明日から役立つマネージャーのための1on1入門
『ヤフーの1on1』という本を今更ながら読んだのですが、これがとてもためになる本だったので簡単にまとめておきます。
このnoteに書いてあること
・『ヤフーの1on1』から学んだこと
・芹川が考える1on1をうまく行うコツ
『ヤフーの1on1』から学んだこと
この本がなぜためになったかというと、
・組織のおいて1on1をなぜ活用すべきか
・1on1を含むメンタリングの手法の整理と使い分け
・具体的な1on1の技術
がよくまとまっていたからです。
それぞれ簡単に説明します。
会社・組織はなぜ1on1を活用すべきか
ヤフーの定義によれば、1on1とは
"社員の経験学習し、社員の才能と情熱を解放させることで、成長させることを目的とする、人材育成のツール"
だそうです。
要するに、会社は自社の人材を成長させるために1on1を活用すべきだということです。
言い換えると、上司が部下に言うことを聞かせるために行うものではないということです。
これがまずなにより重要なので、手のひらに書きましょう。
1on1のメリット
1on1のメリットに関わり、そのメリットを享受するのは①社員(部下)、②上司、③会社の3者です。
それぞれ、以下のようなメリットがあります。長くなるので詳しい説明は省略。
1on1の機能と手法
この本では、1on1を通じて部下の成長を促す働きかけには①コーチング、②ティーチング、③フィードバックの3つの手法があり、それぞれ違う機能があると説明しています。
これは企業内での1on1に限らず、すべての対話によるメンタリングに共通する素晴らしい整理だと思います。
まずはそれぞれについて簡単に説明します。
①コーチングとは、"部下が経験から学び、次の行動をうながすための質問を手としたコミュニケーション手法"
コーチングの特徴は「答えはクライアント(相手)の中にある」という前提があることです。
つまり、コーチ(ここでは上司)が部下に何かを教えるものではありません。
コーチングについては、こばかなさんがnoteでまとめているのでそちらをご参照ください。
一方で、組織内で社員の成長を促すためには、必ずしもコーチングだけでは足りず、上司や先輩からインプットすることもときには必要です。それが「ティーチング」と「フィードバック」です。
②ティーチングは、シンプルに部下が知らないことを知っている上司から教えること
知っていれば解決することに部下が困っているときは、知識を伝授すればいいという話です。一番わかりやすいので説明省略。
③フィードバックは、"部下の行動(アウトプット)がまわりからどう見えているのか、主に上司が部下に伝えることにより、部下の成長を支援するための方法"
ティーチングのように一般性のある知識を授けるのではなく、本人ではなかなか知り得ない本人に関する情報を伝え、気づきを与えるためのものです。
フィードバックを通じて部下は、「自分のパフォーマンスは会社・上司の期待を上回っているか」「周囲の仲間からどう見えているか」について知ることができ、自分の行動の改善に活かすことができます。
1on1のテクニック
実務で1on1を実施しているマネージャーはたくさんいると思いますが、より実践的な技術も書いてあります。
【基本編】
要するに、必要以上にティーチ、フィードバックしないということですが、それくらい人は自分の意見を言いたくなっちゃうということです。
意識的に話さないことを実践してみるとよいかと思います。
【1on1の終え方】
この2つの問いは常に忘れないようにしましょう。1on1の目的は成長につなげることであり、成長とは単に知識が増えることではなく行動が変わることですからね。
芹川が考える1on1をうまく行うコツ
経験的に言って、1on1の効果は上司によるこのコーチング/ティーチング/フィードバックの使い分け次第で大きく変わります。
部下の状況と期待に応じて、臨機応変に相手にとって一番必要なことを考えることがなにより重要です。
①だいたいコーチングが不足気味
「自分の苦労を理解してほしい。応援してほしい。」と思っている相手に対して自分の教えを押し付けても、部下は聞く耳を持ちません。
先日コーチング教室の説明会に行ってきたのですが、同席していた先生の「なんのためにコーチングを学ぼうと思ったのですか?」という質問に対して40代後半のおじさまが「部下に言うことを聞かせるためです」と回答していて度肝を抜かれたのですが、これほど間違ったことはありません。
上述のように上司は部下に自分の意見を押し付けがちな傾向があるので、かなり意識的にコーチング要素を盛り込むことが1on1をうまく運ぶコツです。30分時間を取るなら、少なくとも15分はただ聞き続けるくらいで十分なんじゃないかと思います。
②フィードバックは難しい
フィードバックもまた、使いこなすのが難しいポイントの一つです。フィードバックは「叱る」こととは全然違います。相手がどう評価されているかを客観的に伝えて本人が納得することが大事なので、そこに自分の苛立ちとか感情をぶつけるとろくなことがありません。
ですが、みんなそれができません。
僕はわりとドライな人間なつもりですが、それでも部下に厳しい評価を伝えるのは決して上手だと言えません。でも、それは本人にとってためにならないので、ときには厳しいことをはっきり伝える必要があるといつも反省してました。
③フィードバックは説明責任も伴う
厳しいフィードバックが難しい理由は、そこに説明責任が問われるからです。
たとえば評価面談で部下の期末評価が低かったことを伝える場合、上司は部下に対してその評価に根拠を説明してフィードバックする責任があります。これがみんなできません。
なぜなら、多くの場合上司自信もその理由を十分に言語化できていないからです。でも、これをしっかりやりきれないと部下は絶対納得しないし、これを適当にごまかした説明をすると本当に信頼を損ないます。そういうことは絶対やめましょう。
④ティーチングは押し付けずケチらず
だいたいティーチング過剰になるのが昭和的上司の特徴ですが、ありがちな失敗例は「こうあるべき」論を押し付けてしまうことです。感覚的には、今の時代は5歳も年齢が違えば「べき論」は少なからず噛み合わなくなってくるので、価値観の押し付けはだいたい失敗します。
まずティーチすべきは価値観ではなく知識や技術なので、そうした部下にすぐ役立つ知見はケチらず惜しみなく注ぎ込みましょう。
(なぜか価値観押し付け型上司の方が知識の伝授をケチりがちなのは不思議なことです。)
たしかに社会人/プロフェッショナルとしての姿勢という「べき論」はけっこう普遍的で、それを胃に穴があきそうなくらい叩き込んでくれたコンサル時代の上司には感謝してもしきれませんが、それらは実践を通じて結果的に共有されるのがよく、説明してもなかなか理解されないものです。
社内の1on1以外でもメンタリングは同じ
僕の会社ではエンジニアのためのキャリア相談サービスkiitok(キイトク)をやっています。
ここで相談役としてメンターをやってくださっている方々は本当に最&高なエンジニアリング・マネージャーさん達なのですが、みなさんこの3つを使い分けが非常にうまいです。
よき上司に恵まれずに悩んでいるエンジニアの方は、ぜひkiitokを利用してみてください。
エンジニア以外の方にも早く相談機会を提供できるように頑張りますが、ほんとに悩んでいて「待てねーよ」という方がいたらとりあえず僕にご相談頂いてもOKです。
以上長くなりましたが、本当にためになる1on1講座でした。
本の重要なことはここでほとんどまとめてしまいましたが、「勉強になった」と思った人は是非原著をご購入ください。
僕をサポートしたりしなくてかまわないので、本を買って著者にお返ししていただければと思います。
では。
お読み頂いただけでも十分嬉しいですが、サポートして頂けたらさらに読者の皆様に返せるように頑張ります。