っくり返せばよいじゃろう。幸運を祈る」
ダンブルドアが後ろ向きに部屋を出てきて、ドアを閉め、杖を取り出して、あわや魔法で鍵をかけようとした。大変だ。
ハリーとハーマイオニーが前に飛び出した。
ダンブルドアは顔を上げ、長い銀色の口髭の下に、ニッコリと笑いが広がった。
「さて?」ダンブルドアは静かに聞いた。
「やりました!」ハリーが息せき切って話した。
「シリウスは行ってしまいました。バックビークに乗って……」
ダンブルドアは二人にニッコリ微笑んだ。
「ようやった。さてと__」ダンブルドアは部屋の中の音に耳を澄ました。
「よかろう。二人とも出ていったようじゃ。中にお入り__わしが鍵をかけよう__」
ハリーとハーマイオニーは病室に戻った。ロン以外は誰もいない。
ロンは一番端のベッドでまだ身動きもせず横たわっている。
背後でカチャッと鍵がかかる音がしたときには、二人はベッドに潜り込み、ハーマイオニーは「逆転時計」をローブの下にしまい込んでいた。
つぎの瞬間、マダム・ポンフリーが事務室から出てきて、つかつかとこちらにやってきた。
「校長先生がお帰りになったような音がしましたけど?これでわたくしの患者さんの面倒を見させていただけるんでしょうね?」
ひどくご機嫌斜めだった。
ハリーとハーマイオニーは、差し出されるチョコレートを黙って食べた方がよさそうだと思った。マダム・ポンフリーは二人を見下ろすように立ちはだかり、二人が食べるのを確かめていた。
しかし、チョコはほとんど喉を通らなかった。ハリーもハーマイオニーも、神経をピリピリさせ、耳をそばだてて、じっと待っていたのだ。
すると、二人がマダム・ポンフリーの差し出す四個目のチョコレートを受け取ったちょうどそのとき、遠くで怒り狂う唸り声が、どこか上の方から木霊のように聞こえてきた。
「なにかしら?」マダム・ポンフリーが驚いて言った。
怒声が聞こえた。だんだん大きくなってくる。
マダム・ポンフリーがドアを見つめた。
「まったく__全員を起こすつもりなんですかね!いったいなんのつもりでしょう?」
ハリーは何を言っているのか聞き取ろうとした。声の主たちが近づいてくる__。
「きっと『姿くらまし』を使ったのだろう、セブルス。誰か一緒に部屋に残しておくべきだった。こんなことが漏れたら__」
「ヤツは断じて『姿くらまし』をしたのではない!」
スネイプが吼えている。いまやすぐそこまで来ている。
「この城の中では『姿くらまし』も『姿現わし』もできないのだ!これは__断じて__何か__ポッターが__絡んでいる!」
「セブルス__落ち着け__ハリーは閉じ込められている__」
バーン
病室のドアが猛烈な勢いで空いた。
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