読書メモ「カテゴリーキング」

アル・ラマダン、デイブ・ピーターソン、クリストファー・ロックヘッド、ケビン・メイニー著

本書にて2000年から2015年にかけて創業した数千のテクノロジー企業を分析。そのうち35の企業がカテゴリーキングとなった。本書はキングの特徴をまとめ原則を導いている。

以下、面白かった箇所を中心にメモ。

前書き

カテゴリーキングとは自身が見出した新市場で、独占状態のシェアを握ること

1 チキンレースから抜け出すには、新しいカテゴリーを開発することが必要

2 そして新しく作ったカテゴリーでトップになること

3 さらにそのトップを維持すること

トップを維持するには、エコシステムを構築し、蓄積したデータを如何に扱うかが鍵となる。 

・btob企業の豊富な事例が本書に掲載されている。

1章

カテゴリーキングの事例

1 1920年にバーズアイが興した冷凍食品というカテゴリー。博物学者としてカナダのイヌイットの捕らえた魚を冷凍保存する文化にふれ、それをアメリカで商業化。

2 カラニックとキャンプは、パリで寒さに震えながらタクシーを待っていた苦い経験と、スマホで簡単に呼べラバという発想からウーバーを興す。

カテゴリーキングは、世界の見方を新しい視点で置き換える。それまでに存在していたものが時代遅れで不格好で非効率でコストがかさむものに見える。

カテゴリーキングになれるのはベンチャー1万社のうち10社程度

カテゴリーキングは偶然の産物ではない。優れた決断をしたり理に叶った計画を実行したりすることを通じて、カテゴリーを発展させて支配するに至った。

カテゴリーデザイン・・優れた製品とユーザー体験、優れた企業、優れたカテゴリーこれらを同時に作り出すのがカテゴリーデザイン

実際のところ最高の製品がカテゴリーを支配するとは限らない。勝つのはディファレントだ。カテゴリー思考に秀でたものが勝つ。

2章

カテゴリー戦略の失敗例 マイクロソフトは2002年にタブレットPCを登場させるが、人々がタブレットを使って何をしたいのかを考えてからハード設計せず、無理やりWindows xpをタブレットに搭載させて失敗。

成功例1 2009年、ジョブズはiPhoneとMacBookの間に新しいカテゴリー、iPadを作ることに成功。モバイル、ソーシャル、クラウドの普及が背景。

成功例2   エナジーショットのカテゴリー戦略。まず、既存の飲料缶とは違う小さいサイズにした。購買者は喉の渇きではなく疲れをとりたく、味の良くないドリンクを少ない量でさっと飲みたかった。わかりやすいブランド名をつけた。それが(5アワーエナジー)

優れたプロダクト、優れた企業、優れたカテゴリーの3つのデザインがカテゴリー戦略には必須。

プロダクトデザイン・・解決する課題に対するソリューションやエクスペリエンスを意図的に作り出すこと

企業デザイン・・カテゴリーに合わせた文化や視点を持つビジネスモデルと組織を意図的に作り出すこと

カテゴリーデザイン・・市場カテゴリーを意図的に創造し、発展させること。カテゴリーを顧客の頭に浸透させる

カテゴリー形成期にはキングを必要とする。キング不在の場合、カテゴリーの成長が停滞する。

カテゴリー形成成功例  VMware 当初、安全に試験ができる環境がコンピュータ内部にほしいという研究者たちをターゲットにした製品。

3章

カテゴリーデザインとは、from/toの創造。これまでの考え(from)から新しい視点(to)へ顧客を移行させること。まず問題を定義し、それを人々に知らしめることが必要。

セールスフォースの事例 fromはパッケージインストール型のCRMソフト、toはクラウド型のCRMサービス。当時クラウドを信頼するようCTOを説得させるのは至難の技であった。セールスフォースは、カテゴリーの創造を優先し、ノーソフトウェア、エンドオブソフトウェアというスローガンを掲げていた。

カテゴリー創造の難しさの例 Amazonがawsをリリースしたとき、awsについて「うまく説明する方法を思いついていない、君がその方法を教えてくれると期待していた」とインタビューをしていたUSAトゥデイの記者に伝えている。

4章

・マーケットインサイト 世界に欠けているものを見つけ、その隙間を埋める技術を開発できると信じることを指す

・テクノロジーインサイト 新しい技術そのものを使って、それまでにない何かを作り出す

洞察からカテゴリー発見までの道のりの事例:Airbnb

ある大きな会議がサンフランシスコで開かれ、市内のホテルはぼったくり価格にも限らず満室に。サンフランシスコに住んでいたチェスキーとジェッビアは、空気をいれて膨らますマットレスを買い、空きベッドあり朝食付きとインターネットで告知した。これが、エアベッドアンドブレックファストで、Airbnbの始まり。彼らの市場洞察は、他の都市でも大イベントがあるときは一般の自宅の空き部屋での宿泊を売りに出せるはず、というもの。

5章

市場洞察か技術洞察を得たのち、カテゴリーを見つけて定義した後に、カテゴリーの物語をつくること、この物語をPOV(ポイントオブビュー)という。」潜在的な顧客は物語によってfromからtoへ導かれる。何が欠けていて、その穴を埋めてくれると理解できるものがPOV.

POVはベターではなくデファレントを表現するもの。POVで製品の機能について語るのは絶対にさける。POVの最初の目的は市場に問題を理解させ、解決策を求めるようにみちび

事例 GoPro: サーフィン好きのニックウッドマンが頑丈な水中ビデオカメラを作ったのが始まり。体につけて自分視点で映像をとれるようにした。そして冒険好きで危険を恐れないスポーツ的個性のブランディングを確立できた。自撮り撮影した映像はゴープロ映像と呼ばれるようになり、ゴープロはカメラ&コンテンツの新カテゴリを創生できた。

事例 Tableau:2003年スタンフォード大の研究から創業。From:高価で複雑な分析ソフト To:より視覚的でわかりやすく使いやすいソフトへ。ビジュアル分析という新たなカテゴリをつくり、そこでキングとなった。

9章 

AWS誕生のきっかけが書かれている

・アマゾンが膨大な商取引データを処理していることに着眼し、そのインフラとノウハウを他の会社にも貸し出せるのではないかと、ベゾスの側近のアンディ・ジャシーが想起。

想像してみたんだ。寮の部屋にいる学生が、世界で最も大きな会社のものと同じITインフラを使っている姿を
スタートアップや中小企業にとって、大企業と同じコスト構造を持てることは、ビジネスゲームの平等化につながると考えた。当時、ITインフラの貸し出しビジネスはまだ存在しなかった。

ジャシーは自分の考えをまとめ、ベゾスに披露し、』2003年にAWSを作る許可をえた。

会社が、新たな製品やサービスの導入を検討しているとき、とても重要な審査基準の1つは、その製品やサービスが新しいカテゴリーを作ることになるか、それとも、すでにキングが決まっている既存カテゴリに参入するものなのかを、見極めること

この点ではアマゾンは失敗事例がある。2014年にファイアフォンを市場にもたらしiphoneと真っ向から勝負したが、2015年9月にファイアフォン事業を中止した。

アマゾンのモットー「顧客のニーズから我々のスキルへ」「我々のスキルから新たな顧客へ」

これは、社内で得る技術洞察と、社外で見つける市場洞察の療法に注目する。

事例:2015年のグーグルのalphabetとしての組織再編。「現状維持ビジネス」と「将来のビジネス」の創造を分離したかったという意図がある。グーグルの中で新事業の開拓に関わっていた幹部たちが検索ビジネスの惰性にとらわれていたことは間違いない。主要の検索事業に集中する幹部たちにとっては新規授業は邪魔でしかなく、関心も資金も十分には与えられない事態に。

アマゾンとGoogleは既存事業とは別に新規事業創造、つまり新カテゴリー創造を連続的に行える企業文化がうまくまわっている


















 


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