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【創作】二人を分つまで #シロクマ文芸部

 詩と暮らすように生きていきたい。
 暗闇に酸素吸入機と心電図測定器の無機質な駆動音が静かに響いていた。
 何度も麻酔で意識を落とされ、除細動器で心臓を止められた後、想いが浮かんできた。

 49年生きてきたけれど、何も無い。
 妻子も財も職も、何も無い。
 このまま命が無くなるのも、有りだな。
 そう考えることに嘘は、無い。
 なのに、湧き上がる想いがある。

 詩と暮らすように生きていきたい。

 浮かび上がる想いに、意識を重ねていく。
 僕に才能は無い。
 文壇とか金銭とか栄誉に憧れて、詩と格闘した日々がかつてあった。そこで何も得ることができず、打ちひしがれて、背を向けて逃げ出した。才は無く、妻も財も得ることはできなかった。
 その現実を思い出し、受け入れなきゃならない。僕の詩は誰にも必要とされていない。何の価値も意味も無いことを理解しなきゃならない。

 だけど、だから、それでも、もし、この暗闇から出ることができたら、酸素吸入機や点滴の管に縛られた体が解放されたら、詩と生きていきたい。
健やかなる時も 病める時も
喜びの時も 悲しみの時も
富める時も 貧しい時も
詩を愛し 敬い 慰め合い 共に助け合い
その命ある限り真心を尽くすことを誓う。

 真っ暗な集中治療室で誓いを立ててから4年が過ぎた。変わらず、妻子も財も職も、何も無い。

 ただ、世界は美しく、僕は生きている。

 詩は、僕とともに在る。
 この美しい世界で、僕は生きていく。
 死が二人を分かつまで、詩と共に幸せに生きていく。
(本文ここまで)
 福島太郎、定番の「入院ネタ」です。
 念のため申し上げますが、創作です。妻はいませんが仕事はしています。詩は書けないです。
 死は常に身近にあります。
「挑戦しなかったことを後悔しながら死にたくない」
と思う日々です。
「挑戦しなかった」は「表現しなかった」とも言えます。だから、僕は書き続けています。
 売れるとか売れないとか、見っともないとか、時間や金の無駄とかは関係なく、ただ、
「ひたすらに、直向きに、書いて生きたい」
のです。
 最後までお読みいただきありがとうございます。
#何を書いても最後は宣伝
 福島太郎、福島文学の世界はここにあります。

#シロクマ文芸部


 

 

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