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お問い合わせの範囲

書店のお問い合わせに対する業界内外の様々な意見が飛び交っている。

書店で働く者の仕事の範囲はお店ごとに違っている。どこまでが業務としてなのか、どこからが個々が考えるホスピタリティの範囲なのかまちまちだ。図書館にはレファレンスサービスが仕事の範囲に含まれるが、書店はお客様にどこまで寄り添えるか、個人のスキルや店舗の時間的制約によっても変わってくる。
異動の多い会社に勤めているのであちこちの書店を経験しているが、どこの店舗でも基本はその店に在庫があるかどうか、お客さんが持っている情報をもとにお問い合わせ対応するのは変わらない。
タイトルや著者名が分かればある程度検索は可能で、店のパソコンを操作すれば大概答えは出る。もし店に在庫がなければ、取次の在庫があってすぐ取り寄せ可能かどうかまでは調べられる。

お客さんの情報が乏しく、記憶に頼る場合は会話の中から商品を手繰り寄せていく。どこかで紹介されていたとか、タイトルが分からないなりに取っ掛かりを探す。この辺りの対応が店によって分かれるところだろう。

商品が特定できないときの検索範囲はそれこそ個々の持っているスキルで違ってくる。それは書店員としてのスキルだけではなく、今までに経験してきたことや過去にその本の内容に近しい事象に関わってきたからなど様々だ。

探し当てられなかったときお客さんには、「こうこうこういうキーワードからここまでお調べしたのですが、商品が特定できませんでした」と正直に伝えるか、お探しの商品がありそうな場所をご案内してお客さん自身に探していただくかする。

調べられるツールやスキルをフル活用した結果に対して、商品が特定できなかったとしてもほとんどのお客さんは納得される。

人間の心理として、一生懸命に対応していると容赦されるものなのだ。
逆に、店に在庫がなく取り寄せもできないことが分かっている商品など聞かれた時に「ない」と即答すると、「ちゃんと調べたのか?」と詰められる。いや、その本の問い合わせ何度も受けてるので即答できるんですよ、と言う時もあればそっと飲み込む時もある。

お客さんにとっての最良の答えは今その場でお目当ての本を買えることだが、別にうちの店でなくとも今日買えれば問題ない。なので近所の書店にありそうならそちらをお勧めすることもある。さすがにそちらの店舗の在庫までは調べたりしないが、結局のところ商品の有無の次にそこの書店が良い店かそうでない店か判断するのは、どこまでお客さんの心情を汲み取って対応するかなのだと思う。


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