見出し画像

乾漆、工藝。

乾漆とは

古くは中国から伝わった技術で、日本では奈良・天平時代に
多くの仏像がこれを用いて制作されてきました。

仏像の型に
漆を染み込ませた麻布を幾重にも貼り 乾燥させた後、中の型を全て抜き取り完成させます。

技術が広まった背景として、
木造建築が主流だった日本は火災が多く
乾漆で作られた仏像は中が空洞状になっているため
非常に軽く、運び出し易かったからだと聞きました。

私達のウィーンにあるショールームには幾つかの乾漆で出来た物がカバンと置いてあります。その内の一つが印籠です。

実は印籠も同じ乾漆、
脱活乾漆を用いて制作されている物、  
と言えば馴染みのある方も多いのではないでしょうか。

この脱活乾漆も仏像と同じく
製作過程で型を必要とします。

 
今回のプロジェクトでは
輪島で漆産業に携わる
桐本滉平さんに全面的な協力をしていただき
印籠をヒントに作られた私達の新しい鞄を完成させる事が出来ました。

桐本さんと色々な話をしていく中で非常に印象に残っていたことが
この産業の衰退の原因の一つ、
型を土、石膏、スタイルフォームなので制作する為、脱活する際に破損する場合があり、再度製作するためにかかるコストの高さでした。

そこで、まず
型の製作を3Dプリンターで作る事を考え、3Dプリンターを使用することで破損した型を時間をかけずに再生産することが可能になり、同じ型を繰り返し使える事でコストを抑えることができるからです。

古くから続く分業制によって、
効率化されてきた産業の弱さは、
一つの工程を担う方達の廃業が全体に影響を及ぼしてしまう事です。


新しい技術を工程の中に取り入れる事で
違った視点で産業を見れるのではないか。


それが今回の私達の試みです。


プロジェクトにご協力頂いた、
漆作家の桐本 滉平さん、3Dプリントの型の設計をしてくださったトーマス ミリーさんに感謝いたします。

ps ここまで来るまでに、北陸に家族旅行しなかったら頭にもなかった事で、帰国の度に地方を周ることを習慣としてきました。足を使い、人と物を見る大切さを。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?