銀山町 妖精綺譚(第10話)
第九章 宝くじ
出勤前に妻に言われた言葉が高橋の心を重くしていた。
「顔色が悪いわ。体調悪いんじゃないの」
体調は悪く無いと思う。ただ妖精美術館の展示品について、何の打開策も浮かばないことが気持ちを重くしていた。若者定住会議は半沢のおかげで乗り切れたが、事態は全く好転していない。破綻へのレールは引かれたままだった。
出勤してきた田中はケロっとしていて、これが若者の特権ということなのかと羨ましく感じた。
「朝から何ですが、妖精美術館の展示品ことで話をして良いですか。先週の