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【駄文】8月 扇風機の思い出

 8月になると思い出す話で、「誰得?」という詰まらない話なので、昨年は文章化できずにいました。
 今から40年以上も前の話なので、リアリティを感じるのは難しいと思いますが、お付き合いください。
 私の家はかなり貧しい生活をしていまして、クーラーどころか扇風機もありませんでした。ちなみに借家で、村でも唯一の「藁ぶき屋根」でしたので、隙間風には事欠かない家でした。

 それでも夏は暑いもので、うだるような家の中で、偶にかき氷をガリガリと削りながら日々を過ごし、夏休みには毎日、午前も午後も、学校のプールで過ごしていました。
 8月のある日曜日、母と見ていたテレビショッピングで、「扇風機3980円」と出てきました。当時としては格安でした。暑さのピークが過ぎていましたので、捨て値だったのでしょう。
「安いね!」
と、母と話をしたものの、母の表情は曇り出しました。
「けど、3980円か」
母の暗い呟きに、(そうか、うちにはお金が無いんだ)ということを実感しましたが、流石に口には出さず、顔を画面に戻すと
「月々、1100円の4回払いで、すぐに自宅にお届けします」
と、画面の男性が一際大きな声でアピールし、電話番号が表示されました。
「太郎、電話番号をメモして」
母の大きな声に驚きながら、チラシの裏に、電話番号をメモしました。

 なお、8月末以降、毎月1100円の支払い日が近づくと、母の顔が曇ることが繰り返されていました。その年の扇風機の実働は1ケ月ぐらいでしたが、その後も数年に渡り活躍してくれました。

 貧しい日々は決して嬉しいものではなく、二度と味わいたくはないですが、あぁいう日々があり、今の自分があることに、少し感謝できるようになりました。
 今の自分があることは、過去も、現在も多くの方の優しさのおかげですので、これからは少しずつ、優しさを返していきたいな、と考えています。そう思える自分に成長できたのも有難いことです。

 最後までお読みいただきありがとうございました。暗い話ですいません。
 申し訳ないので宣伝は控えます。また、遊びに来てください。
 


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