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ニャンのはなしですか 第2話

 2021年11月頃、姉の「猫を飼いたい熱」は異常なくらい高まっていました。会う度に「アンタ(太郎)、猫を飼いなよ。暇なんだから」だけではなく、ネットで拾ったような猫の画像がLINEで頻繁に送られてくるようになりました。

「可愛いいい」
「うん、可愛いいね。飼ったら」
「パパが反対している」
「じゃぁ、飼えないね」
「アンタ、飼いなさいよ」
みたいなパターンが何度か繰り返されたある日、家に来ていた姉に
「アンタ、猫飼いなよ」
と言われ
「それも良いかもね」
と少し前向きな発言をしてしまいました。
 この辺りの私の心境については「猫を飼いたい姉の話」として、記録しています。

 私の安易な発言から「猫嵐」とでも言うべき姉からのLINEが吹き荒れることになりました。これまで以上に猫の画像や県内の保護猫サイトのリンクが送られてくるようになり、しかも
「猫の譲渡申込みをするように」
との新たな指令も加わるようになりました。

 姉の命令に従う義理は無いのですが、子どもの頃からの上下関係というものは後を引くものでして、私は姉に命ぜられるまま自分の個人情報をタレ流し「猫の譲渡依頼」をくり返しました。はい、繰り返すことになりました。
 誰からも「譲渡承諾」を得ることができませんでした。
「条件が悪いのだろうな」
とぼんやり思いつつ、姉の「猫を飼いたい」という気持ちの裏に「保護猫を救いたい」という気持ちがあることに気づきました。

 極端な話、「猫を飼う」だけであればペットショップに買いに行けばよいのです。私も姉も購入費用の捻出はできるくらいの大人になっています。しかし、
「また、断られた」
と何度返信を繰り返しても、頑なに「猫の里親募集・保護猫譲ります」のサイトを巡回し、私に情報を送ってくるのでした。

 そして、ほとんどのサイトから「良い出会いがありますように」のお祈りメールをいただいた後、姉からの指令が
「保健所に行きなさい」
というものに変わりました。私は素直に従い保健所に予約の電話を入れて訪問しました。その時の話がこちらになります。

 また負け戦でした。考えるまでもなく、50代・70代・80代という3人暮らしの家庭ですから、猫を譲る方の視点からは
「お前らに猫預けても、お前ら先に逝く可能性が高いから駄目だよ」
という心境になるのだろうと思います。
  猫の遊び相手として小・中学生の方が適切なんだろうと、唇を噛みしめました。

(我が家に猫が来ることはないのだろう。まぁ、家が傷まなくてよいか。姉さんもそろそろ諦めるだろうな)
 そんなことを考えながら、季節は晩秋から冬、暦は2021年12月になろうとしていました。

サポート、kindleのロイヤリティは、地元のNPO法人「しんぐるぺあれんつふぉーらむ福島」さんに寄付しています。 また2023年3月からは、大阪のNPO法人「ハッピーマム」さんへのサポート費用としています。  皆さまからの善意は、子どもたちの未来に託します、感謝します。