辞書系法律書籍のすすめ

はじめに
ロースクールでは、判を押したように「基本書を読め」と言われてきました。そのため、ロースクールでは、手元に基本書を置き、勉強をしながらお気に入りの基本書を開く、という勉強をよくやっていました。
 が、途中から思い始めるようになったのが、「基本書では答案は書けない」ということ。そもそも、定義を書いていないような基本書を始め、自説を展開するものや実務の理解と表現が異なるものなど千差万別な基本書。受験生多数派の基本書を読んでいれば障害は少ないですが、それでも答案が書けない問題には当たるのではないでしょうか。

答案にするには三段論法 
答案と言っても、ここで想定しているのはあくまでも司法試験の答案のことです。
答案は基本的に三段論法で構成されます。
三段論法とは、大前提→小前提→結論ですが、法的にいえば、規範→事実→結論です。
今回重要なのは「規範」です。この中でも、今回問題にするのは条文の文言の定義です。たとえば、刑法で、「暴行」といえば、相手方の反抗を抑圧するに足りない程度の有形力の行使が定義になります。このように条文の文言そのものにあてはめをする際に、定義を知らないと答案が書けないという場面はよくあります。その際に、オススメなのが基本書ではなく辞書系法律書籍です!
 辞書系法律書籍とは、完全なる個人的な呼び方ですが、具体的には「注釈」「コンメンタール」「条解」シリーズを指します。「注釈」シリーズとは、有斐閣が発行しているシリーズで「注釈民法」などが有名です。コンメンタールは有名ですね。「条解」とは、弘文堂が発行しているシリーズです。
 なぜ、辞書系法律書籍がオススメなのか。それは、実務家御用達だからです。辞書系法律書籍は、裁判官の執務室にも必ずありますし、大きな弁護士事務所になら置いてあることが多いでしょう(お値段がするので小規模だとなかなか)。したがって、辞書系法律書籍の記載は実務家の感覚に最も近く、実務の解釈は辞書系法律書籍を起点に出発していると言っても過言ではないでしょう(ちなみにNHKのサラメシという番組で、条解刑法を参照する裁判官が放送されてました笑)。なので、実務家登用試験である司法試験で、実務的な感覚による実体法の解釈が求められる以上、辞書系法律書籍はオススメということになります。また、司法試験の問題作成者や採点官には実務家がいますので、その意味でも辞書系法律書籍は彼らと感覚を同一にさせるものとしてオススメです。
 ロースクールでは、なぜか辞書系法律書を読め!とは言われませんでした。基本書はその法律を体系的に理解するためや制度趣旨等を知るのに大事なのはその通りですが、答案を書くには、規範(定義)を知る必要があるため、辞書系法律書籍に触れる回数は試験に近づくにつれて増えるような感じで読むのがいいでしょう。
 私は、まとめノートを作る際に、条文の定義を辞書系法律書籍で確認し直しました。
 あくまで、私個人の見解ですが、受験生で一度も辞書系法律書を触ったことがないというのであれば、一度手に取ってみてはいかがでしょう。

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