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贅沢吐き戻しまぐろ

みどりさんに尋ねてみた
「仕事とは関係ないことですが…
お食事に誘ったりしたら、ご迷惑になり…」
この時点でみどりさんはバツの悪そうな笑顔で首を縦にブンブンふった
ボクは
「…ますよね、すいません」と続ける
元々、かなり以前に恋愛関係にはならないということははっきりと伝えられていて
それでも、ボクが好意を持ち続けることは別に構わないとして、そのままにしてくれていた
にも関わらず、そもそもお仕事で忙しいなか、貴重なプライベート時間を削っていただくというのは、やはり求め過ぎというものだった
分かってるし、納得もいく
だけどやっぱり、堪える
涙は出ない、泣きたいって感じじゃない
だけどやっぱり、悔しい
自分の至らなさが、つらいなぁ
どうしてこう、ボクは余計なことばかりするのか
本当に、嫌になってくる

こういう時、何か別のことを考えるようにする
売り場になにか気を紛らわせるようなものはないだろうか?
普段はあまりマジマジと見て回らないペット用品のコーナーを見ていると

「贅沢吐き戻しまぐろ」

と、書かれたプライスカードが目についた
ん?吐き戻し用の?まぐろ…
「贅」はもともと余計な財貨が有り余っていることで
そこになみなみと水をたたえた様子を表す「沢」を加えて
そりゃあもう程度を超えて目いっぱい余計につぎ込んでいる様子が「贅沢」なわけだ
そこに「吐き戻しまぐろ」
これだけ見れば、「食べてお腹を満たす」「栄養を摂る」ためではなく、わざわざ「吐き戻す」ために口にする「まぐろ」と言っているように見える
「贅沢」は目いっぱいの無駄
「吐き戻し」なんてもっとムダ
無駄にムダを重ねている
食べ物を無駄にしている、いや、そもそも「まぐろ」の命を粗末に扱っている
「まぐろ」になんの恨みがあるというのか問い正したい
まったくもってけしからん商品だ

なんて、
無駄に余計な方向へ思考を飛ばしてみる
これが、そっくりそのままの商品名で、ヒト用のものであれば大問題だとは思うが
実際には、猫用のペットフードで
正式名称「贅沢うまみ仕立て 食事の吐き戻し軽減フード まぐろ・かつお・煮干し・白身魚・しらす入り」である
飼い猫が食べたものを吐き戻すことがあるというのは、よく知られていることだろう
吐き戻しの原因は色々とあるが、健康な猫で、異物を食べるなどの食中毒ではない場合、吐き戻しの原因は、だいたい、毛繕いの時に飲み込んだ毛玉か、カリカリのキャットフードを大食い、早食いしてお腹の中の水分で膨張したカリカリを吐き戻すかだ
この商品は食物繊維に特殊な加工をして、お腹の中で早くふやけて崩れやすいのでお腹の中で膨張しにくく、食物繊維の力で飲み込んだ毛玉をキャッチして食道や胃の中をスッキリさせてくれる優れものなのだ
吐き戻すため、とは真逆の「吐き戻しケア」の機能を持った商品
「贅沢吐き戻しまぐろ」なんて、どうしてこう、全く逆の印象を与えるような表記をしているのやら…というか、「まぐろ」ですらない、原材料に「まぐろ」を含んだカリカリだ

どうでもいいことで頭を無駄に回転させたことで、少しだけ、気持ちが落ち着いた
元々、この想いの根っこには恩義に対する「感謝」と「尊敬」があったはずなのだ
それがいつの間にか膨れてしまって現状に至るわけで
まあ、みどりさん、きれいだし、かわいいし、すてきだから仕方ないっちゃ仕方ないじゃん?
とは思うけど

初心に帰ろう

どこでどう間違って見返りを求めるような考えになってしまったのか
みどりさんと一緒に働けている間、ボクはボクのできることでお返しをしていこう
…いや、お返しもなにも
求められていないものを押し付けていた
だけなのだろうけれども
どうして、ボクはこうも…



パート先での出来事で凹んでばかりもいられない
毎週木曜日となればÖCHAKOの時間がやってくる、この日はあいにくの雨降りで、秋の雨は体の熱をじわじわ奪う
雨が降る中作業をするのはボク1人くらいで、あとの人は当然ながらハウスの中であるところでそれぞれの時間を過ごしている
だからこそ、この雨は今のボクには都合がいい
頭を冷やすのにはちょうどいい
誰も雨の中作業をするボクには近づかない
天気はいつも、ボクに味方してくれる

綺麗に発色している紫バジル
青くすてきな花を咲かせるバタフライピーの豆さや
かわいく寄り添う坊ちゃんカボチャ
白い肌がキレイな白キュウリ
つるんと美しい白ナス
黒く艶やかなナス
赤く色付くピーマン
生き残ったダイコンと蒔き直したダイコンと
そろそろおしまいにしてもよいかもしれないサトイモ
無用に蔓延るサツマイモ
もう先がないようなオクラ
虫食い歯欠けの葉物畑
今年も実を結ばないだろうパッションフルーツ
ローゼルが咲くことはあるのだろうか

植えるものも植えたし
収穫するものも収穫したので、この日の役場販売に備えてお昼で一旦家に戻る
一人暮らしの借家の一軒家
今日はいつも役場販売で一緒に立つ紫波町地域おこし協力隊の岡本さんは用事があって、役場販売に1人で立つ

役場販売の様子

初堀のショウガはディスプレイとしてとても優秀で、香り良く、キレイで茎の根元のピンク色がかわいい、通りゆく人の目をよくひいてくれた
今日のモッフンはちょっとだけふてくされているようにも見える

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