「建設・不動産のデジタル化 〜FMBIMの活⽤〜」:その15 3.1 AIとBIMで効率的なFMへ
3. AIについて
現在、ITやAIを活用してビッグデータを分析し、経済予測が暗号技術、各種認証技術に活用している。また、ディープブルーなどのようにAIを活用することで、囲碁のチャンピオンに勝つようなことも可能になった。
3.1 AIとBIMで効率的なFMへ
近い将来、FMの情報処理で人工知能を利用して建物の価値を判断することが期待される。保全の分野では、予防保全と事後保全という管理概念があったが、人工知能を利用した予知保全の方法も登場した。人工知能にはさまざまな方法があり、データの種類や評価の目的に応じてさまざまな方法で分析を行う。
回帰分析と主成分分析は、比較的長い間使用されてきた統計手法だ。
FM情報は客観的変数を表す説明変数の項目が多く、大量のデータがあるため、それらの処理には人工知能が有利となる。
たとえば、建物の運用および保守で収集されるデータには、光熱費、修理費、保守費、清掃費、セキュリティ費用などの多くの特性を示すデータが含まれる。これらのデータが建物のメンテナンスにどのように影響するかを評価するために人工知能を使用して答えを得るのは比較的簡単だ。
人工知能は建物の検査情報から耐用年数を計算し、いつ更新するかを決定する。また、上記のコストの一部から建物の価値のレベルを推測する。また、対象部品や機械に応じて、修理や更新が必要かどうかを判断するためにも使用される。
さらに、BIMが有する位置情報、物的特性情報などが加わることで、より詳細な分析が可能となる。
3.2 人工知能には機械学習がありその中に深層学習が含まれる
人工知能は機械学習さらに深層学習(ディープラーニング)を含んだ総称だ。機械学習はロジスティック回帰、決定木、クラスタリング、強化学習、ベイジアン・ネットワークなど整然データを使った分類や予測をする仕組み。ぼやけた写真を解析して被写体を特定するとか、手書きの文字を言い当てるとか画像処理を行う仕組みが開発され、これが深層学習になった。深層学習は人間の脳の生物学的仕組みを使った情報処理を行う。脳は無数のニューロン細胞が相互接続し伝播した情報をふるいにかけ生き残った情報を記憶として保存する。この仕組みに着想を得て考え出されたのが深層学習だ。
3.3 「教師あり学習」とは?
収集したデータを「tidy data」に整理し、説明変数と目的変数を紐づけます。通常、紐づけは最小二乗法、エントロピー係数法などの手段を使って行なう。説明変数と目的変数を紐づけすることを教師あり機械学習と呼び、目的変数のない観測データは紐づけられた仕組みにより目的値が推定できる。下記の表のように扉、床、窓、・・などの入力情報が保持する属性に応じて修繕工事や更新工事に至ったとすると、「壁」という問いに対しては修繕工事か更新工事か答えが自動的に導かれる。
3.4 「教師なし学習」とは?
教師なし学習は様々な項目の情報が混在しているデータなどに対して、データを変換、加工したりして情報を組み替えて潜在的な特性を取り出す学習を言う。その特徴は情報の広さと、情報の中心値を求めることになる。右表は複数ビルの清掃費、警備費、水光熱費をtidy dataに整理した表だ。また、下のグラフはデータに数学的操作を加えて分類した散布図となる。散布図の形状から特性が推測でき、教師なし学習は、データの形状や統計パラメータにより分類をしたり、共通因子を取り出したりする方法だ。
4. 「機械学習」のいろいろ
4.1 線形回帰分析(Liner Regression)
回帰問題の予測を行うアルゴリズムだ。回帰は同じような状態を関数で表し、その関数を使って予測をする仕組みだ。FMの評価では線形回帰は最も使う教師あり学習の枠組みとなっている。線形回帰は(y,x)で表現され、それぞれ目的変数、説明変数と言う。通常、AIの分野では目的と特徴量と言う言い方が多くなる。
表の清掃単価の延床面積に対する表は延べ面積が特徴量であり清掃単価が目的である。
実際はy=w0+w1xという式を使う。 は 軸の切片 は傾き(重み)となる。
上式は2点がわかれば求まるが、多数のデータではその平均的なところを通る傾きと切片を求めなければならない。これは二乗誤差が最小になる計算をして重み 、切片 を求めることになる。
このような関数を「目的関数」と言う。線形回帰は延床面積に対し工事コストや水光熱費などの判断にも使うことになる。
ここから先は
本書のタイトルを、あえて「建設・不動産のデジタル化〜FMBIMの活⽤〜」としたのは、建設・不動産の発注、所有、管理、経営の第⼀線にたつ多く…
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?