見出し画像

『キレイー神様と待ち合わせした女ー』

 制作 大人計画 

 作・演出 松尾スズキ 

 音楽 伊藤ヨタロウ

 出演 生田絵梨花 / 神木隆之介 / 小池徹平 / 鈴木杏 / 皆川猿時 / 村杉蝉之介 / 荒川良々 / 伊勢志摩 / 猫背椿 / 宮崎吐夢 / 近藤公園 / 乾直樹 / 香月彩里 / 伊藤ヨタロウ / 片岡正二郎 / 家納ジュンコ / 岩井秀人 / 橋本じゅん / 阿部サダヲ / 麻生久美子 / 他

 12月21日ソワレ@シアターコクーン 

 ≪あらすじ≫


 三つの国に分かれ、100年もの間、民族紛争が続く“もう一つの日本”。その争いのさなか、民族解放軍を名乗るグループに誘拐され、監禁されていた少女が、10年ぶりにソトの世界に脱出する。すべての過去を忘れた少女は自ら“ケガレ”と名乗り、ダイズでできている兵士“ダイズ兵”の死体回収業で生計を立てているキネコたち“カネコ組”と出会い仲間に加わる。回収されたダイズ兵を食用として加工するダイダイ食品の社長令嬢・カスミと奇妙な友情で結ばれていくケガレ。戦場をうろつき、死体を拾って小銭を稼ぐ、そんな健気なケガレを見守るのは成人したケガレ=ミソギだった。死ぬことに憧れつつもなかなか死ねないダイズ兵のダイズ丸、頭は弱いが枯れ木に花を咲かせる能力を持つハリコナ、誘拐・監禁することでしか女性と一緒にいられないマジシャンらと出会い、過去、現在、未来が交錯する時間のなかで、ケガレは忘れたはずの忌まわしい過去と対決することになる。

#レビュー

 実はnoteで作品感想をアウトプットしようと思ったのは、この作品で感じた事を新鮮なうちに書き残しておきたいと思ったからです。

 大人計画の存在はもちろん知っていましたが、観劇したのは今回が初めてでした。

 まず、キャストがめちゃくちゃ豪華ですね。おそらく大人計画を知らない方でも知ってる役者が数多く名を連ねています。しかもなかなかのくせ者笑。正直、いくちゃんきっかけで行こうと思った僕は、少し身構えていた部分がありました。第一幕1時間40分、第二幕1時間45分という長丁場ということもありましたし。

 いざ開幕すると、各登場人物それぞれが濃いキャラクターで、まさに「戦場」。いくちゃんモバメで稽古場が笑いで溢れている事を伝えてくれていたんですが、役者各々が本気で笑いを取り合っていても、テンポが良くて間延びすることなく、前半はドカンドカン客席で笑いが起きていました。後半からは一転して内面が深く描かれるシリアスなシーンが増え、登場人物が笑いで隠していた葛藤をオブラートに包まず抉っていきます。それぞれが「ケガレ」と「キレイ」の面に向き合い、後悔しない生き方を追求して、笑いあり、ケガレへの共感から辛さも感じる、感情が大きく揺さぶられるあっという間の3時間半でした。

 僕が特に感動したのは麻生久美子さんの存在感。いくちゃんと裏表の役どころで、純粋なケガレに対して、純粋さを失い徐々に葛藤と向き合おうとするミソギを演じ、その重さがストレートに伝わってきました。無知で恥ずかしいのですが、これ程歌がお上手だとは知らず、圧倒されました。

 麻生さんをはじめ、圧倒的で個性的なキャリアを積んだ方々に守られながら思いきって取り組むいくちゃんと初舞台の神木くんの姿は、今後も正統派だけではなく様々な役柄に挑戦して欲しいと思わされる躍動感でした。

 いくちゃんファンの目線で言えば、舞台で観たのは久々でしたが、かなりパワーアップしていた印象です。以前は「伝え方」で悩んでいたこともいくちゃん自身も話していましたが、ミュージカル以前に演劇の要素が強い今回の作品でもしっかり演じきっていて、以前の悪い意味でのまっすぐさがなくなっていました。2017年が大きなターニングポイントだったのだと思うのですが、今回の作品も演技の幅を広げる大きなきっかけになるのではないかと思う程、新鮮ないくちゃんの姿を見ることができました。

 もし今後5回目の再演があるかは分からないですが、実現されれば必ず観に行きたいと思います。

 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?